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 足が動かせなくなって俺は困惑する。

 突然光り始めた床に、足がへばりついているみたいだ。


「う、動けないですー」

「な、なんだこれ」

「くっ……」


 周囲の様子を確認してみると、セリア、ブロズ、シラファも俺と同じく、動けなくなっているようだった。


 光りから逃れているのは、ガジットとビッツの二人だけ。


 あの二人はこの球を動かしたら、魂石を大量に落とすレアな魔物が出現すると言っていた。しかし出てきたのは動けなくなる光の床。

 勘違いしたという可能性も、二人だけ回避してことからありえない。


 俺はガジットとビッツを見た。すると、俺たちを見て、ニヤニヤと笑っていた。


「貴様ら……どういうことだ」


 シラファが怒気を込めて問いかけた。


 ガジットとビッツは、数秒間高笑いをし、笑いすぎて浮かんでいた涙を拭いた。

 その後、ガジットがシラファの問いに答えた。


「ハッハッハ……また馬鹿なルーキーを騙すことが出来たぜ」


 邪悪な笑みを浮かべるガジットに、セリアが焦りながら言った。


「だ、騙したってどういうことですかー!?」

「言葉通りの意味さ。あの球を動かしてもレアなモンスターなんて出やしない。足元の床が突然光って、動けなくなり、あと三十秒くらいで、からくりの塔の地下に転送される。そこにはルーキーじゃとても倒せないモンスターがうようよいるんだ。君たちはそこで死ぬんだ」


 ビッツは笑みを崩さず、俺たちの状況について説明した。


「な、何でそんなことをするんだ」


 ブロズが困惑しながら、もっともな疑問を口にした。

 俺たちを罠にはめて、何の得があるというのだろうか?


「理由は単純だ。人を騙して陥れるのが、たまらなく好きだからだ。アウターに来るような奴は、元の世界で居場所をなくしたが、アウターにはあるかもと希望を持って来るような奴がほんとどだ。そんな奴を再び絶望の淵にたたき落とすのほど、愉快な事はない」

「まあ、本当は別の罠に仕掛けて、君たちが絶望する表情を見たかったけど、君たちはルーキーにしたら強い方だったからね。ほかの方法なら、生きながらえる可能性があったしね

 あ、直接殺すのは駄目なんだよ。人を殺すとマークがついて、それで分かっちゃうからね。こうやってモンスターに殺させるのが一番なんだ」


 二人の言葉を聞いて、こいつらがどうしようもない、クズ野郎だというのが分かった。


 シラファが話を聞いた後、激怒したような表情で、セリアに指示をする。


「おい、あいつらに矢を放て」

「……え?」

「早くしろ! このまま言われっぱなしやられっぱなしでいいのか!?」


 手は動かせるので、攻撃することは可能だが、人間に矢を放つことに抵抗があるのか、セリアは矢を撃とうとしない。


「早く!!」


 シラファがそう叫んだ時、俺たちは先ほどまでとは、全く別の場所に立っていた。


 薄暗い部屋だ。床は光は消えていた。

 骨が床に散乱している。何の骨かは分からないが、もしかしたら人骨かもしれない。


 恐らく俺たちは、ガジットとビッツが言っていた、からくりの塔の地下とやらに、転送されてしまったようだ。


「クソッ!!」


 シラファが騙された怒りを石床にぶつけた。思い切り拳で床を殴りつけ、石にひびが入る。魂力なしなら、手の骨が折れそうであるが、結構大量に魂力を吸収しているシラファなら、怪我はしていないだろう。


 ただ不用意に床を殴られて、床が抜け落ちたり、罠が発動すると困るので俺は止める。


「怒るのは分かるがやめろ。床を殴るのは危険だ」

「……」


 シラファは俺を無言で睨み付ける。


「ふん、元はと言えば、あいつらを信用するなという私の言葉に、耳を貸さなかったお前らが悪い」


 その言葉に俺は返答に詰まる。

 確かにあの二人が悪人だとは見抜けなかった。結果的に正しかったシラファの言葉を聞かなかったのは、確かに悪い事だった。


 ただ、それでも、俺も奴らに騙された側なのに、責められるのは、納得のいかない気分になった。


 一言謝るのが筋かもしれないが、色んな感情が邪魔をして、口にすることは出来なかった。

 俺とシラファはしばらく睨み合う。

 そこにセリアが割り込んできた。


「ここで喧嘩するのはやめてくださいよー。確かにわたしたちがシラファさんの言葉を聞かなかったのは、悪かったです。それは謝ります。ごめんなさい。でも、ここで喧嘩してたら、外に出られなくなっちゃいます」


 セリアの言葉は正論だった。ガジットとビッツの言葉が正しいのなら、相当危険な場所に飛ばされたということだ。全員で協力していかなければ、進むことは出来ないだろう。


 俺はシラファの言葉を信じなかったことを素直に謝った。

 ブロズも一緒に謝った。


 シラファそれで少しは、俺たちと協力する気になったようだ。


「……そもそも外に出られるのか? 強いモンスターがいるというだけでなく、出口のない場所に飛ばされた可能性もある」


 シラファの言葉を聞いて、俺たちは顔を青ざめさせる。あり得ない話ではない。ここに一生閉じこめられる可能性もある。


「そ、そんな暗い事言ってたら駄目ですよ! ぜ、絶対出口があると信じて進みましょう」


 セリアは前向きにそう言ったが、心の底では不安を感じているようだった。


 ふと俺の耳に、何かが聞こえた。

 何かの足音だ。俺は三人に静かにするように言って、耳に神経を集中させる。


 聞き間違いではなかった。数体の何かがこちらに向かって近づいてきている。


 俺以外も聞いており、迫りくる敵を迎え撃つ準備をした。





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その劣等生、実は最強賢者、ノベリズムで連載中です!
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