第7話「大好きの思い出」
その後隼人はおじさんと、おばさんに連絡をしてくれて、電話越しにおばさんに怒られちゃったけど凄く心配してくれてたみたいで泣いていたんだ…。
私もおねいもパジャマを汚しちゃったから着替えを取りに一渡私達の家に戻る事にしたの。
たった数日戻らなかっただけなのに何だか凄く懐かしくて…こっそり泣いちゃったのは内緒。
だけどふと目に入ってきたのはリビングのテーブルの上に置かれたままのおねいが作った沢山のご馳走…。そっか、ママが帰って来なくてバタバタしてたから、ずっとあのままだったんだ…。
食べたかったなぁ…。せっかくおねいが沢山作ったのに。
おねいが作ったご馳走を見つめて、涙を浮かべる私に気付いたおねいはにこりと微笑む。
「あのお料理は仕方ないよ。またママが帰って来たら、沢山作るから皆で一緒に食べよ?ね?」
おねいはまるで自分に言い聞かせるようにそう言うと、ご馳走の後片付けをしようと、ハンバーグのお皿に手を伸ばそうとして…隼人がそのおねいの手を掴んだ。
「あ、あの、隼人さん…?」
「待て。今腹が減ってんだ。俺が食う」
「で、でも数日前のですし、お腹壊しちゃいます…」
「腹を下した時は薬飲んで寝てりゃ一日で治る」
おろおろするおねいを無視して、隼人はそそくさと冷えたおかずをレンジで温めて、凄い勢いで食べ始めたの。
驚いた私とおねいはそんな隼人をぼんやりと見つめる事しか出来なかったんだ。
沢山あったご馳走をあっという間に平らげた隼人は少しだけ…ほんの少しだけ優しく笑って言ったんだ。
「旨かった。また飯、作ってくれるか?」
「っ…はいっ!」
おねいは目にいっぱい大きな涙を浮かべて、すっごく嬉しそうな顔で頷いたんだ。
これがね、私達と隼人の今でも忘れられない大事な思い出なの。
結局ママは見付からず月日だけが過ぎていって、3年間ずっとおばさん達のお家にいたの。
でもね、隼人が高校を卒業した後に私達の面倒は俺が見るって言ってくれて…隼人は高校を卒業してすぐに働きはじめたんだ。
それから少しして小さいアパートのお部屋を借りて、3人で住む事になって…今にいたります!
だけどどうして森に迷い込んだ時、動物さん達とお話出来たんだろう?隼人に聞いてみたら、私を見付けた時は私一人しかいなくて、切り株の上で毛皮を被って寝ていたらしいの。
あれ以来おばさんやおじさんからはもうあの森には行っちゃダメだって言われてたから、動物さんとは会えてなくて…。
だけど今も満月の夜になると、皆、集まってパーティーをしている気がするんだ。
それにね、あの時うさぎさんが言っていたのはもしかして隼人の事なのかなぁ…なんて、えへへ。