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最後の意志

俺は、勇者だ。

世界を恐怖に陥れる魔王を討つべく立ち上がった。

数多の出会いに助けられながら、信頼を置いている仲間たちと共に。

そして、魔王と対峙した。一騎打ちだ。

この旅は終わりを迎えようとしている。

お互いに満身創痍の中、俺は力を振り絞り、渾身の一撃を与えた。

魔王が、崩れた。

俺も、崩れ落ちた。

魔王が言った。

「見事だ…よもやこんな若造に負けてしまうとはな…我も老いたものだ」

「あぁ…お前が現れて数十年、お前は老いた。ジジイだ…早く寝ろよ…」

「あぁ…そうさせてもらう…と言いたいところだが、そうにはいかないなぁ」


魔王が怪しげな笑みを浮かべた。

「倒される時にしか…発動しない欠陥魔法…使う時が来たとはな…」

「おい…!なにするつもりだ…!」

「だが…どんな手を使ってでも我が野望は…果たす!」

魔王が魔法を唱えた。その詠唱を聞いた時、勇者は驚愕した。なぜならそれは、とある英雄譚の一節に細部は違うが似ていたからだ。


「我が意志よ!受け継がれるべき絶望よ!野望を果たすまで!輪廻しろ!我が名は_____!」


詠唱が終わったと同時に、魔王の身体が闇に包まれていく。

「て…めぇ!なにを…した…!」

「簡単には…死なないということだ。世界は…また絶望に…包まれるだろう…」

それが、魔王の最後の言葉だった。

「どういうことだ…なにを…あの詠唱…まさか」

勇者は納得した。あの詠唱が本物で…魔王の言った通りになると。

「どうすればいい…!俺も詠唱すれば…いや、それしかない…!」

勇者は英雄譚を思い出す。


「たしか…





『むかし、世界を怖がらせた魔王と、それを倒すべく勇者が現れました。

でも勇者は魔王に負けてしまいました。

勇者は、自分じゃ勝てないので、世界を救うという意志を、魔法でひとりの仲間に託しました。

「我が意志よ!受け継がれるべき希望よ!悲願が叶うまで!輪廻しろ!我が名は_____!」

すると仲間はたちまち力が湧いてきて、勇者の聖剣を片手に魔王を倒しました。』




だったか…今はまるでその逆だが…俺にもできるはずだ」

勇者は思いだしながら、願いを込めながら詠唱する。


「我が意志よ!受け継がれるべき希望よ!悲願が叶うまで!輪廻しろ!我が名は…ストライド!」


詠唱を最後まで唱え終えた途端、勇者の身体が光に包まれる。

「これは…成功でいいんだな…」




「どうか…成し遂げてくれ…頼んだぞ…」












勇者と魔王が死んだことは瞬く間に世界に伝わった。

そのことを知った人類は魔王軍の掃討に乗りだそうとしたが、既に魔王軍は消滅していた。

人類は勝利を確信した。この後訪れる平和をゆっくりと噛み締めていくことだろう。

その裏で根付く二つの意志を知らずに。

お初

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