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27、焦燥(ルイ視点)


四日前のこと(、、、、、、)が、全部嘘だったら、良かったのに……)

 自分に与えられた客室のベッドの上で横になりながら、ルイは悲壮感に漂っていた。

「はぁ、ヨシュアは元気そうだったのにな……」

 何かいいことがあったのか、会いに行ったヨシュアは元気だった。

 むしろ今の自分の方が元気じゃないと思う。

 その原因が勝手に想像を膨らませていた自分にあるとしても、相手を責めたいくらいだ。

 心なしか頭まで痛くなってきていた。

(駄目だ、横になっている方がつらくなる)

 ルイはベッドから起き上がり、ふらりふらりしながら屋敷の外に出た。

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 屋敷の外は、穏やかな時間が流れていた。

 青空が広がり、太陽が真上に浮かんでいる。

 さらに爽やかな風が吹き、ルイの周りを覆っていた黒い靄のようなものが、すうっと消えていくような心地がした。

(出立するのを躊躇うくらい、ここはいいところだ……)

 今夜、帝国に向けて出立しなければならない。

 昨日届いた密書から、帝国内に何か動きがありそうなのだ。

 詳細は分からないが、同属が襲われていることに我慢できなくなった高位貴族が結束し始めているらしい。

 何か問題が起きる前に、とめなくてはならなかった。

 気分転換も兼ねていたが、外に出てきたのは、ある意味見納めでもあった。

「ん? ヨシュアか?」

 屋敷の周りを一人で歩いていると、ヨシュアが一人の男性と一緒にいるのが見えた。

 男性の顔には見覚えがあった。

(そういえばヨシュアがいない、と部下たちが騒いでいたな。あの様子じゃあ、どうせ散歩とかだろうから、好きなようにさせておけばいいのに)

 そう思って、目を離したかけたとき、少し強い風が吹いた。

「…………ッ?!」

 視界の端で、風になびいて舞い上がった金髪が見えたような気がした。

 ヨシュアと男性の二人だけかと思ったが、男性の腕の中には、もう一人いたようだ。

 一瞬のことで、遠目でしか見えなかったから、確かめなければと思った。

 おぼつかない足取りで追おうとしたが、ルイはすぐにその足を止めた。

(見間違えるな。あれは、きっと錯覚だ)

 遠目でしか見えなかったし、太陽の光のせいで、一瞬自分が求める色に見えてしまったのだと言い聞かせる。

(期待するな……お願いだから……)

 期待すればするほど、真実が違ったとき、その事実に余計落ち込むだけだ。

 そう、四日前のように…………

(この世に、あの色と同じものなんてない。同じ色を持つものなんかっ……)

 だんだんと痛くなる頭をおさえながら、ルイは屋敷の壁に寄りかかった。

 目を閉じれば、嫌でもあの光景(、、、、)が思い浮んだ。

(もう一度だけでいいから、もう一度だけでも……金色の空の下にいる──が見たい)

 幼いころ見た金色の色合いは、目の裏に焼きついて、ずっと離れない。

 何にも心が動かなかったルイの心を、あの色(、、、)だけが動かした。

「はぁ……苦しい、な」

 ここ数日の落ち込んでいたルイを見て、エヴァンは「そんなにあの色が好きなら、ギルバート家の嫡子を見ればいいのでは?」と言った。

 そうできたら、この苦しいほどの渇望も少しは癒せただろうか?

 しかし生憎、あの嫡子の髪の色合いは、ルイが求めた色ではなかった。

 確かに近い色合いだったが、何かが違った。

 

 

──いつだって、そうだ

 

 

 あの金色をずっと見ていたい一心で、金色の置物を買ったことがあった。

 これだ! と思って、出会った瞬間は興奮して買うのに、あとで違うと気付いてしまう。

 あの嫡子の髪についても同じだった。

 あんなに胸が高鳴ったのに、求める金色と違いを、あとで見つけてしまって、心が苦しくなった。

 

 

──また、違った

 

 

 自分でも、どうしてこんなにもあの色を求めてしまうのか、疑問に思ったことがあった。

 たかが色一つに、一喜一憂するのはおかしいだろうと、言い聞かせたこともあった。

 それなのに、求めずにはいられない。

 あの美しい色を、求めずにはいられなかった。

(もう、求めるのはやめよう……そうすれば楽になる)

 今もずっと、自分にそう必死に言い聞かせている。

 だが、あの金と近い色を見つければ、必ず焦燥にかられ、その違いに苦しむ。

 それでも、自分を締め付ける、この苦しみが、今、少しでも、無くなるのなら──

「…………」

 ルイは頭上に広がる蒼穹に、無意識に手を伸ばした。

 そして、自分を苦しめる何かを握りつぶすように、手を強く握った。

 

 

 

 

※1章目、これにて完結です。

遅れた投稿と、文章の直しを、頑張らなくては……

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