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「初恋を探しているんです。」

第二話です。

また手に取っていただきありがとうございます。

 

 えらく簡単に見つけちゃったなぁ・・・。

 気が付けば恋愛研究会の部室前にいた。

 「っていうかこれ・・・」

 部室の扉の隣に『恋愛研究会』という看板が堂々と飾ってある。

 部室棟の中をぶらぶら歩くうちにいつの間にかたどり着いていた。ていうか隣の天文研究会さんはなぜ気付かないんだ? 灯台下暗しってやつ? ともかく入ってみるか・・・。

 コンコンッと二回の軽いノックをして扉を開く。

 「失礼します・・・わっ」

 まず目に入ってきたのはたくさんの本と封筒に便箋だった。部屋の奥がまったく見えないし、薄暗くて少し気味が悪い。テーブルの下にも本が散らばっているし、埃もたまっているようで長いこと人が来ていないことが伺える。

 「ほんとにここ、活動してるのかなぁ?」 

 向こう側を覗こうと、何度も街中の野次馬のように背伸びをしたが、それはかなわなかった。どこか入れるところはないだろうか? と探すと右端に少しだけ空間があり、そこから少しだけ光が漏れていた。どうやら向こう側にいけるらしい。

 本と封筒と便箋の山を崩さないように、慎重に慎重に一歩ずつ歩を進めていった。少しずつ光の方に近づいていく。体を横にして、慎重に慎重に通り、

 「んっしょと、うっ・・・」

 途端、目に光の残像が映る。

 だんだん視界が落ち着き、

 目が慣れて、

 白色がだんだん彩を増していく。

 そこに人の姿が浮かび上がる。逆光が体のラインを際立たせ、

 透明感のある三つ網に縛られた黒髪、細くしなやかな腕に足、すこししわの付いた制服。

 静かに寝息を立てるその姿は、あまりに可憐でどこか人間味がなく、コクリコクリと頭がわずかに上下することを取り除いたら、人形だといっても疑う人はいないだろう。

すると、うぅとかあぁとか唸りながら体を動かしだした。どうやらお目覚めのようだ。

薄目を開けてキョロキョロしているその人は何度か周りを見渡した後に、僕に照準を合わせた。すると、今までの冬眠明けの熊のようなゆったりした動きからは想像もつかないような、まるで地を這う蛇のように素早く、顔を僕の目の前まで近づかせた。

「あなた、もしかして依頼人!?」

と目をキラキラさせながら僕に尋ねた。

「えっいや、あの何のことですか?」

「何のこと? って、ここは恋愛研究会よ、だったら答えは一つじゃない」

「えーっと・・・つまり? 」

「つまり!恋についてよ!」

いまいち解答になっていない解答をするこの人は一体誰なんだろう? いや、まぁこの部室にいるのだから、部外者ってわけじゃないにしろ、まずこの人何年生だ? 校内で見かけたことはないし、一年生じゃないだろうけど・・・ちっちゃいなこの人。

顔は目の前まで近づいているもの、それは近くにあるソファーの上に立ち、尚且つ背伸びをしているからである。

僕の身長が170センチくらいだから・・・140!? いや、もっとちっちゃいかも。これじゃあ、学校に小学生が迷い込んだと言われたほうがよほど信じられる。

その小学生みたいな先輩と推測される人は、さあさあ、と僕をさっきまで背伸びをしていたソファーに座るように促す。

僕がそのソファーに座ると、対面するように先輩もテーブルを挟んだ反対側のソファーに腰を下ろした。

「で、今日はどんな相談? ぶっちゃけ相手は?」

「相手・・・?」

「そう、相手よ。好きな人、その好きな人についての相談をしにきたでしょ?」

「・・・」

 なるほどそういう事か、ここは恋愛関係の何でも屋ってことか。まぁ恋愛研究会という名前からしてそうだ。でもそれなら恋愛研究会なんて名前じゃなくて恋愛相談所とかにすればいいのに。これじゃまるで人の恋愛を観察して研究する変態集団ととられても仕方ないじゃないか。

さっきからその先輩は、もしかして遠距離恋愛? いいわね〜青春ね〜などと一人で盛り上がっている。

っていうかまだ名前すら聞いてない。

「先輩のお名前はなんて言うんですか?」

「ん? 私? 私は、小泉 奏薫(こいずみ かなた)。三年よ。それより、相手は? 片思い? もしかしてもう付き合ってるとか? キャー、いいわね〜青春ね〜」

とにかく口が止まらない。勝手に想像しては、キャーと叫んでまた違う妄想をしての繰り返し。なんか、このクラブが学校の七不思議化しているのがわかった気がする。僕のように、ここを見つけ出しても、この先輩に質問攻めと独り言を繰り返されたら、他の人に被害を増やさないようにとみんながみんな黙っているのだ。

 そりゃそうだろうな、と心の中でうなずいた。

「ねぇ、結局君の好きな人は?」

「いません」

きっぱりと言った。

 「そうか、いませんかーうんうん。・・・ってえーーー!」

その小さい体から発せられる大声は校内と言わないでも、部屋中に響きわたる声だった。

「今何て?」

「だからいないと言ったんですよ」

「じゃあ、なんでここに?」

「噂になってる場所がどんなところか知りたくて、探していたら見つかっちゃて、つい?」

はあぁ〜と空気が抜けたように力なくソファーに腰を下ろした。

「なんだ〜久しぶりの依頼だと思ったのにー、もう一度聞くけど、君は本当にここに来た理由はそれだけなの?」

そうです。と答えようとした。だけど、思いとどまった。

四月、自分を変えようと意気込んだあの日、何故か今までの感じで、女の子と普通に会話してしまい、女の子からはお友達の格付けをされてしまった。もう何処かで諦めていた。でも、これを機に変われるかもしれない。恋愛研究会とこの先輩、奏薫先輩の力で。

だったら、やるだけやってやる!

「実は、僕、初恋を探しているんです」

読んでいただきありがとうございます。

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