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「くすくす、じゃあ何を頼もうかなぁー。この森には美味しい湧き水があるんだ。それを取ってきてほしいな」
小悪魔が新しい依頼を言ってきた。
「湧き水はどこにあるんだ? 楽に取りに行ける場所か?」
「くすくす、湧き水も森の東奥にあるから、これも難易度はSだねぇ」
「はぁ!?」
二回連続Sってマジかよ。めちゃくちゃ運が悪いじゃねーか。
幸い最初のいたずらは大したことはされていないので、もう一回くらいは断っても良いだろう。。
「その依頼も無理だ。別のにしてくれー」
「くすくす、これも無理なのー。何なら出来るのさー。ムカついたからいたずらしよー」
再び黒い靄が足元から発生し、俺たちを包み込む。
今度は外見的な変化はなかった。ただ、その代わり、何だかんだ若干体が重くなった。
「くすくす、赤い髪の君には、速度ダウン、ほっぺにグルグルがある君は攻撃力ダウン、黒髪の君には視力ダウン、同じ顔の君たちには防御力ダウン、鎧の君には魔法攻撃力ダウンをかけたよ」
ご丁寧に、説明してくれた。今度は前回みたいに、戦闘能力に影響が出ないいたずらではなかった。
「黒髪って、私か? 視力が下がったように特に感じないが……」
「く、黒髪は多分わたしですよー。ちょっとだけ、見えづらくなっちゃってます。弓使いにこれはきついですよー……」
確かに弓を使うものの視力が落ちるのはきついだろうな。ちょっとだけと言っていたが、弓使いにはそのちょっとが、大きな影響を及ぼすだろう。
てか、俺の速度ダウンも結構痛い。スピードは戦闘において、最重要なものだと個人的には思っている。
「黒髪が今のセリアなら私は……?
そういえばぐるぐるほっぺって言ってたが……え? 私なのか?」
シラファは未だに自分のほっぺがどうなっているの確認できていない。
「ちょっと待て、何か書かれているとは分かったが、そんなものが書かれているのか?」
俺は頷く。
「ふ、ふざけるな」
と言いながらシラファは頬をゴシゴシと擦る。
「消えたか?」
「消えてない」
「おい! これ消えるのか!?」
「くすくす、ほっとけばそのうち消えるよ」
「そのうちっていつだ!」
よほどぐるぐるほっぺにされたのが、気に入らないようだ。ゴシゴシとまた擦るが、やはり取れていない。
「クソ……それよりも攻撃力ダウンか。どのくらい落ちたか分からんが、攻撃力が落ちたのは痛いな」
シラファの最大の長所は攻めにあるので、それがダウンしたのは確かに痛いだろう。
「俺は魔法ダウンかー。まあ俺の場合は、防御ダウンじゃなくてよかったかな。魔法も結構使うんだけど」
「私たちは防御ダウンね。元々防御力には自信なくて、攻撃は避けるようにしてたから、そんなに問題はないかも」
ブロズとルナ、ルイは嫌な能力ダウンじゃなかったようだ。
「小悪魔たち。ほかの頼み事にしてくれよ。出来ればなるべく簡単な奴でお願いする」
俺は再び頼み事を要求した。通用するのかどうか分からないが、簡単な願い事にしてくれるようにお願いする。
「くすくす、しょうがないなぁ……簡単な奴だね」
お、案外話がわかる奴だったようだ。
「くすくす、力草っていう食べると元気が湧いてくる草が生えているんだけど、それを取ってきてほしい」
「それは簡単なんだな?」
「うん」
頷いたので安心したのだが。
「くすくす、難易度はSだけど、さっきの二つよりかは楽だよ」
「Sじゃねーか!! 全然簡単じゃないだろ!」
「くすくす」
こ、こいつら、人をなめているとしか思えねぇ。
「ぶった切るかこいつら」
とシラファが槍を手に取る。全くの無表情で、めちゃくちゃ切れているのだが、頬にぐるぐるがあるため、面白い表情になっていた。思わず吹き出しそうになったがこらえる。
「ま、待って、確かに腹立つけど、小悪魔に嫌われちゃったら、扉の場所を教えてもらえなくなるよ」
ルナがシラファを止めた。確かにここでこいつらを怒らせるわけにはいかない。
「でも、次の依頼どうするんですかー?」
「断るしかないだろ、Sランクなんだから」
「そうすると、また能力下げられちゃいますよー」
「仕方ないだろう」
安全策でSランクは二度回避して、能力を下げられた。この状態でSランクの依頼をこなすのはたぶん無理だろう。
「そもそも、Sランクが難しいってのは本当の話だったのか? 嘘つかれたんじゃないのか?」
「うーん……町長が言ってたから多分本当だと思うけど」
「私たちに教えてくれた人も、いい人そうだったし、本当だと思うよ」
ルナ、ルイに教えた人は見てないから分からないが、少なくとも町長が嘘をつくとは俺は思えない。嘘をついたところで、何のメリットがあるんだって話だしな。
「とりあえず今回も断ろう」
今回の依頼も断る。すると、またも能力が下げられた。全員さっきと同じ能力が下げられる。さらにスピード遅くなってしまった。
「うわー! 最悪ですー! しかいに靄がかかっているようですー! こんなんで弓うてませんよ!」
不味いことになったな。セリアはもう戦闘には参加できないかもしれない。
「くすくす、君たちさー。わがままだよー。次の依頼断ったら、もう君たちには門の場所教えてやんない」
「な、何!?」
ふざけたことを言い出してきた。いや、確かに無限に断っていいなら、簡単な依頼が来るまで粘ればいいだけだからな。こうなるのはおかしくないかもしれないが。
「くすくす、僕たちは五年くらいで寿命が来るんだ。今、二年生きたからあと三年したら死ぬから、その時までは門にはいけないと思った方がいいよ」
寿命が尽きて、別の小悪魔になったらチャラになるということか。しかし、三年間ここで待たされるのは流石に辛い。もうSランクの依頼が来ないことを祈るしかないか。
「分かった次の依頼はちゃんとやるから、言ってくれ」
「くすくす、本当? じゃあ、言うけど……スネークキングっていうモンスターを倒して来てほしんだ。木の実を取りに行くとき、怖いからさぁ」
「な、難易度は?」
緊張し、生唾を飲み込む。
「くすくす、結構難しいよ。Aランクだね」
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