異国の譲渡
この物語はフィクションです。
四角い街の中心には大きな庭を持つ巨漢の富豪が住んでいる。
庭はこの街に住む人々に解放され、普段から庭には笑顔が溢れている。
そんな狭いながらにも庭は、日本兵によって譲渡するようにと命令が下されていた。
しかし、富豪はそれを拒否し続けていた。
人柄の良い富豪は沢山の同士を集め、絆で街を守っていた。
ある日、巨漢の富豪が自宅の2階から窓ガラスを突き破り飛び落ちた。
死因は普段からの食欲が原因で喉に詰まらせた。
食べ物が吐き出せなく苦しんだ挙句の結果だった。
勿論、それを真実者はいない。
そのような壮絶な死を遂げるなど誰かが食べ物に毒でも持ったのではないのか?
皆は噂した。
そして日本兵により庭のみならず家も差し押さえられることになった。
そこへある日本人が現れた。その日本人、以前からふらっと現れては
庭先に勝手に机を置き怪しげな荷物整理を始める。
椅子はないものだから近所の椅子を勝手に使っては子供の達と喧嘩をするのだった。
しかし、子供達と喧嘩するも手を出すことはなく、いつも子供達に
一方的に囲まれて追い出されてしまう変わった日本人であった。
その日本人は日本兵に言った。
「この土地は子供達の遊び場とする!」
だが日本兵がそれを聞くわけもなく追い返される。
そんな場面を見ていた日本兵将校は笑った。
「ならば後日、処刑か土地譲渡をかけて仕合を開催する!」と日本兵将校は宣言した。
数日後、いつも喧嘩をしていた子供達を連れて日本人は現れた。
仕合の内容は簡単で、処刑場内で皆の前で何かをして見せて評価されれば
土地譲渡を約束するもの。ただ評価というのは日本兵や将校たちの判断で決まるので
誰もその答えをわからない。
だが意外にもその情報は国や地域に広がり参加するものが数百と存在した。
命がけの一攫千金といったところであろう。まさに命知らずの者、
すでに人生詰んでる者、決して未来明るい者達ではない。
日本人は参加する為に、受付へと向かう。
そこでは明らかに賄賂というものが必要でタダでは参加できない。
「これから死ぬ人間がお金など要らないだろ?」
「勝てば土地が入るのだから困らないだろ?」
日本人は仕方なく払う事にした。
「他にも払う相手はいるので多くは払えないが・・・」
そういうと折り畳まれた紙幣を受付の手に直接渡す。
渡された男はそこそこの金額に納得した。
本来ならもっと搾り取ろうものなれど、
男にとっても期待以上の金額に以外とあっさり受付を通すことになった。
日本人はその場から悠々と去ろうとした。
その時、一緒に連れていた子供が倒れて数枚の紙切れを落とした。
日本兵達がすぐに取り囲み警戒態勢へと入った。
日本人は子供に両手を上げてそれ以上動くなと促した。
日本人は言った。
「これはただの紙です。誰かを傷つけたり攻撃するような武器などではありません!」
将校は問いただした「ならばその紙で一体なにをする?」
日本人は言った。「あの受付の男が持つ紙幣をすべて紙に変えます」
受付の男は焦った。まさか賄賂のことを公にされるとは思っていなかった。
日本人は言った。「彼に予め分からぬ様に紙幣を渡している」
受付の男は焦ったがここは罪を逃れるには話しに乗るしかないと思った。
「おい!おれは金など受け取った覚えなど・・・うん?なんだこの金は!?」
とても大根だった。
日本人は言った。「その紙幣、皆に確認して本物かどうか調べさせてくれ!」
受付の男は渋々、皆に見えるように紙幣を見せた。将校は近付き紙幣が本物かを確かめた。
それをわざわざ日本人へと渡してやった。
日本人は言った。「将校殿に直々に光栄です。では!」
紙幣の束を天高く投げ飛ばした。
その瞬間、地上へ向かって降り注ぐ紙幣は全てがただの紙切れになった。
日本将校は言った「やはり面白い男だと感じていた。では会場で待っている」
そして日本兵の警戒態勢は解除された。
受付の男は言った。「何の嫌がらせだ!金返せ!」と小声を詰め寄ると日本人は言った。
「むしろこちらはあんたに助けられた。お礼にこれを」
日本人が渡したのは紙幣の束、受付の男は紙じゃないのかと問いただした。
日本人は言った。「ああ、紙だよ」
受付の男は苦虫を潰した顔をしながら紙幣の束を投げ返し立ち去って言った。
子供は聞いた。「なんであのおじさん、お金くれたの?」
日本人は言った。「これがただでの紙だからさ」
子供は聞いた。「ただじゃないよ、大金だよ!」
日本人は言った。「そうだな。くれたんだからただのお金であり、ただの紙切れさ」
そして日本人は処刑場となる仕合場へと歩みを進めた。