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「質問ですー。あなた方は何なんですかー」


 セリアが手を上げて質問をした。


「我々は国王からこの門の管理を任された門番だ。アウターは危険だから、子供や覚悟のないものが入るのを防いでいる」


 あいつらが門番か。装備も強力そうだし、数も多い。力尽くで入るのは難しいかもな。


 仮に通ったら駄目と言われた場合は、何とか隙をついて入る必要があるけど、普通に通してくれるかもしれないし、今は質問に大人しく答えておくか。


 門番は宣言通り、質問を始めた。


 この場に集まっている者たちは全部で三十人いるが、全員が今から初めてアウターに行くわけではなく、すでに行ったことがある者も何人かいた。里帰りでこの世界に戻ってきて、再びアウターに行こうとしている者たちだ。

 俺が五歳の頃に出会った冒険者の男と、同じような人たちだろう。その者たちは質問が免除されるようだ。


 初めてこの門を通ろうとする者たちだけが質問を受ける。

 出身地と名前、年齢を尋ねられた。


 答えると門番の一人が、紙に記録している。理由は分からないが、冒険者になるものはああやって全員紙に記録されるみたいだ。


 黒髪の女も尋ねられている。流石にここは無視するわけにはいかなかったのか、名前と出身地を答えた。


「シラファ・マイラン。出身地はタンペス王国だ」


 少しハスキーな声だった。彼女の答えを聞いた瞬間、セリアは「同郷じゃないですかー」となぜか嬉しそうにしていた。


 鎧の大男も名を尋ねられた。


「ブロズ……バルツ王国出身……」


 思ったより小さな声で男は答えた。バルツ王国というと、地元出身者か。


 そのあと俺とセリアも質問に答えた。セリアは顔の幼さで若干年齢に疑いを持たれたようだが、最後に胸をちらりと見て、その疑いは間違いだと門番は思ったようだ。


「子供はいないようだな。最後の質問だが、お前らが門を通りアウターに行きたいと思っている理由を答えろ」


 何でそんなことを聞くんだという文句が飛んだ。

 確かに理由なんて、門番に聞かせる必要があるのか疑問だ。


「たまにとんでもないくだらない理由で、門を通ろうとするやつがいるからな。大人が自分の選択で死ぬのは自己責任で、同情の余地はないが、それでもとんでもなくくだらない理由で通ろうとするやつは、引き留めることになっている。ま、あとは純粋な興味だ」


 門番の目には好奇心が溢れているよう見えた。どうもあとで付け足した理由の方が、本当の理由のようだ。


「とにかく答えなかった奴は通さない。正直に答えろ」


 俺は別に理由を話すくらいは何の問題もない。


 ほかの奴らも特に聞かれて困る理由はないようで、一人一人尋ねられて、それぞれ理由を話していく。


 最初五人連続で金のためと答えた。

 アウターについて詳しくない俺は、金になるという話を初めて聞いた。


「アウターって金になるのか?」


 俺は隣にいたセリアに小声で尋ねた。


「わたしも詳しくは知らないですけど、アウターでしか取れない宝石とか金属とかあるらしくて、それがめっちゃ高く売れてるってのは聞いたことあります」


 初めて知ったなそんな事。

 もしかしたら、五歳のころ冒険者の男に貰った紫の石は、売れば高い宝石だったかもしれん。仮に高くても売りはしないが。


 鎧を装備した大男、ブロズもアウターに行く理由は「金のため」と答えていた。


 そのあと、黒髪の女シラファに質問が来る。


「復讐」


 そう答えた。

 門番は理由について深掘りしないので、詳しい事情は分からないが、何かややこしい事情がありそうだな。アウターにいる冒険者の誰かに恨みを抱いているのだろう。


 セリアにも質問が来た。


「わたしは人探しですー。お姉ちゃんが冒険者になるって言って、家を出ていきましてねー。わたしお姉ちゃん大好きなので、会いたいんですよー」


 彼女は自分からペラペラと聞かれてもいないことまで喋った。


「高確率でお前の姉とやらは死んでるぞ。それでも行くか?」


 門番が無慈悲な事を言ったが、セリアはそれでも笑顔を絶やさず言った。


「生きてますよーお姉ちゃんは。そんな簡単に死ぬような人じゃないですしー」


 姉の事を心の底から信じているようだった。


「さて、最後は赤髪のお前。お前はなぜ門を通りたいんだ?」


 最後は俺に質問が来た。

 答えて困る理由など俺にはない。正直に答える。


「アウターがどんな場所かこの目で見てみたいからだ」

「興味本位で行くのか? くだらんな。お前は通らない方がいいぞ」


 くだらないと馬鹿にされて頭に来た。門番を睨み付けがら反論する。


「俺はガキの頃アウターの話を聞いて、それから今までずっとアウターに行くことを夢見てたんだ。くだらなくなんてない」

「…………お前はアウターが見れれば、死んでも構わないといえるか?」

「構わねぇ」


 門番の男が、ふっ、と笑みを浮かべた。


「最近は、お前みたいな奴は減ってきたな。まあいいだろう。見て来いよアウターを」


 その瞬間、門番たちの後ろにある門が開いた。


 門番たちが、門の前からどいてた。


 門の向こうには何も見えない。ただ真っ白な空間があるように見えた。


 最初にすでに冒険者となっていた者たちから、門を通る。


 門の中に足を踏み入れた瞬間、姿が一瞬にして消失した。不思議な現象を目の当たりにして、俺は興奮する。



 ――――今からアウターに行くんだ。



 実感を持った俺は、我先にと門の前まで行って、門を通った。



 この瞬間、俺の冒険者としての生活が幕を開けた。




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