プロローグ
これが初登校になるので読んでいただける方は軽い気持ちで読んでください。
人が心から恋をするのはただ一度だけである。それが初恋だ。
ブリュイエール
音無 悠 15歳。僕は「好きな人は誰?」と聞かれれば、「歌手のaikoかな」と応える人間であり、「そうじゃなくて、好きな女子よ。クラスとか学校とか、どこでもいいから」なんて聞かれたときにはいつ何時だとしても「いないよ。」と即答しかねない人間なのだ。
僕は生まれてこの方、恋愛というものをしたことがない。それに反して生まれてからこの方、女の子と話さなかった日が存在しない。この言葉だけ聴いた人は、僕のことをどんなハーレム王子だと怒り狂って追いかけてくるかもしれないが、まずは落ち着いて聞いて欲しい。何のことはない、僕には年の近い姉が3人もいるのだ。生まれた瞬間にも姉たちは立ち会っていたようだし、まだ歩けないころにも、姉が面倒を見てくれていたようで、毎日のように僕に話しかけてくれたようで話すようになったのも早かったようだ。ちなみにはじめて話した言葉は「ネェネ。」
さて、これだけ聞いた人は僕のことをシスコンだから恋愛したことがないと勘違いしてしまうかもしれない。断じて違う。確かに姉ちゃんたちのことは別に嫌いなわけではない。むしろいろいろと感謝している。ただ俺が異常性癖者でないことだけは押さえておいてもう少し聞いて欲しい。僕が物心付くころには周りにいる友達は、みんな女の子だった。それはもちろん僕がお姉ちゃんについてまわっているうちに、その友達と仲良くなっていき男友達から離れていった。(そのせいか今も男友達は数える程度にしかいない。)そのせいか女の子のことを友達以上に考えることができなくなっていた。
ここでもうひとつ勘違いを起こすかもしれないので補足しよう。
僕はホモじゃない!!!
異性を異性と見れない人のことを否定するわけではないけど、とにかく少なくとも僕は違う。ちゃんとCMの女優を見れば可愛いなぁとか綺麗だなぁと思ったりするが、初めて話す女の子期待しても、女の子としてではなく友達として考えてしまう。
そうは言っても、恋愛をする努力をしなかったわけではない。仲のいい女の子の中で可愛いなぁと思う人に思い切って告白した。だけど、「ありがとう。でも、悠君のこと友達としてしか見れないから」の一言だった。女の子も僕のことを友達としてか見れないらしい。まぁ怪我の功名だったのはその女の子が僕が告白したことをみんなに言わないでくれたことだった。そのおかげかせいかわからないけど、中学を卒業するまでやっぱり僕は女の子が周りから消えることはなかった。
そして僕もついにこの春、高校生になった。こんな自分を変えよう、男友達を作って、彼女を作って青春ライフを満喫しようと意気込んで高校は中学校から遠いところに入学した。・・・・結果を言うと、今までとなんら変わらなかった。いや、変われなかった。入学式の後、みんなの自己紹介が済むと僕は、近くの男子と友達になろうと話しかけたのだが、なぜか話しかけたのが女の子だった。もう女の子と話すのが自然になってしまい男子に話しかけるのと同じ感覚で話しかけたのが女の子だったというわけだ、そのままずるずると、クラスの女の子のほぼ全員と友達になることができた、いや、なってしまった。それに何故か、いや理由はなんとなくわかっているんだけど、クラスの男子からは中学からの唯一の友達、木村以外は僕のことを目の敵にしている。
これが音無悠の15年間の人生である。
「たいそう羨ましい人生だな。」
「何言ってんだよ」
こんなわけのわからんことを言うやつが木村だ。
「だってお前俺なんて女の子と関わる機会だってないんだぜ。」
「僕は女の子とお友達になりたいんじゃなくて、特別な関係になりたいんだよ」
「特別な関係って言うと彼氏と彼女の関係ってやつか?」
「そういうこと」
最近の僕はクラスの女の子と話すことはあってもそれ以上のことはまずない。中学校のときは一緒に遊びに行ったこともあったが、高校に入ってからはこの目の前にいる木村と二人で遊ぶことが多くなり、なんとなく普通の男子高校生に近づいてきた気がする。それなのに木村は「野郎臭い青春だな」なんて言う。
「お前さ、そんなに彼女が欲しいならあそこに行ってみたらどうだ? 」
「・・・あそこ? 」
「そう、あそこ。一年生の中で噂になってる。」
「・・・恋愛研究会? 」
「そうそうそれそれ」
一年生の間で噂されている恋愛研究会。この学校の文化系クラブの部室は部室棟と呼ばれる旧校舎に集中しており、その中にあると言われている謎のクラブである。謎のクラブと言われる所以は何故かその部屋が見つからないことにある。しかも先輩たちに聞いても教えてくれないというか知らないという人が大半らしい。それに恋愛研究会と言う名前からか見つけると好きな人と結ばれるなんて噂が女の子の中で流行している。
「あれってホントにあるの? 」
「あるんだろ、火のないとこには何たらってね」
「ふ~ん。まぁいいや、授業始まるぞ席に戻れよ」
「おう、また後でな」
そう言って木村は自分の席に戻っていく。
「恋愛研究会か、行ってみるかな」
ありがとうございました。これからも遅いながら連載していきたいと思いますので、どうぞごひいき願いします。