プロローグ(1)
“いいな、あの選手。うちにほしいな”
夏―――、軟式野球大会での槻丘 瞬をみて、
神奈川県立新東高等学校主将、龍尾 夏喜はそう言った。
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<龍尾 夏喜 Side>
あの夏、最高気温41℃の猛暑。
日本がついに熱帯地帯へと進化をとげたのかと思えた日である。
こんな日々の中、球児たちは軟式野球大会の頂点を決めるための試合が始めまろうとしていた。
「おい、夏喜、こっちだ」
そう龍尾 夏喜に呼びかけるのは上山 鷹。
新東の3番ライト(予定)、中・長距離砲である。
「お疲れ、席確保せんきゅう」
調子よくそう言って上山のいる席の横へと腰を下ろす。
とりあえず組み合わせが気になるので聞いてみることにした。
「一回戦は?」
「活三大付属とひよこ岳中だ」
おおう、いきなり前年度優勝というか常連の活三大付属がトップか。
対するひよこ岳はまったくもって聞いたことがない。
ていうかひよこってなに、かっこいいの?つよいの?
名前でもう開始ゴングと同時にせーむ・しゅ○との後ろ回しが見事に決まりましたね。
とまあ意味不明な御託はどうでもいいとして・・・
「とりあえず活三大付属の大崎は見とこう。試合終わったら声かける」
「大崎か。声かけるかどうかはおいといて、確かに中学離れしたあの速球はすげえな、130後半は常に出てる」
「あと何気にバッティングもいいぜ?」
「だな、大きな身体に似合わず柔軟な・・・お?そろそろか」
・・・・
「ただいまより、第一回戦、活三山大学付属中学対ひよこ岳中学との試合を開始します」
・・・・
と議論をしている間にアナウンスが流れた。
礼!!という主審の声が聞こえる。
「始まったな、さっそくひよこの攻撃か」
そうか、ひよこの攻撃か、うん。めっちゃ弱そうだ(名前的にも)。
「ま、じっくり観戦しますか」
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