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 ビッツとガジットが酒場に入ってきた。現在客の数は少なかった。

 この酒場は元々あまり人気がないのか、たまたま人が少ないのか分からないが、これは都合がいい。


 この二人は常連なようなので、ほかに冒険者がいた場合、こいつらの味方をする奴らが出てくる可能性があり、そうなると面倒なことになるが、今は客がほとんどいないのでその心配はない。


「行くぞ」


 俺がそう合図をすると、三人は頷く。立ち上がって、ビッツとガジットの前まで歩いた。


「よう、数日ぶりだな」


 俺が声をかけると、ビッツとガジットは、信じられない物を見るような目でこちらを見てきた。


「お前ら……どうやって外に」

「モンスターどもを倒して普通に出ただけだ」

「馬鹿な。あそこから出てきた初心者冒険者は、今まで一人もいなかったはずだ!」

「今までお前らが騙してきた冒険者が、ヘボだったってだけだろ」


 ビッツとガジットは俺たちを不機嫌そうな表情で睨み付けてきた。出てきたことが気にくわないようだ。


「今からお前らを町長の家に連れていく。大人しくしていれば、危害は加えずにおいてやる」


 そう言うと、ビッツとガジットは笑い始めた。


「ハッハッハ、迷宮を脱出したからって良い気になりすぎだ。俺たちがお前らより先輩の冒険者だってことを忘れるな。てめーらなんか一瞬で叩きのめせる」

「下手な騒ぎは起こしたくねーし、今すぐ僕たちの前から消えるのなら、見逃してあげるよ」


 明らかに余裕がある感じだ。確かにこいつらの方が冒険者としては先輩だし、勝てるとは限らない。とはいえ、こいつらを見逃すなんてことはあり得ない。


 剣を抜いて戦おうとすると、最初にシラファが動き出していた。俊敏な動きでビッツの足を槍で斬った。全く反応できず、両足を深く斬られて膝をついた。


「ったぁ!!」


 シラファの攻撃も早かったが、向こうも反応が全然できていなかった。弱いぞこいつら。


 俺はガジットを狙う。武器を構えているガジットの手首を狙った。斬り落としはしなかったが、深い傷をつけ動かせなくした。そのあと、シラファと同じく足を斬り、行動不能にした。


 魂力では死んで復活できるが、深手が自動で治ったりしないようだ。ただ死んだら全快するのだろう。手足が斬られて欠損しても、死んだら生えてきたりするのだろうか? 試してみないと分からないが、やる気は起きないな。


「は、早ぇ……クソ……」

「女の方はともかく、な、何で器一個の奴が強いんだ……」


 倒れながら苦しそうにうめいている。


「今からお前らを町長に連れていく。妙な抵抗はするな。勝てないのは分かっただろ?」


 二人はあくまで反抗的な目つきで俺たちを見る。大人しく付いてくる気はないようだな。動けなくしているとはいえ、今のままだと運びにくい。魔法を使ってくる可能性もあるし。どうやって運ぼうか考えていると、


「おいてめぇら」


 後ろから声をかけられた。酒場のマスターだった。厳しい表情をしている。常連を傷つけられて怒っているのか? 無関係の人は巻き込みたくない。説明してわかってくれるといいが。


「これは……」

「そいつらを町長のところに連れていくなら、この縄で縛ればいい」


 マスターは俺に赤色の縄を渡してきた。


「こいつで縛られると力が出せなくなるし、魔法を使えなくなる。全く抵抗できなくなるってわけだ」

「ありがたいけど……何でだ? こいつら常連じゃなかったのか?」

「こいつらが悪党だってのは、よく分かっている。マナーもクソ以下ではっきり言って嫌いだったからな」


 二人の邪悪さはマスターはお見通しだったようだ。

「ありがとう」とお礼をいい、縄を受け取った。


 俺たちは縄でビッツとガジットをグルグル巻きに縛る。そのあと、肩で担いだ。縄の力なのか、全く暴れたりはしない。これなら楽に運搬できる。


 最初に広場へ行った。地図で町長の館の場所を調べた。場所は広場の近くだったため、すぐに行くことが出来た。


 夜に訪れていいのか分からなかったが、早いところ引き渡したかったので、外から声をかけた。


 しばらくして館の扉が開く。


「何かご用でしょうか?」


 女性が出てきた。最初に俺たちをファーストシティへと案内したミファエラだ。この家に住んでいたのか。


 俺は事情を話す。


「最近初心者冒険者のからくりの塔制覇率が下がっていましたが、もしかしてそれが原因だったのでしょうか。まあ、まだその話が本当だと決まったわけではありませんが」


 ミファエラは半信半疑だという感じだ。


「町長は今はお休みですので、私が代わりに裁きを下しましょう。その二人を下ろしていただけますか?」

「分かった」


 ビッツとガジットを地面に下ろした。

 ミファエラは、口元の縄をほどき、口が利けるようにする。


「魔法でスレイさんの言ったことが本当か、調べることは容易いです。しかし、それには大量の魂力を消費してしまいますので、なるべく使いたくはありません。自白していただけると楽なのですが」

「死刑になるのに自白なんかするか!」

「自白して頂いたら、罪を軽くすることは出来ますよ」

「ほ、本当か?」


 なんか妙な展開になってきた。自白するだけで、罪が軽くなって罰金刑とかになったら、流石に問題があると思うが。

 ビッツとガジットは顔を見合わせて、そのあと自白をした。

 俺たちを罠に嵌めたこと、そして俺たち以外の冒険者も罠に嵌めたこと全て告白した。


「ありがとうございます」

「これで罪は軽くなるんだろうな!」

「ええ、なりますよ。拷問からの処刑から、なるべく痛みを与えない処刑に変えましょう」

「「は?」」


 二人は間の抜けた声を出した。


「て、てめー騙したな!」

「騙してはいませんよ。私は罪を軽くすると言っただけです。拷問からの処刑は本当にきついですからね。あなた方は正しい選択をしたと思いますよ。普通の処刑でも、器があるから何度も死なないといけないので、楽ではないですけどね」


 微笑を浮かべながらミファエラは言った。

 確かに嘘は付いていないが、中々あくどいやり口だ。この人、結構怖い人かもしれない。


「それでは彼らを地下牢へ運んでください」


 ミファエラが屋敷の中にいる誰かに命じた。男三人が急いで駆けつけてきて、ビッツとガジットの二人を運んでいった。


「二人の処刑は近日中に行われます。運んできた人は見る資格があるのですが、どうします?」

「俺は遠慮する」


 悪党とはいえ、人が死ぬのを見て良い事などないだろう。

 俺以外も同じく見ないと答えた。


「そうですか。今回は悪党を捕まえてきていただき、誠にありがとうございます」


 ミファエラは深くお辞儀をした。




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