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「なあ、アンタ前に俺の器が一個だけだって言ったの覚えてるか?」
「ああ、覚えているよ。器一個は珍しいし、そんなに前の話でもないからな」
「その一個の器が全然いっぱいにならないんだ。結構モンスターは倒したのに、一体どういう事なんだ? ほかの冒険者に尋ねたら器の容量が多いと言っていたけど」
話を聞くとレブロンは真剣な表情になった。
「どれくらい倒したんだ?」
「いっぱいだ。具体的な数は覚えてないけど、二十体くらいは倒してる」
俺の言葉を裏付けるように、セリアが、
「わたし何かより全然スレイさんの方が倒してますよね。それでもわたしは四つ器が溜まってますけど」
そう発言した。
「なるほど。魂石も食べたか」
「何個か」
「ふむ……興味深い話だな……確かに君は器の容量が大きいのだろう」
何か考え込むような表情でレブロンは俺を見つめてきた。
「今の君が器いくつ分の魂力を保有しているのか、ちょっとテストしていいか?」
「そんなの分かるもんなのか?」
「動きなんかを見ればだいたい分かる。まあ、持っている身体能力にも左右されるから、完全には分からないけど」
今どれくらいの魂力が溜まっているかは知りたかったので、テストしてもらう事にした。
走ったり、ジャンプしたりと色んなことをするように言われ、それをレブロンが興味深く見ていた。
「なるほど、君の魂力の量は通常の器約八個分はありそうだな。それでまだいっぱいになっていないとはな……」
測定を終えてレブロンは驚いた表情を浮かべながら言った。
八個分か。思ったよりあった。それだけの量あってまだいっぱいになっていないのか。一体どれだけ入るんだろうか?
「最大量を測ることは出来ないのか?」
「残念ながらそれは無理だ。数しか測れない」
そうか……モンスターを倒しまくるしかなさそうだな。
「器一個しかないものは珍しいが、一人だけ知っている。その者に昔色々話を聞いたから、いくつか注意点を話しておこう。まず、死んで復活する場合、自身の器一個分の魂力を消費するということだ。器が一杯になった時に死んだら、全部の魂力が消し飛んでめちゃくちゃ困ったと嘆いていたのを覚えているよ」
「は? ちょ、ちょっと待て、普通の器一個分の魂力を消費して復活できるってわけじゃないのか? それっておかしいだろ。何で器が多かったら生き返るのに必要な魂力の量が増えるんだ」
「さあ、それは分からん。でも彼はそう言っていた。君は器が一杯じゃないから死んだらそのまま死んでしまう。気を付けるんだな」
まじかよ……あの時、恐怖を感じたがあれは正しかったのか……
しかし、そうなると器の容量がデカいってのもいい事ばかりじゃないな。
「それから、魔法を使う際も注意が必要だ。魔法は器一個分の○○%を消費して使用する、みたいな感じになっているが、容量が多い者も同じ%で魂力を消費するようだ。つまり同じ魔法でも一回分に消費する魂力の量が多いというわけだ。その分、同じ魔法でも威力が上がるようだが」
「使う量が多くなるけど威力は上がる……乱発は出来ないってわけか」
「そうだな。特に今の君は器の最大量が分からない状態だ。ないとは思うが、100個分ある可能性もゼロじゃない。そうなると、低級の魔法でも一発でかなりの魂力を消費してしまう。最大値が判明するまでは、魔法は使わない方がいいだろうな」
正直魔法は使ってみたかったのだが、それなら確かに使わない方がよさそうだ。新しく覚えた魔法の使い方を教わって試し打ちしようとも思っていたが、やめておこう。
「最大量が判明したらその時は言ってくれたら嬉しい。君みたいなタイプは少ないから興味深いからな」
好奇心を感じる目でそう言ってきた。教えてくれたんだし、そのくらいはしてもいいだろう。俺は頷いた。
聞きたいことも聞いたし小悪魔の森へと向かおうとしたら、「あ、待った」と呼び止めてきた。
「言い忘れていたが、小悪魔の森に行く前に仲間を増やしておいた方がいいぞ。小悪魔の森は結構難しい場所だし、それにグリーンワールドの三つ目の試練があるレッドエリアは、六人以上いないと入れないことになっている。今のうちに仲間を増やして連携を出来るようになった方がいい」
そうアドバイスをしてきた。
仲間を増やすか……前回痛い目にあったからな。正直気は進まないが……
だが、どのみち6人いないと入れない場所があるのなら、増やさざるを得ない。それなら早い方がいいだろう。
俺以外もあまり進まないという表情をしている。特にシラファはあからさまに反対しそうな感じだ。決めるなら話し合った方がいいだろう。




