35
ファースト・シティを出発し、からくりの塔へ到着した。
中へと入る。
今回は無駄に罠にかかったりせず、スピード重視で攻略をした。一度攻略しているので、割とすんなり進むことが出来た。以前、ビッツとガジットに嵌められた五階に到着した。
この階は真ん中の罠さえよければ、何の苦労もなく六階に進むことが出来る。
残りは何階だろうか。あと少しで完全攻略となればいいんだが。
六階に上がる。ここから先は初めて行くので、慎重に行動しないといけない。
階段を登って六階に到着。
何もない部屋だと思ったが、壁を見ると階段が八つあった。
「階段がいっぱいありますねー。どれに登ればいいんでしょうかー?」
「この中のどれか一つが本物ということだろうな」
「間違った階段に登ってしまったらどうなるんだろう」
罠にかかると見て間違いないな。
からくりの塔から叩き落とされたりするかもしれない。
ビッツとガジットは、分かりやすい罠はかかった時やばいことになって、分かりにくい罠はかかっても大したことないと言っていた。まあ、あいつらの言葉を信用するのは問題あると思うが。
「本当の階段がどれかヒントを探そう。無かったら、あてずっぽうで登るしかないな」
俺の言葉に三人は頷いた。何か手掛かりらしき物が書かれていやしないか、階段の周りをくまなく調べてみたが、何もかかれていなかった。
階段の回り以外も捜索してみたが、手掛かりとなりそうなものは見つからなかった。
「仕方ない。行ってみるか」
「賛成だ。調べているばかりでは埒が明かない」
「ちょっと怖いけど行くしかないかぁ」
「そうですねー。何もなければいいんですけどねー」
俺の言葉にほか三人は賛同した。何もないという事はないだろうけど、楽に倒せる敵であってほしい。
一番近くにあった階段を登った。
上がっていくと、途中で壁に進路を阻まれた。この階段は、外れなようだ。
でも何もないのか? そう思っていると、壁が突然光を放ち、一瞬で目の前の壁がなくなった。いや、壁がなくなったのではない。俺たちが移動したのだ。さっきまで見ていた六階の光景が広がっていた。
転移させられるだけ……とはならなかった。黒い靄が発生して、モンスターが出現した。
普通の倍くらい大きい、シルバードッグが二体出現した。
大きいから強いかもと思ったが、その予想は外れた。動きも遅いし、防御力も低い。あっさりと剣で首を斬り落とせた。
「やったー、今回は刺さりましたよー!」
今までシルバードッグとゴールドドッグに、矢を突き刺すことのできなかったセリアが、ヘッドショットを成功させて、はしゃいでいた。刺さるようになったのは魂力が増えたのと、矢を新しくしたのが要因だろう。
シルバードッグは一撃で死亡し、魂力がセリアに吸収される。
「間違ったら六階に戻されて、モンスターは出るが、雑魚。楽勝だな」
特にビビる必要はないと判断した俺たちは、ためらわず次の階段を登った。
また戻されたが、今回も弱いモンスターだったため、あっさりと撃退。
三回くらいやって、本当の階段を発見し、七階に登ることが出来た。
七階はほかの階とは違い、壁に窓ガラスがあったので、日の光が入り込んできており、ほかの階より明るかった。
「わぁー、綺麗ですねー」
セリアが能天気に窓の外の景色を眺める。確かに高いところから見渡す、緑の世界の景色は格別だったが、今は景色を楽しんでいる状況ではない。
七階を観察すると、真ん中に門があった。アウターに来るときにくぐった門と、大きさ、形、色、ほぼ同じだ。ほかには何もない。上に行く階段もなかった。
以前、初心者のダンジョンでも門を見かけたが、くぐったらダンジョンの入口へと戻った。
「あれ? もしかして完全攻略したんですかね?」
「そうなのか? 踏破すると試練を受けることになるんじゃないのか? もう受けたのか?」
「この門を通ると、試練を受けることになるんじゃないのか?」
シラファはそう推測をした。
どうなるかはともかく、この門を通る必要はありそうだ。
門を通る必要があるという考えは全員一致した。
覚悟を決めて、俺たちは門を通った。
門の向こうには、不思議な空間が広がっていた。
空は青空。地面は真っ白で何に乗っているのかすら分からない。
壁はないが、木の柵で囲われている。
何だか薄気味の悪さを感じた。人間が来てはいけない場所に来てしまったような。
帰り道はあるかと思って後ろを振り返ると、門がなかった。
まさか二度と帰れない場所に足を踏み入れてしまったのか? 内心焦っていたが、情けないところを見せたくなかったので、冷静に振る舞おうと努めた。
「何だか変な場所ですねー」
「床が白いし……触っても何だか分かんない。少し柔らかい。冷たくも暖かくもない。匂いも特にしない」
ブロズが地面を触って調べている。
しばらく経過して、光の柱が立った。そこから何かが降り立ってきた。
純白の翼の生えた女だ。着ている服も純白だ。
目をつぶっているが、顔の作りは驚くほど整っている。
天使、と言い現わすのが一番近いかもしれない。
「試練を受けますか? 受けませんか? 一度受けた場合、クリアするまでここを出ることは出来ません。受けなかった場合、帰りの門が用意されます」
天使は名乗らずいきなりそう言ってきた。
「アンタは誰だ?」
「試練を受けますか? 受けませんか? 一度受けた場合、クリアするまでここを出ることは出来ません。受けなかった場合、帰りの門が用意されます」
質問には答えず、最初のセリフをくり返した。
それからも同じセリフをくり返し続ける。これしか喋れないのだろうか。
俺は仲間たちの顔を見回した。
力強く頷いたのを見て、全員の覚悟が決まっていることを知った。
「受ける」
「かしこまりました。それでは『力の試練1』を開始させていただきます」
その瞬間、天使は消えた。
代わりに巨大な何かが空から落ちてきた。結構なスピードで落ちてきたのだが、地面に付くとき何の物音もしなかった。
落ちてきたものの正体を確かめる。それは巨大な白い球体だった。何だあれは? 困惑しながら観察していると、球体がいきなり空中に浮いた。
球体はぐるりと反転する。
すると、中央に黒丸があった。黒丸の部分だけ光沢が入っており、まるで巨大な目であると思った。
そいつは、黒丸で俺たちを見据え、いきなり動き始める。そして、黒丸の部分から、何かを発射してきた。慌てて避ける。謎の攻撃が当たった白い床は無傷だったが、これはこの床が特殊だからで、人間が食らって無事かは分からない。いや、無事じゃないと考えるのが自然だろう。避けた方が無難だ。そんなに早い攻撃ではないし、避けること自体は容易い。
「多分こいつを倒せば試練完了なんじゃないか?」
「だったら、分かりやすくていい」
シラファはそう言って、ジャンプして槍を目玉に突き刺した。それほど高くを飛んでいないので、十分ジャンプしたら届くような距離だった。
目玉は苦しむように不規則な動きを初めて、地面に落ち、その後、消滅した。
「え? 倒したんですか?」
「やけにあっさり……」
こんな簡単でいいのか? と思ってたら空から二体さっきの目玉が降ってきた。
「もしかして、倒せば倍々に増えていくって奴ですかね」
「かもな。十体くらいで勘弁してほしいが」
増えすぎると手におえないかもしれない。
今回の試練は初めての奴なので、そんなに難しくなければいいのだが。
今度はセリアが矢を二連射して両方を攻撃する。
一撃では死なないようで、目玉は例の謎攻撃を放ってきた。まだ二つなら全然余裕で避けられる。セリアがさらに二連射すると、二発目を食らった目玉はさっきと同じように苦しみだして死亡した。
「倒しましたー……けど、魂力は入んないみたいです……」
何とも不親切な敵だ。
今度は四体出てくる。今度は俺とブロズ、シラファ、セリア、全員で一体ずつ倒した。
まだまだ余裕だが、次八体出てきた。冷静に考えたら、倍々で増えるなら十体という数字にならないな。今回で終わりか、せめて次の十六体で終わって欲しいが。
八体ともなると、色んな方向から攻撃を撃ってきて、避けづらかった。ただ、ブロズが謎攻撃を盾で受け止めてみると、普通に防げたので、そこまで凄い威力ではないようだ。
八体も倒して、次十六体が出てきた。
こうなると、攻撃が色んな方向から撃たれまくって、全部回避することは出来なかった。右手の肩の辺りに命中した。
ただ、ぶっちゃけそんなに痛くない。何か避けてたのが馬鹿らしくなってきた。俺は攻撃を気にすることなく、目玉を片っ端から斬っていった。
最終的にあっさり十六体も倒し終えた。
まだ来るかと思ったとき、「試練達成です。おめでとうございます」とさっきの天使の声が空から響いてきた。
「……なんか、あっけなかったですねー」
「……恐らくだが地下迷宮の方が難易度的には高かったんだな」
からくりの塔自体は、普通にやれば楽に攻略できるような程度なのだろう。あの地下迷宮に転送される罠にはまらなければ、死ぬことは極まれ程度の難易度だったはずだ。地下迷宮を抜けた俺たちからして、歯ごたえがなく感じるのも当然か。
気付くと後ろに門が出来ていた。俺たちは門を通り外へと出た。
「思ったよりあっさりだったが、最初の試練は突破したな」
「そうですねー。次は小悪魔の森ってところでしたっけ、そこに行きましょうー」
「ああ、そうだな」
試練を攻略していけば次の世界に進む資格を得ると、レブロンは言っていた。
この調子でどんどん試練を達成していこう。そして必ず、誰も行ったことのない、7th世界とやらに行ってやる。
2章終了です!
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