お客様は神様デス-後編-
デパートでの事件を軍部が引き継いだ。
調査する事となったクク大佐は上層部の狙いが“プレゼント”だと思う中
再び事件が起こってしまった。店内に取り残された部下を助けるべく部隊を
派遣しようとした矢先、上層部から帰還命令。
そして通信兵が拾った“人形”というキーワード。
「-お客様は神様デス・後編-」
【国家軍事委員会】
准将
「クク大佐、どういうことかね?」
クク大佐
「現在、調査にあたっている未来deデパートの建物内に置きまして
部下が取り残されています。」
准将
「そんなことは良い。なぜ帰還命令を無視して派遣部隊を
いまだ現場に駐屯させているのか、私はそう聞いているのだよ?」
クク大佐
「ですから、部下を救助するため...」
准将
「分かった。部下思いは良い、だがそれ以上に上の命令を無視するとは
軍の規律を重んじる君らしくない。兵隊は補充すれば済むことだが
君のような優秀な兵はそうそうできない。
国家がどれだけの投資をしていると思うのかね?命令に従いたまえ」
クク大佐
「了解しました。ただ先ほど私は虚偽の報告をしてしまいました。」
准将
「...虚偽?」
クク大佐
「はい、部下が閉じ込められているので救助するというのはなく
部下が見つけた“プレゼント”を回収するための救助活動です。」
准将
「ほう、では私の目の前で虚偽の報告を?」
クク大佐
「総督が言われます通り、国家に使える身、その部下を失う行為や
作戦に支障をきたした事で、私の部隊に対する能力を疑われるのを恐れたためです。
今回“プレゼント”を回収する作戦ではありませんので」
准将
「ふふふっ、上層部の意向をくみ取った...ということかね?
ただそういった行動は慎め。私は頭の良い部下は嫌いではない。
優遇はするが自ら動く者は好かん!...だが今回は多めにみよう。
それだけの価値はあるものだ。では今から24時間作戦指揮を許可する。
速やかに“部下を救助”するように!」
クク大佐
「了解しました!」
・
・
・
「AM1:00」
デパート閉鎖から5時間、大佐の居ない間も各部隊が潜入を試みるも入れず。
こう着状態が続いていた。そこへ大佐はある人物を連れて戻ってきた。
クク大佐
「現在の報告を宜しく頼む!」
小隊長A
「表から全く潜入は出来ていません。外壁の裏が予想以上に硬い壁で覆われています。
ミサイル打ち込んでも建物を揺らすのが精一杯かもしれません。」
通信兵
「無線はあれから一切応答なし。」
小隊長B
「建物内をスキャンしましたが熱反応もなし、
ですが動く物体が幾つか確認されています。」
クク大佐
「熱を発しないで動き回るもの...どう思われますか?」
顧問弁護士
「...恐らく人形です。」
「数時間前...」
クク大佐
「このような時間に申し訳ありません」
顧問弁護士
「いえ、私は夜型なので平気ですよ。何か?」
クク大佐
「デパートについてお聞きしたい。」
顧問弁護士
「話せる範囲ならお答えしますよ」
クク大佐
「現在、中に部下がいます。」
顧問弁護士
「!?」
クク大佐
「やはり何か知っていますね?」
顧問弁護士
「守秘義務があるのでお答えしかねます。」
クク大佐
「なるほど。ではオーナーは今どこに?」
顧問弁護士
「...知りませんねぇ。」
クク大佐
「ではオーナーの五箇条にはどんな意味が?」
顧問弁護士
「発表した通りですよ、あれ以上なに...?」
クク大佐
「非常に申し訳ないが時間がない。」
顧問弁護士
「その銃で撃つ気ですか?」
クク大佐
「撃って話してくれるなら迷わずに...」
顧問弁護士
「...脅されて個人を裏切っては弁護士として失格です。」
クク大佐
「なら個人の利益のためなら人が死んでもいいのかっ!」
顧問弁護士
「あなたも法を軽んじて良いのですか?それは国を裏切る行為ですよ?」
クク大佐
「ふん、私は国のためなら人を殺すこともある。
だがそれに見合っただけの覚悟がある。罪を犯せばどうなるかも分かっている。
もう既に反逆行為を行っている身なんだよ!」
顧問弁護士
「?」
クク大佐
「部下を助けるために上層部に嘘をついた。
デパート内で“プレゼント”を見つけたとね!
それを部下が持っているから回収すると...」
顧問弁護士
「だけどあの中にプレゼントはない!」
クク大佐
「その通り、やはり知ってましたね。」
顧問弁護士
「では国のためでなく一個人で動いていると?」
クク大佐
「ああ、元々軍に未練などないから丁度良かったと思っているよ。」
顧問弁護士
「...わかりました。」
・
・
・
「AM1:05」
クク大佐
「人形?」
顧問弁護士
「オーナーは人が変わってしまいました。
それは“プレゼント”を盗まれてからの事です。
夢や希望を与えるためにデパートを開業したのに限界が見えたのです。
自分の行為は正しいのか?なぜ思いを理解してくれない?
いつまでも利益優先型の世の中、夢や希望を与えるどころか奪っていく有様。
そこでオーナーが考えたこと。それはオートメーション化です。」
クク大佐
「オートメーション化?」
顧問弁護士
「従業員など居なくても稼動するデパートを作ったんです。
従順で正確な機械仕掛けのデパート...
人では成しえなかったモノを人形に託したんです。」
クク大佐
「ではデパート内の人形は何をする?」
顧問弁護士
「本来なら従業員と同じ働きをするはずでした。
休業中に私は見ました。全てが完璧に行われる様を...
だがオーナーが失踪してからは別のモノへと変わったようです。」
クク大佐
「人形が人を襲う?」
顧問弁護士
「はい。営業時間内に人形は動くことなく、店の閉店時に動くようです。
その際、中に残っていた従業員は人形に“侵入者”として襲われたのでしょう。」
クク大佐
「なぜそれを言わなかった!法を守る前に人を守るべきだろ!」
顧問弁護士
「あなたは分かっていない。あれに関わるとどうなるか...
従業員が橋の欄干に吊るされていたのは、目撃したからですよ!
奴らは中にいますが出てくるということです。」
クク大佐
「...そうか。事件以降はまわりは封鎖されているから奴らも出て来ないだけだったか。」
顧問弁護士
「ここまで来た以上、私も戦います。」
・
・
・
あの日、作戦が成功することは無かった。
メン隊長は閉店したPM8:00-AM10:00までの間をデパートで過ごす事となった。
デパート内で一夜を生き抜いたのは後にも先も彼しか居なかった。
開店と同時に正面玄関から傷だらけのメン隊長と数百体のマネキンが表に飛び出してきた。
軍は応戦したものの壊滅状態。瀕死でクク大佐とメン隊長は逃げ延びた。
クク大佐は軍への反逆行為と作戦失敗により責任を追及、だが過去の功績から
退役することで済んだ。メン隊長も戦える体ではなく退役。
その日をきっかけに世界中の“未来deデパート”が取り壊しとなった。
・
・
・
【西暦2199年】
ロン
「脅威に感じながらも“プレゼント”の魔力は凄まじいなぁ」
ヘモ
「いくつかのデパートは襲われた事で人形の勢力も強大になったそうだ。」
ロン
「その負の遺産が目の前のあれだろ?」
ヘモ
「普通に立ってりゃ可愛げもあるが...鋼より硬い上に捕まると頭割れて」
ロン
「噛み付かれたり触手みたいなので襲われるって話だ」
ヘモ
「全く、マネキン無勢が人様に逆らうなってんだよ。」
ロン
「ところで、さっき言ってた約束ってなんですか?」
ヘモ
「ん?ああ、子供との約束だ。」
ロン
「ちなみにどんな?」
ヘモ
「クリスマスに“プレゼント”が欲しい言うんだよ」
ロン
「え?今や戦争の火種にしかならないアレですか?」
ヘモ
「まぁ、例の“プレゼント”を言ったわけじゃーねーよ!
“戦争のない、平和な一日がきますように”ってサンタに手紙書いてたんだよ」
ロン
「その日のための“プレゼント”ですか?」
ヘモ
「あのデパートにある。そして手にすれば戦争は終わる!」
ロン
「子供のためにプレゼントはある...か」
ヘモ
「気合いれていくぞ!」
ロン
「子供の夢や希望を作りに!」
-THE END-