家族の騒動
「どうもオフクロ、駆け落ちしたみたいなんだ」
駆け落ちって・・・家族は沈黙・・・約30秒・・・
「何、駆け落ちって何歳なのよ・・・もう75歳でしよ」
「で、男は・・」
「ジャズ喫茶で仲良くなった80超えてるじいさんらしいんだけど、
身寄りがないじいさんで連絡がつかないらしい」
「で・・・・警察とかには・・」
「まだ、そこまではやめとくらしいよ。
ただクレジットカード会社には連絡したらしい
使ったら連絡が来るようになってるらしい」
メグミは、考えていた。
「ねえ、パパ・・そのおばあさんってどんな人なの??」
そうなのだ、メグミにはおばあちゃんの記憶がない。
実は、彼女が生まれる前に 嫁と舅の大喧嘩が始まり、
我が家とおばあちゃんは絶縁状態になっていたのだ。
まあ自由奔放・淫乱ママと合うおしゅうとさんは、そうそういない。
子供のメグミが軽蔑してるんだから・・・
バブル時代に好き放題したつけだな・・・ママは・・
でも・・・・・
『おばあちゃんに会ってみたい!』
なんてノンキに考えている横で、パパとママは、また叔父に電話を始めていた。
どちらにしろ、おばあちゃんが家出したせいで、
私が家出する話は出来なくなった。
まあ、今度にしよう…おばあちゃんにも会ってみたいし・・・・
☆☆☆☆あなたの家族につながりはありますか???☆☆☆☆
メグミのパパ ③
えっ、あの母が駆け落ち。
厳格で、性に対する事を忌み嫌い、テレビも性を喚起させるもの、
ビキニの女性が出るものでさえ見せず、まして週刊誌のグラビアも
許してくれない…
女は結婚するまで処女でいなくてはならない、といつも言っていた
あの堅物の権化の母が駆け落ちだとっ!!
9年前に親父がなくなってから、ジャズにはまって
コルトレーンとかマイルスとかモンクとか聞き始めていたので、
「ずいぶん変わったな~」とは思っていたけど・・
ジャズの不調和音が気持ちいいという時点で、
厳格な精神構造が、ずいぶんエモーショナルなものへと
構造改革していたかも知れない…
でも、そういう事は、一緒に暮らしている弟が気づくべきなんだが・・・
そもそも、弟とも、話したくはなかったのに・・・・
なんせ、去年、遺産相続の話が出てから、よそよそしい。
あの夏の夜、俺は妻に言わないで来い・・と言われて母親に呼ばれた。
そして、弟と俺だけにして、こう言った。
「遺産は二人で分けなさい」
それから、3日もしないで弟から電話があった。
弟はうちのやつが言うのよ~といいながら、
約30分後には醜いセリフを発した。
「おふくろの面倒は、俺が見てるんだから…」
だから全部貰う権利があると・・
それもそうだとは思うが、俺が「少しくらいは」と思うのも無理はない。
なんせ、母の推定遺産は屋敷に土地に山に・・・・総額5億もあるのだ。
「まあ、今度、話そう・・・・」
それからは、妻にも話さず、じっとしていた。
次に弟と話して、1/3はくれというつもりのまま、
約1年、音沙汰なしだったのが、この電話だ。
どちらにしろ、倒産の話、リストラの話は出来なくなった。
この遺産の話も当然出来る感じではない。
まずは、お袋を探すことが先決だ。
☆☆☆☆あなたの家族につながりはありますか???☆☆☆☆
船越警部 53歳①
「80近い母が、行方不明になった」
蚊のようにか細い声で、中年の男が、六本木中央署に電話を入れてきたのは、
けやき通りが、イルミネーションで飾れ、浮ついたブランドカップルが
クリスマスを楽しむ12月も20日。
「今日は、久しぶりに、早く帰れるな」
船越警部にとっては、平穏無事な日本に感謝していた時間、
そもそも、そこで、電話を取り上げてしまった自分のタイミングの悪さを
恨むべきだが、聞き取りにくい小さな声だと、イライラしてしまう。
「はい、わかりました。まず、お名前と住所から教えてください」
一通りの事情を聞くのは、警察の基本、悪い方へダイスが転ばないように、
祈りながら電話の聞き取りが始まった。
「田所義男さんですね、お母様は、幸子さんですか・・・・
で、どういう状況で」
・・・ババぁとジジィの駆け落ちらしい。
しかも、置手紙もなく、手がかりもないという。
「まいったな」
駆け落ちだって、立派な失踪人。
翌日、早々に失踪人届けを出してもらった。
だが、失踪人なんて年間8万いるのだ。
手配書を各地に送ったが、手ごたえはなかった。




