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 ファースト・シティを出て数日歩き続けて、小悪魔の森に到着した。


 一見すると何の変哲のない緑の森だ。特別嫌な雰囲気を感じるとか、そんな事はない。


「普通の森ですねー」


 セリアが気の抜けた声を出す。


「油断したら駄目よ。ここは危険な場所だからね!」


 ルナが嗜めるように言った。仲間になって少し砕けた口調になっている。


 それにしても、一度訪れたことがあるかのような口調だ。


「一回来たことあるのか?」

「初めてだけどさ。色々話を聞いてたのよ。からくりの塔と同じだと思っていると、痛い目を見るってさ」


 からくりの塔より難しいというのは、間違いなさそうだが、恐らくからくりの塔の地下迷宮と比べて難しいという意味ではないかもしれない。


 地下迷宮より難しかったら、流石にやばいからな。


 とはいえ、油断するのはやはり良くないだろう。気を引き締めてかからないといけない。


 森に一歩足を踏み入れる。中も特に不自然な点はない、普通の森であったが、何やら嫌な気配を感じる。


 何かに見られているような。そんな感覚だ。


 モンスターが潜んでいるのだろうか?


「何かいるようだ。皆、気をつけろ」


 俺は仲間達に警戒を促す。

 全員首を縦に振り、最大限警戒しながら森の中を進む。


 しばらく歩くが、モンスターらしき存在は出てこない。

 俺の気のせいだった? そう思った時、「クスクス」と笑い声が上から聞こえてきた。


 慌てて上の方に視線を移す。


 木に人の手くらいの大きさの、小さな人型の生物が座っていた。

 顔や手足は小さい人間という感じだ。黒い尻尾が生えており、透明な羽を背中から生やしているというのは、人間とは大きく違う。


 その生物が、十匹以上木に座っていた。笑いながらこちらを見ている。


 敵か味方か分からないので、警戒を解かず相手の出方を伺う。

 特に襲ってきたりする様子はない。


「もしかして、あの子達が小悪魔なんじゃないでしょうかー? 見た目それっぽいですし」


 確かに小悪魔っぽい見た目ではある。


 仮に連中が小悪魔なら、意思疎通が出来るはずだ。話しかけてみるか。


「俺たちは冒険者だ。君たちがこの森に住んでいる小悪魔か?」

「くすくす、巨人は僕たちのことをそう呼んでいるね」


 笑いながら返答してきた。

 どうやら小悪魔で間違いないようだ。人間のことは巨人って呼んでるんだな。まあ、奴らからしたら、確かに俺たちは巨人だろう。


「くすくす、君たちも他の巨人達と同じく、門の場所を探しにきたの?」

「そうだ」

「くすくす、門はね。絶対巨人が探しても見つからなくなっているんだ。この森には巨人だけに効果があるまじないがかかっているんだ。僕たちが教えないと辿り着けないと思うよ」


 まじないがかかっているせいで、小悪魔に門の場所を聞かないと、門にたどり着けなくなっているのか。誰だそのまじないをかけたのは。小悪魔たちか?


 もしかしてこいつらを倒せば? いや、確証がないのにそんなことするのはやめるべきだ。そもそも、意思疎通のできる相手を殺したくはない。モンスターじゃないようだからな。


「場所を教えてくれないか?」

「くすくす、いいけど、タダでは教えてあげられないよ。頼み事を聞いてくれたら、教えてあげる」


 町長から聞いていた通りの展開になった。あとはどんな頼み事をされるかだが……


「くすくす、森の東奥にある、ラーマの実って木の実を取ってきて欲しいんだ。美味しい実だけど、怖いモンスターがいっぱいいるから、取りに行けないんだ」

「実を取りに行くだけなのか?」


 それなら簡単そうだが……


「くすくす、だけって言っても、東奥は怖い魔物の巣窟だからね。難易度は最難関のSだよ」

「S……」


 町長に聞いた話だと、難易度Sは今の俺たちにはクリアはほぼ不可能の難易度なようだ。


「や、やめたほうが良さそうですよー」


 セリアは怯えながら否定する。


「私とスレイがいれば、どんなに難しくとも何とかなるだろう」


 とシラファはやたら行く気満々な様子だ。


「待って待って、行かない方がいいよ。小悪魔の森については色々聞いたんだけど、Sランクだけは本当にやめておいた方がいいらしい。本当にやばいから。腕に自信があっても、Aまでが限界だってさ」


 横で弟のルイがうんうんと頷いている。二人はかなり念入りに調査をしてきたみたいだ。


「うーん、とりあえずここは念のため回避したほうが無難か」

「町長の話だと、頼みを断ったらいたずらされて能力下げられるらしいけど、まあ、一回だけならいいかな」


 ブロズも賛成した。


「慎重だな……まあ、私も別にいいが」


 渋々ながらシラファも承知。


 断ることで決まった。


「その頼みは聞けないから、別の頼みにしてくれないか?」

「くすくす、聞いてくれないのー? ムカつくからイタズラしちゃお」


 というと、何か黒い靄のようなものが、身体中にかかった。


 靄が晴れる。体に異常はないように思えるが。


「あーーーー!!」


 セリアが叫び声を上げた。


 驚いて確認すると、セリアがいた場所に黒髪ショートカットの女がいた。一瞬誰だと思ったが、よく見るとセリアだった。


「私の髪が!? こ、これ元に戻るんですか!?」

「くすくす、しばらくはそのまんまだけど、元には戻るよ」

「ほ、本当ですか!? 戻るんですかこれ!?」


 俺は自分の髪を確認するが、赤いままだった。俺には何もされなかったのかと思って体を色々確認すると、何か爪に落書きがされていた。何だこの地味な悪戯は。


「私は何ともなってないようだぞ」


 シラファはそう言った。本当かどうか確認してみると、両頬に渦巻きが書いてあり、何か間抜けな顔になっていた。思わず吹き出してしまう。

 普段のクールな表情とギャップがありすぎた。


「な、何で笑う!? まさか顔に何かされているのか!?」

「いや、ほ、頬にさぁ」

「頬に何があるんだ!?」


 シラファはゴシゴシと頬を服で拭うが取れない。


「そ、そのままでいいぞ、うん。そっちの方が馴染みやすい」

「笑いながら言うんじゃない!」


 ほかの仲間は、ブロズは瞳の色が変わっていた。ルナは服の色が変わっており、ルイは剣身の色が緑色になっていた。地味な変化である。


 何というか、特に問題はないようなイタズラだった。セリアとシラファには、若干精神的なダメージが入ったようだが、戦力的なマイナスはない。


「くすくす、今日はたまたま機嫌が良かったから、その程度にしてあげたけど、次はもっと強いのやるよ」


 運が良かったよう。Sランクをいきなり引いたのは不運だったが、不幸中の幸というやつか。


 そして、小悪魔が次の頼みを言ってきた。




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その劣等生、実は最強賢者、ノベリズムで連載中です!
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