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緑夢童話~三人の木偶娘~  作者: 阿礼 泣素
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緑林白波、目覚めるグリーンアイドモンスター-④

「升麻なんなのその顔……気持ち悪い……」


 していなかった……いきなり気持ち悪い呼ばわりされてしまった……なんてことだ。

「それはそうと、り……りん……りん……」


 言葉に詰まる晒菜、それをみかねた二目木が言い放つ。


「なにがそれはそうとなんですか! というか、私の名前くらいはっきり言ってくださいよ。どこぞのパンダみたいな名前じゃないんですから……私は林檎ですよ。あれでしたら、木の実の林檎、禁断の果実の林檎、万有引力発見の原因となった林檎、某スマートフォン会社の林檎だと思ったら全然大丈夫じゃないですか」


「なんか最後のは違う気がするんだけど……」


 すっかり二目木のペースにはめられてしまった気がする。だが、そんなことにかまってはいられない。

「林檎! 僕の体を触ってくれ!!」


「……うげげ。升麻それ本気で言ってんですか? 初対面なのにこんなこと言うのは大変失礼だと思うんだけど……」


「――死ね」


 美少女の死ね、いただきました。勘違いされるとあれなので言っておくが、正直僕にこのような趣味はない。罵られて快感を得るような性質では決してない。


「待ってくれ! あの、その、林檎が触ってくれたら僕が回復するって言うか……」


「巧妙な手口ですね。普通の女の子ならだまされるかもですが、私はひっかかりませんよ、残念でした。とんだ変態さんなんですね」


 駄目だこれは駄目だ……この流れを変えなくては……


「ってかそもそも、なんでイカがしゃべってんですか? 私にはそれが分かんないんですけど……」


「イカじゃないッ!!」


「じゃあタコですか? 軟体動物なのは分かるんですけど……」


「タコでもないわッ!!」


「じゃあなんで青い血なんですか? ってか、あと、さっきから語尾にいちいち感嘆符つけるのやめてもらえますか、鬱陶しい」


 二目木には感嘆符が見えるらしい。


「青い血はえっと……とりあえず、ごめん、でも……」


「ああ、いいですいいです。あれですよね、私が触ったら止血するんですよね。でもあれですよ、きわどいところは触りませんからね」


 分かってたなら最初から了解してくれたら良いのに……なんてことは決して口には出さず晒菜は二目木に治療してもらった。


「ああ、ん……あ、くはっ……あっは……」


 二目木が舐めまわすように艶めかしく晒菜の体を触るのでつい変な声が出てしまう。それを真横で聞かされる二目木はひどく不快な顔をしている。


「まったく、誰に対してのサービスですか、こんなの誰も喜ばないですからね、ああ気持ち悪い気持ち悪い。虫唾が全力ダッシュしてますよ……」


 ぶつくさ言いながら二目木は晒菜を介抱していた。そして、幸い晒菜を拘束していた拘束具の鍵は牢の外にかけられていたため二目木に難なく外してもらった。


「ありがとう……林檎」


「貸しひとつですからね、いずれ絶対返してもらいますから。絶対ですよ」


「…………」


 なんてけちな奴だと思ったがそんなことを言える立場ではなかったから黙っておいた。


一難去ってまた一難という言葉があるが、晒菜は牢から出られたものの、また新たな困難に直面することとなる。


 ドアの向こうで足音が聞こえた。


「まずい誰かが来る!」


 慌てて晒菜は二目木と一緒に部屋の隅に隠れた。


 ギギギ……


 扉が開けられる音がした。


「はっはーん。樅木(もみのき)ねーさんがやけに遅いと思ったら、すっかりのされてるじゃないですかー。なにやってんだか……さてはてしょーまおにーちゃんはどこにいったのかな……」


 比与森の声だ。あいつに見つかったらまずいことになる…このまましばらく身を隠しておくべきだろう…晒菜はそう思った。


――その矢先のことだった。


「もう、升麻ったらどこ触って……あっつ……はん……」


「っておい!!」


 二目木があえぎ声をあげた。慌てて二目木の口をふさいだがもう遅い。



「探す手間が省けたってもんですよ。うっかりするーしちゃうとこでした、あぶないあぶない。あなたにはまっさつめーれーは出てないですけど、あんまり勝手なことをするってゆーなら……」



「――殺すよ」



次回は8月10日(木)7時更新です☆

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