31
首なしを何とか倒し切った。
だが、油断は出来ない。一体倒した後、三体出てきたのだ。また出てきてもおかしくはない。五体とか同時に出てこられたら、勝てるかどうか。
二体首なしを倒して、俺はだいぶ強化されているので、もしかしたら割とあっさり倒せるかもしれない。シラファも復活したことだし。
警戒しながら待つこと数分。新しい奴が出てくる気配はない。
「も、もう出てこないようですね……」
セリアがほっとしたように呟いた。
流石に数分経過したし、もう出てこないと見ていいだろう。
「良かったー。あー、俺は盾も鎧もぶっ壊れっちゃった」
「わたしも矢がもうなくなっちゃいましたよー。これではもはや、何も出来ません。それにしてもシラファさんのおかげですよー。やっぱりシラファさんは強いですねー」
セリアは感心したように呟いた。
シラファは返答をしなかった。ただ、俺の勘違いじゃなければ何か言いたそうな表情に見えた。
「じゃあ扉を開けてみるか。ここで終わりならいいんだけどな」
扉を開けたら出られると思いきや、首なし以上の敵が出てきた、何てことになる可能性もある。首なしより強いモンスターとなると、対応しきれないかもしれない。
慎重に扉を開けて、先へ進んだ。
小部屋に出た。宝箱が二つ置いてある。それから、梯子がかかっていた。上を見てみると、天井が見えなかった。この梯子を登ると外に出られるのだろうか。
「あの梯子を登ったら出られるんですかねー。その前に、宝箱が気になります」
「そうだな。ミミックじゃないのを確認したら、開けてみよう」
宝箱を観察して、動いたり目が開いたりしないかを調べる。一分くらい見続けたが、異常はなかったので、本物だと判断する。
「こっちも本物みたいですー」
もう一個の宝箱はセリアが確認していたが、そっちもミミックではないようだった。
俺は宝箱を開いて、何が入っているのかを確認する。
金の延べ棒が三つ入っていた。これは大金になりそうだと思って手に取ってみると、やたら軽い。まるで紙切れを持っているようだ。これ本当に金なのか? 魂力で強化されているため、軽く感じているだけかもしれないが、それを考慮してもこれはあまりにも軽い。ハリボテのような感じがしたのでチョップをしてみたが、砕けたりはしなかった。硬度は普通にあるような気がする。
「金だと思ったんですけど、やたら軽いですねー。こんなもんなんですか金って」
セリアが不思議そうに謎の金属を持ちながら疑問を口にする。俺はその疑問に自分の考えを言った。
「金は軽くないぞ。魂力で強化されてるから軽く感じてるのかもしれないが、それを加味しても軽いし、アウター独自の金属かもな」
「そうですかー。金だったらお金持ちになったかもしれないですけどね」
「これがまだ安いって決まったわけじゃないし、ファーストシティで調べてもらわんとな」
セリアの宝箱にも金っぽい金属の延べ棒は、三つ入っていた。
六つなので分けることは出来ない。
今回は全部売って、貰ったルバの方を山分けすることで決定した。
延べ棒を持ち、梯子を登る。
結構長い梯子だ。数分間登り続けてやっと一番上に到達した。出口は石のようなものでふさがれていた。石をどかすと、眩い光が差しこんで来た。
登ると地上に出た。近くにからくりの塔がある。
からくりの塔付近に出口が用意されていたようだ。
「出られましたー……一時はどうなることかと思いましたが、何とか出られましたねー」
「まあ、俺たちはみんな一回死んじゃったけどね。スレイ君は、死んでないし凄いよ。スレイ君がいなかったら絶対出られてなかったね」
「そうですねー」
「よ、よせよ」
褒められて何だか照れ臭い気持ちになる。王宮では貶されはしても褒められたことはほとんどなかったので、俺はこういうのに全く慣れていなかった。
「この状態でからくりの塔に挑むのは無理ですし、ファーストシティに戻りましょうかー」
「だな。ビッツとガジットにお灸をすえてやる必要もあるしな」
「ですねー。悪い人は懲らしめないといけません」
今奴らがファーストシティにいるかは分からないが、そんなに広い町でもないから、情報を知っている人はいるだろう。探し出すことは不可能じゃないはずだ。
俺たちはファーストシティに戻ろうとする。
すると、さっきまで口を開かなかったシラファが、
「待ってくれ、話したいことがある」
神妙な面持ちでそう言った。俺たちは立ち止まって、シラファの方を見た。
「今回は何とか出られたが、足を引っ張ってしまった。済まなかった。返せるか分からないが、この借りはいずれ必ず返す」
シラファは頭を下げてきた。大人しく頭を下げるような奴だと思っていなかったため、意外に思う。今回の件で少しだけ心を入れ替えたのだろうか。
「借りを返す必要はない。仲間だから当然の事だろ」
俺はそう言い返した。セリアとブロズも、微笑みながら頷いた。
シラファは間を置いて、
「仲間だから、返したいんだ」
と言った。
その言葉を聞いて、俺は耳を疑った。仲間って言ったよな今。とにかく他人が嫌いという感じの奴だったと思ったが。さっきの経験でそこまで心境が変化したのだろうか。
まあ、仲間だと思ってくれて悪いことはない。もしかしたらシラファはいずれ抜けるかもしれないと思ったが、今後も一緒にいてくれそうだ。首なしとの戦いでシラファの戦闘技量の高さは再確認できたし、頼もしい限りだ。
俺たちはファーストシティへと帰還した。
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