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近未来ストーリーG  作者: 活動寫眞
近未来ストーリーG3
8/14

天使と悪魔の協奏曲-中編-

アメリカの田舎町に住むカレンの誕生日を同じくして

政府の緊急放送が全米に流れた。

「化学物質が空から降ってくる」というものだった。

その地域こそカレンの住まう場所...

化学物質に感染すると一体どういった症状がでるのか?

果たしてカレンは無事に誕生日を迎える事ができるのか?

【天使と悪魔の協奏曲-中編-】



カレンの父はあることに気がついた。

検問を通ってからかれこれ10分は走っただろう。

田舎町とはいえそれなりのショッピングモールや民家などあり

夕方くらいではまだ騒がしいものだ。しかし、どの建物も堅く扉を閉め

民家も電気がついていない。


これはやはり検問と関係しているのに違いない。

もしかしてこの状況が物語っているようにかなり危険なのではないのか?

だが次の瞬間にこれ以上深く考えても答えはでない

返って不安に心が支配されるだけ。


何かあれば軍隊はすぐ近くにいる。

それにさっき聞かされたことは正しいのだと

まず自分がやらなければならないこと

一刻も早く自宅に帰り、愛する娘と妻に会うこと。


そんな父の気持ちを裏目に、自宅への道が数台の車によって通れなくなっていた

ますます冷静にならなければならない。そう言い聞かせながら

彼は道をから外れて山道を走りはじめた


普通に考えればただ事ではない。

誰が見たって異常事態である

軍隊の検問による封鎖、街の荒れよう...


このことを説明できる人間がいるなら

車を降りてでも聞きに行くだろう。


だが彼は車から降りずに遠回りをしてでも自宅を目指した

本能的に車から降りれば何かが起こる...そう思えたのも事実

わかってはいるが考えない。それが正しいかどうか判断できる前に

目標を作りそれに従い進んでいるだけ。


どうにか山道から普段通る道へと抜け出し

見慣れたご近所の家が見えてきた。


最初に見えてきたのは幼馴染のジョン宅。

オムツをしている頃からの知り合いで家族ぐるみで旅行にも行く

彼はアメフトの選手を目指していたが、大学4年生の時に

父が倒れたことを切欠に夢を捨て親の営む農場を継いだとても立派な男だ


続いて半年前に都会から新婚夫婦が引っ越してきた家。

夫は日本人で東京から来たそうだ。

奥さんはアメリカン人で国際結婚だがとても幸せそうだ。

週末家を訪ねるとおのろけ話を耳が痛くなるほど聞かされる。

それでいつも奥さんに怒られておひらきになるのがパターン。


さらに隣が車の整備工をしているトニー宅。

仕事では車を扱ってるが趣味はバイクだ。

一から部品を集めて組み立てて作るのが楽しみらしい。

あまりに楽しそうに作るものだから一度手ほどきをお願いしたが

愛がない奴にバイクは触らせないと怒られた。

あとから愛情を持っても駄目!一つ一つに愛を込めるんだ!

そうするとバイクもそれに答えてくれる...だそうだ。



こんなことを考えながら自宅が見えてきた。

リモコンでガレージの開閉スイッチを押し、

徐行しながら右折しガレージへと車を入れた


少し安心したのは、ジョニーの家からはみんなの家の電気がついていたことだ

これで不安な衝動をまた抑えていける。ガレージを締めて自宅への玄関へと進む。

...あっ!そうだ、プレゼントを忘れた!


こんな時にと思いがちだが、こんな時だからこそ娘を安心させるため

自分が安心するためにも必要なアイテムなんだ!


再び、ガレージを開け車の後部座席の扉を開ける。

そしてラッピングされリボンで装飾、バースデイカードが差し込まれた箱を

優しく取り上げる。その瞬間、娘カレンの笑顔が見えた気がした。

少し笑みがこぼれながら扉を閉める。ガレージを出て見ずにスイッチを押して閉める


なにかがおかしい?ガレージの閉まる僅かだが音がしない。

気になり振り返った...すると!扉が途中で引っ掛かり止まってた


父親の台からのガレージ。

そろそろメンテが必要かな?トニーにでも頼んでみよう...

とりあえず力で閉めること出来たのでホッとした。

再び自宅へと向かおうと一歩踏み出した



ドン!



おっと!なんだ行き成り?壁にぶつかった様になり驚いた。

暗がりではあるがそこに人が立っている。



「...つなぎ...ああ、トニーじゃないか!脅かすなよ!

 丁度よかった。今度、うちのガレ...ジ......?」



カレン

「パパ遅いね?」


母親

「そうね、さっきガレージの方に車が行く音がしたから帰って来てるはずよね?」


カレン

「きっと荷物があって重いのよ。私が手伝ってくる!」


母親

「待ちなさいカレン!パパに早く会いたい気持ちはわかるけど、

 危ないからママが行くわね?」


カレン

「はーい...」


母親

「ガレージで何かしてるのかしら...」



バタン



「キャアァァ-ッ!!」



突然表から絹を引き裂くような悲鳴が轟いた!

カレンは直ぐに母親の声だと気づき直ぐに玄関へと向かった。

そして扉のドアノブを握ろうとした瞬間!!


扉は勢い良く開き、カレンの母親が飛び込んできた。

弾かれた形でカレンは尻餅をついた。


母は扉を直ぐにドアノブ上の鍵閉め、上の鍵、下の鍵と3つの鍵を閉め

最後にドアチェーンも閉めた。そして振り返りカレンを確認すると

抱えるようにして2階へと駆け上った。


カレンは何が起きてるのかさっぱり分からない。

ただ母に引っ張り起され2階へと着くと腕の痛さがジワジワ余韻を残した



「ママ?な、なにがあったの?」



さっきまでの優しい母親の顔ではなかったが、

勇気を出して質問してみた。



「カレン...ごめんない。痛かった?説明はあとでするから、

 自分の部屋に鍵をかけてクローゼット隠れてなさい!いいわね!」



そういうと母親は再び1階へと降りて行った



それからどれくらいの時が過ぎたのだろう...

カレンは変な緊張感の中でいつしか眠気に襲われて少し眠ってしまった。

目を覚まし、クローゼットから出てドアに耳を押し当ててみる...

とても静かだ。


窓から外をのぞいて見たが暗くて何も見えない。

ただ1階の電気だけが薄っすら漏れているようだ...!?

一瞬だが人影がスーッと通り過ぎたように見えた。



「パパ?ママ?それとも悪い人?怖いよ...」



程なくして階段を登る足音が聞こえてきた。

カレンは怖かったが家族の誰かかも知れない。

でも開けるのは怖い...だから鍵穴からのぞくことにした。


鍵穴は小さく薄っすらと人が影だけを捉えている。

誰だろう?大きい...パパ?誰だろう...?

そんな恐怖に震えていると鍵穴が暗くなり向こうが見えなくなった

なんだろう?見えない...向こうで穴を隠してる?

カレンは少し鍵穴と距離を取り部屋の明かりが入れば見えるかもと考え

ほんの少し離れた...。すると部屋の光が一瞬入り、

向こう側の黒いものがきらりと輝いた!



「!?」



カレンは恐怖の末、悲鳴すら上がらなかった。

部屋の光で黒く光ったのは、向こう側からも

こちらをのぞいている人間の目だった...。




-後編へ-

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