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3話

家に入った女騎士ことシルファは気まずそうに座った。


俺は何をすべきかわからず、とりあえずお茶でも煎れようかと台所に立つ。


「あ、お構いなく……」


女騎士は手を軽く上げる。


……どうしてこうなったのか。俺にもよくわからない。


なんか魔物がまた来てるとかで俺が退治したら、この女騎士(シルファという名前らしい)に呼び止められ、パーティに入らないかと誘われた。


パーティってのは仲間みたいなものらしい。知らなかった。というか知らないのは俺だけだった。


あんな荒廃した場所で話すのもなんだったんで、とりあえず俺が住む長屋に来てもらったというわけだ。


しかし女の子を部屋に入れるなんて日本にいたころも、異世界に来てからもなかったから今、結構緊張しているな、俺。


いつもだったらお茶なんて他人に出さないのに(もったいないし、客なんて取り立てに来たおやっさん以外いないから)。


「まぁ、ゆっくりしてけよ。もてなしなんてできないけど」


「あ、ホントにいいから。私から押しかけてきたものだし……」


俺は茶葉を出そうと木製の箱を開ける。おっと……


「すまん、お茶切らしてたわ。水で勘弁してくれ」


コップに水を入れ、正座する女騎士の前に置く。


女騎士は小さく『ありがとう』と呟いた(口にはしなかった)。


「それで……」俺は切り出す。「何の用だって?」


「私とパーティを組んでほしいの」


女騎士は前乗り出した。


「冒険者になって私と一緒に戦ってほしいの! 平和のために、魔王軍を倒すために!」


「やだ」


「即答!?」


女騎士シルファは悔しそうに言った。


「た、確かにあんたと比べれば、私の力なんて取るに足らないかもしれない。でも……!」


「そうじゃねーよ」


俺は手を挙げて遮る。


「だいたい、なんで俺なんだ?」


「……あんたが強いから。私には力がいるの。どうしても」


「ほーん」


「それより、なんでだめなのよ!」


「俺、家賃滞納してんだよ。遊んでる暇はねー」


「冒険者は遊びじゃないわ!」


シルファが声を高くする。


「それに……家賃? そんなものクエスト報酬で返せばいいじゃない!」


意外なことを聞いた。俺は不思議に思って質問した。


「冒険者って稼げるの?」


「そうよ。もちろん実力しだいだけど」


「まさか」俺は露骨に口をすぼめた。「俺、薬草探しとか工事の仕事しか紹介されなかったぞ」


「それはあんたがLv1だからよ」


「あ、やっぱり?」


「でもレベル制限のないクエストも掲示板に張ってあるはずだけど」


「俺、字ぃ読めないんだよ」


「……私とパーティを組めば、今まで受注することができなかったクエストもできるようになるわ。私シルバークラスだし。当然危険も伴うけど、あんたなら余裕でしょ」


「まぁ、戦いで遅れをとることはないだろうけど……でも家賃がやっぱり……」


シルファは半分呆れたように頭に指を当てる


「あんたいくら滞納してるの?」


「金貨2枚」


「2枚? ふっ……」


シルファが勝ち誇ったように笑みを見せる。なにわろてんねん。


「私は前の依頼で金貨15枚稼いだわ」


まさか!


「何ィィィィ!? 金貨15枚!?」


俺は口をあんぐり開いたまま固まった。


金貨15枚? 俺の月収の何倍だ? えーっと金貨1枚が5万円ぐらいだから……75万!?


しかも一回で! こ、こんなオイシイ話があるなんて……。


「で、どうかな? こっちのほうが、稼ぎがいいと思うんだけど……」


「……」


シルファがこびるような笑顔を見せた後、俺の沈黙を感じて下を向いた。


「や、やっぱり……だめ……?」


俺は静かに言った。


「パーティの名前、決めないとな」


「やった……! 金で釣れた……!」


このときシルファが言った言葉は小さすぎて俺には聞こえなかった。


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