001 まきこまれたらしい
新作です。
「にーこーぷ」ともども、よろしくお願いします。
「ここは・・・?」
俺はいつの間にか何もない部屋の中にいた。
俺の名前は、広瀬幸太、高校2年生だ。
今朝家を出て、自転車に乗って登校していたはずなのだが・・・。
「あ~あ~、テスッテスッ、本日は晴天なり、あめんぼあかいな
あいうえお~、聞こえてますか~~?」
どこからともなく能天気な雰囲気の女性の声が聞こえてきた。
「聞こえてるなら何も言わなくていいよ~、
聞こえてないなら、ちゃんと『聞こえない』って言ってね~」
「・・・・・・」
「よし、聞こえてるね、じゃ説明するよ~」
「待て~~い!!」
さすがにスルー出来なかった。
「聞こえてなかったら、『聞こえない』って返事出来ないだろ?!」
「聞こえてるじゃん」
「いや、もし聞こえてなかったら返事しないだろ?!と・・・」
俺は反論するが。
「それはない」
女性の声が、あっさり否定する。
「聞こえていたのはわかってたけど、形式的に聞いてみただけだもん」
「ま゛?!」
思わず実写版ジャ○ア○トロボみたいな変な声がでた。
(何を言ってるんだ?!そんなのわかるはずないだろ?!)
「わかるよ」
「え?!」
(今、声にだしてないよな?!思っただけだよな?!)
俺は、自問自答する。
「うん、キミは声にだしてないよ。思っただけだよ」
「・・・・・・」
「話が進まないから、もう説明しちゃうよ」
そして、説明された内容はというと、彼女は神だそうだ。
急いで移動していたら、俺を時空の歪みに巻き込んで
即死させてしまったとのこと。
俺の身体は千切れてあちこちに散らばって阿鼻叫喚の大騒ぎ、
魂のほうは彼女にひっかかって神界までついてきてしまったということだ。
「いや~、ただ死んだだけなら放っておけば輪廻転生するけど
魂が神界に来ちゃったらそういうわけにもいかないんだよね。
ということで、異世界に転生してもらうことになったんだよ」
その明るく軽い口調にイラっときた俺は、声を荒げて叫ぶ。
「何だ?!その軽い言い方は!!人を殺したというなら姿を現して、
ちゃんと謝罪しろよ!!」
「変なことを言うね?!キミは。例えばキミが急いで学校に行こうとして
蟻を踏み潰したらちゃんと謝罪するのかな?」
さっきまでの軽い感じは消え、抑揚のない冷たい声が響く。
「キミは踏み潰した蟻を転生させることが出来るというのかね?!
ボクにとっては、蟻以下の価値しかないキミを転生させてあげると言ってるんだ。
謝罪どころか、ボクの慈悲深さに感動して涙を流しながら
お礼を言ってもいいぐらいだとと思うんだがね?!」
俺は言葉につまった。
そして思う。
(ボクっ娘だったのか)
「思うことが、違うだろ!!」
神様からツッコミが入った。
「うん、でもキミのそういうとこ、嫌いじゃないよ」
声がさっきまでの明るく軽い感じに戻る。
「いいから、ボクの機嫌がいいうちに素直に転生しなよ。
ちゃんと転生特典もあげるから」
「転生特典!!」
そう聞いて、あっさりと異世界に行く気になってしまった俺であった。