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 扉の先には広い部屋があった。


 先ほどまで歩いていた洞窟は、自然にできた凸凹の地面だったが、この部屋は石のタイルが敷かれている。


 壁もタイルが張られていた。明らかにここだけ人の手で作られた形跡がある。


 緊張しながら中に入ったが、中には何もいなかった。


 しかし、ちょっと前に、何もないところに黒いもやが発生して、モンスターが出てきたのを目撃していたので、ここもその可能性があると思い、俺たちは部屋の奥までは行かず、入り口付近で身構えた。


 俺の予想は当たり、黒い靄が部屋中に発生した。


 中央に巨大な黒色の蜘蛛が出現した。人間より遥かにデカい。高さは人間三人分くらい、幅は十人分くらいありそうだ。巨大蜘蛛の周辺には、小さい蜘蛛が数十体いる。小さいと言っても、通常の蜘蛛よりは大きい。狼くらいの大きさだ。


 蜘蛛たちにはそれぞれ鋭い牙が生えていた。あれに噛まれると痛そうだ。


「き、気持ち悪いですー……」


 セリアは顔を青くして蜘蛛たちを見た。女はああいう虫が苦手だよな。俺は全然平気だけど。


「お、俺も苦手だ蜘蛛は……」


 男であるブロズも苦手のようだ。


 シラファは特に怯える様子もなく、蜘蛛たちを睨み付けていた。こいつは俺と同じく平気なようだ。


 さっきまでのモンスターは雑魚だったが、流石にあのデカいのは弱くはないだろう。油断はしてはいけないな。


 早速巨大蜘蛛が攻撃してきた。

 何か白い物が飛んでくる。一番前にいたブロズが咄嗟に盾を構えて、それを受け止める。


「う、うわ! 糸だこれ!」


 攻撃の正体は蜘蛛の糸だった。絡めとられて動きにくそうにしている。


 そのブロズに小さい蜘蛛たちが襲い掛かる。五体が一斉に飛びかかってきた。俺は咄嗟にブロズを襲ってきた蜘蛛を剣で斬った。セリスも矢を放ち、ブロズを助ける。


 シラファだけは、連携をする気がまるでないようで、巨大蜘蛛めがけて走っていった。自分が倒して実力を示したいのだろうか。


 ただシラファの行動は蜘蛛たち注目を集めた。そのおかげで、ブロズを蜘蛛の糸から解放する時間が出来た。それを考えての行動――ではないだろうけど。


 剣でブロズの糸を切って、俺は解放した。


「助かったよ」

「当然の事だ。あの糸は受けない方がいいみたいだな」

「うん。今度からは避けないとね」


 糸の速度自体は早くはなかった。避けるのは難しくないだろう。


 さっき戦って分かったが、あの小さい蜘蛛は、はっきり言って雑魚だ。この程度なら何体いても、倒せると思う。


 問題は巨大蜘蛛の方だ。あいつはたぶん弱くはないだろう。


 今のところシラファが、上手く引き付けてるので、まずは小さい蜘蛛から倒して、そのあと四人で一斉に叩くのがいいだろう。


「まずは小さい蜘蛛から倒して、そのあと巨大蜘蛛を一斉に倒そう」

「わたしもそれがいいと思いますー。おっきいですけど、四人でかかれば倒せなくはないと思いますよー」

「俺も異論はないかな」


 二人が了承したので、戦闘方針は決まった。


 俺は小さめの蜘蛛だけをまず狙って斬って斬って斬りまくる。


 やはり小さい蜘蛛は弱い。


 俺が強くなったので、楽に倒せてるという事もあるかもしれない。


 セリアとブロズも、小さい蜘蛛を倒していく。二人にとっても小さい蜘蛛は雑魚のようで、何の苦も無く倒していった。


 一番倒したのはシラファだった。多くの蜘蛛たちが、奴をターゲットにしているため、一斉に襲い掛かられていたが、それを悉く切り伏せていた。ただし、それが原因で、シラファは巨大蜘蛛に攻撃は出来ていない。


 ここでシラファに、巨大蜘蛛の糸攻撃が当たった。今までは避けていたが、小さい蜘蛛に気を取られ過ぎたようだ。糸に絡めとられ動けなくなる。


 動けなくなったシラファを狙って、小さい蜘蛛たちが襲い掛かった。


 気にくわない奴だし、助けてやらないと思ったけど、やっぱり見殺しにするのは寝覚めが悪い。


 シラファに襲い掛かっている蜘蛛たちを、剣で斬り裂いた。


 セリアとブロズも、シラファに襲いかかる蜘蛛たちを倒す。


 そのあと、シラファを絡めとっていた糸をほどいてやった。


「……」


 なぜか助けたのに、恨めし気な表情で見られた。

 まあ、感謝の言葉が聞けるとは思ってなかったから、別にいいけど。


 小さな蜘蛛は殲滅できたようだ。あとは巨大蜘蛛だが……


 こいつさっきから糸を吐いてくるばっかで、直接攻撃を全くしてこないんだよな。

 出来ないのか、それともやってこないだけなのか。


 そう思って巨大蜘蛛を見ていると、いきなり体色が黒色から赤色に変化した。


 そのあと、黄色い液体を吐き出してきた。

 当たるとまずそうだと思ったので回避した。

 液体は後ろの壁に着弾。ジューと音を立てて、壁を溶かしている。これは当たらなくて正解だったようだな。


 色の変化は、どうもこれから本気出すぜってことっぽいな。


 巨大蜘蛛は、いきなり高速で動き始めて、俺を鋭い牙の餌食にしようとしてきた。


 俺は避けるのではなく、チャンスだと思って、ジャンプして、剣を巨大蜘蛛の頭に突き刺した。


 やったかと思ったが、思い違いだった。


 巨大蜘蛛はまだ動けるようで、頭に乗っている俺を振るい落とすため、体を大きく揺らす。


 何とか落ちまいと、頭に刺さった剣を固く握りしめていたら、剣が巨大蜘蛛の頭から抜けてしまった。

 俺は地面に背中から落ちる。


 結構な高さから落ちたが、魂力の力で体が強化されていたためか、痛みはない。

 しかし、落ちた場所が巨大蜘蛛の顔の真ん前だった。


 巨大蜘蛛の牙が迫ってきた。体勢が悪いので避けられない。


 ――食われる。


 そう思ったとき、槍が凄い速度で飛んできて、巨大蜘蛛の頭に突き刺さった。


 シラファの槍だ。

 どうやら彼女が投擲して、俺を助けてくれたようだ。


 シラファは、若干不機嫌そうな表情で、


「借りは返す主義だ」


 そう言った。


 シラファの槍が刺さったが、巨大蜘蛛は苦しむだけで、死にはしていないようだ。俺は瞬時に立ち上がり、剣を手に取った。


 そして、蜘蛛の頭部を何度も剣で斬り裂く。

 緑色の液体が、大量に飛び散って、体に降りかかった。体にダメージはないので、先ほどの吐いてきた黄色い液体とは全く違うようだ。気にせず巨大蜘蛛を斬り続ける。


 確実に弱ってきている。もう一押しで倒せそうだと剣を振り続けていると、矢が一本巨大蜘蛛の頭に突き刺さった。


 その瞬間、巨大蜘蛛は態勢を崩し、動かなくなった。


 どうやら死んだようだ。


 巨大蜘蛛の魂力は――とどめを刺したセリアに吸収された。


「……な、何かごめんなさい」



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