くりかえすおいかろ
愛した人に、刺されてなんかいなかった。
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昔々、あるところにお兄さんとお姉さんがいました。
お兄さんは力持ち、お姉さんは料理が上手で、二人とも互いに互いを想い合っていました。
そんな二人がいつものようにお話ししていると、急に土砂降りの雨が降ってきました。
二人は雨宿りをしに木の下に___
お兄さんはお姉さんを連れて木の下に向かおうとしますが、お姉さんは動きません。
「早くいかないと、雨でずぶぬれになってしまうよ。」
そうお兄さんが言っても動きません。もしかしたら、雨の音が大きすぎて聞こえなかったかもしれません。
もうあたりはびしょぬれ。もちろんお兄さんとお姉さんもびしょびしょです。
「早く雨宿りをしよう。」
そうお兄さんが口にしたとき、お姉さんは手を振りほどきました。
お兄さんは驚きます。
「ま―、―――がはっ――し――ま―。」
ぽかんとしている間にお姉さんは走り出しました。
ボーっとしている場合ではありません。お兄さんも走り出します。
雨の勢いが強すぎるのか、お姉さんを見失ってしまいました。
~
気付いた時には、雨は止んでいました。
目の前には川、橋は遠くにあります。
遠目から見るとどうやら村のようなものが見えました。
ここでお兄さんは既視感を覚えます。
このあたりにお姉さんがいるような、あれ?
きょろきょろ見回してみても人はともかく生き物すらいません。
とりあえず、お姉さんが向かったであろう方向へ進むことにしました。
~
遠目から見た村が近づいてきました。
どうやら入り口には誰もいない様子。
門番がいそうなのに誰もいないので不気味に思いながらも、その村に入っていきます。
お兄さんは村の中を歩き回ります。
歩きます。走ります。声をかけに行こうとします。聞きに行こうとします。お姉さんはどこだと。もし知っているなら教えてくれ、と。
しかし、村の中には誰一人いませんでした。
歩いているとき、おいしそうな料理のにおいがしました。
走っていると、干しっぱなしの洗濯物が見えました。
聞きに行こうと酒場に行くと、飲みかけのエールがありました。
まるで、そこに人だけいなくなったのかと思うくらいに。
お兄さんは尻もちをつきました。
もう動けません。
お兄さんは時間が止まったように感じるのでした。
~
「んー。バグかな。消えないんだけど。」
~
気が付いたら、お兄さんは木の下にいました。
周りには誰もいません。
お兄さんはお姉さんの名前を呼びます。
返事はありません。
止んだはずの雨は降り続いています。
お姉さんは来ません。
お兄さんは木の下でうずくまりました。
お姉さんは来ません。
お兄さんは目を閉じました。
お姉さんはいません。
何かが近づく音がしました。
瞼の裏で何か光ったような気がします。
少しだけ、目を開けてみます。
人がいました。
髪の長い人でした。
明るい髪の色が似合う女性でした。
まるでおね―――。
「あの、どちら様ですか?」
愛した人は、誰ですか。
「私は、あなたの―――」
ブスッ
お読みいただきありがとうございます。
最初の設定が全没になりそう。てか今回短いですね。