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10、塩の物価を下げましょう!其の三

「で、で、塩の作り方教えて!!」

「あ、はーい。まずはですね……」

 分かりやすさを重視して、塩の製造方法を話していく。

 ジュジラーの方は、紙を持って聞く気満々の様子である。

 それに何故か、料理人の方々も熱心に耳を傾けていた。

 この中でオーウェンだけが、未だ優雅に紅茶を飲んでいる……

「一番最初にやるのは、固めた砂の上に海水を巻いて、そして太陽の熱で水分を干上がらせることです」

「フムフム。それで?」

「何度も砂の上に海水を撒いて、最後はその砂を集めるんです。砂の周りには結晶がついてるので、それを海水で流すことによって、濃い塩水が取れるんです!!」

「その水分を蒸発させることによって、燃料をあまり使わずに結晶化出来るんですね。なるほどよく考えてますね」

「ええ。これで、費用の面は少し考慮されます」

 大衆食堂に、「オォー」という歓声が上がった。

 だが、ここからの話が重要なのだ。

 アシリアは質の良い塩を作るために一番重要なことを説明しようと口を開いた。

 しかし、それより先にジュジラーが声を出した。

「凄い!! これをろ過して蒸発させれば!! ろ過は布かなんかでやれば……」

「話聞けやー!! 布でなんかやったら、安全に食べられる塩なんて作れないの!」

 勝手に話を進めていくジュジラーを、アシリアは声で制した。

 アシリアは意識をしていなかったが、その声が父譲りの他者を圧倒する凄味の効いた声で、盛り上がっていた人達は無意識に体が震えた。

(こんなふうに勝手に話を進めるから、間違ったことをやってしまうのよ! って、なんでみんな怯えてるの?)

 周りの様子が気になったが、偶然だろうと片付け、ビシッと人差し指を立てて、アシリアは高らかに声を出した。

「塩は必ず沸騰させないと、体に良くない菌が出てしまいます! なので沸騰は大切なのです!!」

「そ、そうなんですね」

「ええ。更にろ過は布でやるのではありません! 竹炭や黒炭を順番に入れれてやるのです!!」

「お、おお」

「最後にもう一度沸騰させなければなりませんが、それによって出来るのは美味しい塩です!!」

「な、なるほど……こういう技術によって美味しい塩が出来るのですね」

「そうです! しかし、この塩の説明はまだまだ一部です。わたしも、もう一度本を読んでみないと詳しくはわからないので、今は言えません」

 今更だが、もっと本を読んでおけばよかったと思った。

 申し訳なさそうに項垂れるそんなアシリアを見たジュジラーは、「顔をあげてください」と必死に言った。

「いえ、方法があったということが分かっただけでも進歩です。ギル君! ありがとうございます」

「ど、どういたしまして」

 ジュジラーは満面な笑みで、アシリアにお礼を言った。

 人にお礼を言われる機会が少ないアシリアにとって、ジュジラーの感謝の言葉は胸にじーんッとくるものがあった。

(人の役に立つって、やっぱり嬉しいっ!!)

 薬草を調合して、病気や怪我を治す薬を作るアシリアに、直接お礼が言われる機会は少ない。

 基本人前に出ないので、間接的に後からお礼をの言葉を聞くだけだったのだ。

「わたしも凄いと思いますよ。そこまで知っているのなら上出来です、ギル」

 さっきまで紅茶を飲んでいたオーウェンが関心したような顔もちで、アシリアのフードを被った頭を撫でた。

 こんな穏やかに微笑むオーウェンがみたことがなかったので、アシリアはびっくりした。

「そっか〜。これでまだ一部なんだ。でも、まだ詳しく聞けることは……えっ?! もうどっか行っちゃうの?」

「ええ、私とギルはまだ用がありますので」

「オ、オーウェン??」

 オーウェンがアシリアの腕を取って立たせた。

 頭撫で撫でからのいきなりの行動にアシリアさ目を丸くした。

 一体どうして? と考えていたら、オーウェンが考えていることが何故かピンと来た。

(もしや、わたしのため? 今日の祭りを沢山楽しんでもらうために?)

 咄嗟にでた答えだったが、オーウェンの次の言葉に確信した。

「ギル、もうご飯は食べ終わりましたね。こんなところで道草を食っていたら、思い出なんてつくれませんよ?」

「オ、オーウェン……」

 オーウェンが自身の気持ちをくみ取っているのだと分かって、アシリアの目は自然と潤んだ。

(最初は、あんなに嫌がってたのに。やっぱりオーウェンは優しいんだなぁ)

 しかし、ジュジラーや料理人にとって、現状打破の希望の星であるアシリアがどっかに行ってしまうのは、一大事だった。

「待って!! 君の力が必要なんだ」

 アシリアの手を掴もうとするジュジラーの手から、オーウェンはサラリと躱した。

「触らないでください。あなた方は方法が分かったのです。なんでもギルに頼ろうとしないでください」

「で、でもっ!」

 本当は協力したいのだろうけど、オーウェンが彼らにとる行動は正反対だった。

──偽悪者。アシリアは、オーウェンに対してそんな言葉を浮かべた。

 自分が悪者になることで、アシリアに反感が出ないなら、平気で悪者を演じる。

 でも、そんなことはアシリアが望んだことじゃなかっあ。

「ギル君!! 君はそれでいいのっ!? 君の力があれば直ぐにでも領を救えるんだ!」

「そうやって、ギルの良心に付け込まないでください。さあ、行きますよ」

 オーウェンがさらに腕の力を引っ張った。

(オーウェンの気遣いはとても嬉しい。けど、それじゃあ駄目なんだよ)

 アシリアはオーウェンが掴んでいた手に自身の手を貸せねた。

「っ?!」

「オーウェンが、わたしに面倒な事を背負って欲しくないと思っていることは十分に知っています。でも、わたしはこの領のために出来る事をしたいです」

 アシリアは決心した声で言い切った。

 オーウェンの口から音は出ることはなかったが、確かにその口は「アシリア様」という言葉を一度だけ紡いでいた。

「わたしは心配ご無用です」

 アシリアはオーウェンにだけ見えるように、微笑んだ。

 オーウェンはそれを見て、「差し出ましい真似をしてしまってすみませんでした」と小声で言った。

 だがその時のオーウェンの顔は、先ほどのような辛そうな顔ではなかった。

「さあて、やることは沢山ありますよ、ジュジラー様!」

「あ、はい! なんでしょうギル君」

 ジュジラーはウィルターナ商会の跡取りである。この事業を成功させるための鍵は彼だった。

「あなたにはやっていただなければならないことがあります!! 場所の確保はわたしがやっておきますので、この紙に書いてあるものを至急準備してください」

 アシリアはペンを取って、塩づくりに必要な準備物を紙にサラサラと書き綴っていく。

 ジュジラーに塩づくりの全てを任せるのも良かったのだが、こんな大きな事業を任せれば、彼にとって重荷になるはずだ。

 他国との貿易において、岩塩を買うということは我が領にとって、不利益を被るところだった。

 それを改善しようとする商人がいることは、他国にとって目障りであって、下手したら命を狙われてしまうかもしれない。

 そうならないために、用心棒を雇ったりするのだが、それよりも安全に事業を進めようと思った。

 と言っても、彼にこの事業の役員を任せるのは決定事項だから、ウィルターナ商会が舵をとっていると思われるだろう。

 しかし、この事業はあくまでギルバート領の管轄にあることを明確にしようと思った。

「ああ、それと、人の手をできるだけ多くお願いします。雇用を生み出すことは大切です」

「わかりました。しかし、やはり場所などはわたしが確保……」

「いいえ、その心配はご無用です。領主が管理する砂浜を提供しますので」

「なるほど……って、ええ!! そんなこと勝手にやっていいんですかっ?!」

 アシリアの言葉に、案の定ジュジラーは驚いていた。

 もちろん、オーウェンも料理人たち驚愕の表情を浮かべていた。

「大丈夫です」

 保険として、準備物を書いた紙の下にある事もアシリアは書き足した。

 父ならアシリアの筆跡を分かってくれるはずだ。

「えーと、なになに、『領主の許可は必ず取るので、この者に許可を。怪しいと思うのなら、この筆跡を領主に見せなさい』って、こんなもの見せられないですよギル君!!」

「心配しないでください。領主の館を窓口にして連絡を取り合うようにして下さい」

「え、えっ!? い、一緒に来てくれるんじゃないんですか??」

「ええ、行きません。わたしのお腹はまだ空いているので」

 ズデーンっ!! 

 アシリア以外のみんながその場で()けた。

 何事にも無関心のオーウェンが、アシリアのことを思って行動を起こそうしてくれたのだ。

 過程はどうであろうと、オーウェンの気持ちを大切にしたいと思ってのアシリアの言葉だったのだが、何か皆反応が違った。

「アシ……ああ、今は違った。ギルはやっぱり変な人です」

 オーウェンが転けた皆の気持ちを代表して、アシリアに思いを伝えた。

「なにそれ? まぁ、いいけど。それより早く行くわよ」

 呆れて笑っているオーウェンを連れて、アシリアが大衆食堂を出ようとした時、ジュジラーが声をかけた。

「ねえ、僕思ったんだけど」

「?」

「ギル君って、公爵家に関係する人とかじゃないよね??」

「…………」

 商人としての才能を持つものは、ものの本質を見抜くことができるという。

 ジュジラーのこの言葉が、その力からきているのなら、この男は既に凄腕の商人だと思う。

 疑問というより確信を秘めているジュジラーの顔を、フードの隙間からチラッと見て、アシリアは口の端に笑みを浮かべた。

「さあて、それはどうでしょう。そのうち、分かるのでは? ではまた、ジュジラー様」

 同時に、オーウェンがアシリアの手を引いた。

 あまり目立つたくなかったオーウェンには申し訳ないが、領地の民にの暮らしが良くなることに役立てたので、アシリアの顔には笑みが浮かんんでいた。

 

 

※塩の話が長くなりました(汗)

ヒーローが未だ登場してない……

 

 

いきなりですが、アシリアの頭の中は、三割薬草、七割ご飯です!

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