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 からくりの塔地下を歩く。

 道は狭くないが、俺たちは一列に並んで歩いた。ブロズが先頭を歩き、俺はその後ろ、セリアは俺の後ろ、最後尾にシラファという並びだ。


 薄暗く気味の悪い場所だ。地面に骸骨が落ちていたり、気味の悪い絵が壁にかかれていたりしていた。


 この骸骨は、ここに転送されて死んだ冒険者のものだろう。負けてしまえば、俺たちもこうなる。恐怖を感じた。だが、ブロズとセリアが露骨に怯えていたので、しっかりしないといけないと、心を強く保てた。


 歩き続けると、強い光に照らされている場所を見つけた。あそこに何かあるのだろうか。「良いものがあれば、いいんですけど……」とセリアが呟いた。


 その予想は外れた。


 その場所に近付くと、異形のモンスターの姿がはっきりと目に映った。


 全身が鉄で出来ている人型のモンスターだ。顔には大きな目が一個。額から角があり、両手はノコギリになっている。

 そんな奴らが、四体屯していた。あまりに異形な生物だ。アウターに来る前は想像もしていなかった。ここまで来ると、見てわくわくするというより、恐怖を感じる。


 連中の大きな目玉が、俺たちの方を向いた。気づかれた。セリアが「ひぃ」と悲鳴を漏らす。


 ノコギリのモンスター。ノコギリ野郎とでもいうか。

 奴らは俺たちを見つけるや否や、こちらに走ってきた。雄たけびを上げたりしていないのは、そもそも口がないからか。


 応戦の構えを取る。奴らは全身金属で出来ている。普通に斬っても斬れないかもしれない。ただ、分かりやすい弱点がある。目だ。あの目を潰せば、殺せないにしても、視覚を潰せるので、優位に立てる。


「セリア、目を狙え」

「分かってます!」


 俺が指示を出していた時には、セリアはすでに弓を構えていた。弦から手を離し、矢を放った。一直線にノコギリ野郎の目に飛んでいく。狙いは正確だったが、当たらなかった。ノコギリ野郎は素早く横に回避したのだ。


 かなり俊敏な動きだった。ただ避けたという事は、当たったらまずいということ。目を狙うのは正しいだろう。


 セリアは連射するが、全部避けられた。接近される。ブロズが盾を構えて、ノコギリ野郎の攻撃を防いだ。二体の攻撃を受け止めたが、残り二体はセリアとシラファを標的に攻撃をする。シラファは一人で対応できるだろうから、俺はセリアを救援した。


 剣でノコギリを受け止める。こいつらの両手はどっちともノコギリだ。一本を受け止めたが、もう一本で首を狙ってきた。回避しようと思ったら、ノコギリ野郎の目に矢が突き刺さった。さっきまで避けていた矢も、至近距離から放たれれば回避不可能なようだ。


 目を射抜かれたノコギリ野郎は、地面に転がりのたうち回った。めちゃくちゃ痛そうだ。死んではいないが、こうなるとしばらく戦えまい。こいつは一旦放置して、二体の相手をしているブロズの救援をしようとすると、シラファの叫び声が聞こえた。


 驚いてシラファを見ると、ノコギリ野郎に押されていた。肩が血で真っ赤に染まっている。斬られたのだろう。戦っている動きを見ると、どこかおかしい。表情がいつものシラファではない。どこか怯えながら戦っているように見える。


 俺はハッとした。

 シラファは先ほどの戦いで一度死んだ。その時の恐怖は味わわなければ計り知れない。彼女はいつも気丈に振る舞っているが、内心かなりショックを受けていたのだ。それこそ、戦いになると恐怖でまともに体が動かせなくなるほどに。


 俺は急いで救援に向かった。シラファは手を震わせ槍を手から落としてしまう。ノコギリ野郎はその隙を見逃さない。シラファの首を斬り落とすためノコギリを振った。反射的にシラファは回避しようとしたが、完全には回避しきれず、首を斬られる。傷は深かったようで、おびただしい量の血が噴き出して、シラファは絶命した。


 助けられなかった。俺は歯噛みする。

 器は回復していたので、また生き返るだろうが、当然安心なんてできない。


 ノコギリ野郎はシラファを殺した達成感で少し気が緩んでいたようだ。奴の目を思いっきり突き刺す。苦し気にのたうち回り、ノコギリをめちゃくちゃに振り回す。手や顔を少し切ったが浅かった。より深く突き刺すため、力を込め続けると、徐々に抵抗が弱まり、全く動かなくなった。どうやら死んだようだ。魂力となり俺に吸収された。


 急いでブロズの救援に向かう。

 ブロズはフレイムを使い、一体の顔を焼いた。目が焼かれ、苦しそうにのたうち回る。その隙にブロズは、剣で目を刺して絶命させた。


 もう一体がセリアに攻撃した。間一髪で避ける。俺はセリアの救援に向かう。真正面から斬り合いになった。動きも早いし、中々強い。だが、決して勝てない敵じゃない。動きをちゃんと読んで、隙を見つけ、目を突き刺した。またも暴れられ、ノコギリで体を斬られる。今回も傷は浅かった。だが、いずれ重傷を負うかもしれないので、次にこいつに会ったときは、ほかの倒し方を考えるべきかもしれない。


 とにかく三体目は俺が倒して絶命させた。最初にセリアの矢が刺さったノコギリ野郎は、時間が経って弱り絶命した。セリアに魂力が吸収される。


 ノコギリ野郎たちを倒した。

 それは良いが、問題はシラファだ。


「シラファさん。大丈夫ですか?」


 呆然と座り込むシラファに、セリアが駆け寄る。シラファは強いショックを受けているようだ。セリアの言葉に反応はない。


 長いあいだ沈黙をして、ようやくシラファは口を開いた。


「……私は置いていけ。足手纏いになるだけだ」



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その劣等生、実は最強賢者、ノベリズムで連載中です!
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