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悪魔倶楽部  作者: ぴらみっど
魔界冒険編
216/359

ウセレム騒動



 ――メフィストフェレス? さあ、見なかったな。


 ――ああ、彼ならさっきすれ違ったよ。どこへ行ったかは知らないけどね。


 ――メフィストフェレスの友達? それだけじゃ誰のことか分からないよ。


 つい先ほど別れたばかりのメフィストフェレスの行方を樹流徒は訪ね歩く。

 メフィストフェレスは魔界の中でかなり名が知れた悪魔らしい。通行人の誰もが彼のことを知っており「それは誰だ?」などと口にする者は一人もいなかった。お陰で樹流徒も多少はメフィストフェレスを探しやすくなるというものである。


 ただ、残念ながら樹流徒が話しかけた悪魔の中にメフィストフェレスの行き先を知る者はいなかった。

 有力な情報を得られないまま、とうとう樹流徒の前方に海が見えてくる。町の反対側に到着したのだ。


 海沿いの道路に出た途端、痛々しい光景が視界に飛び込んできた。

 土壌の一部が崩れて、その付近に存在していたであろう道路や家がほとんど跡形も無く破壊されている。「町の一部が(えぐ)られている」という表現がしっくりくる奇怪な光景だった。その光景は秩序だった町並みを持つムウの中だけにあって余計異様な感じを受ける。


 壊れた道路や家の周りでは十体前後の悪魔が動き回っていた。ある者は瓦礫を撤去し、ある者は家を建て直すために木材を加工し、またある者は道路が剥がれた部分に石膏のようなものを流し込んでいる。町が被害に遭った日時は不明だが、朝早くから精力的な復旧作業が始まっていた。

 せっせと動き回っている者たちに紛れて、復旧作業の様子をジッと見守っている悪魔たちも少数いる。その内の一体にダックスフンドのような体型をした麒麟の悪魔がいた。

 話を聞いてみようと樹流徒はそちらへ近付く。


「随分派手に壊されたな。ウセレムという怪物がこれをやったのか?」

 声をかけると、麒麟の悪魔は足の何倍も長い首を回して樹流徒のほうを振り向いた。

「ああ。そうらしいよ。余り詳しい事情は知らないけどね。私は仲間と一緒にムウまで木材を運んできたよそ者だから……」

「そうか」

「もし詳しい話が知りたいならあの悪魔にでも聞いてみるといいよ」

 そう言って麒麟は顎で前方を指す。

 彼が指し示した場所には一人の老人が立っていた。立派な白髭を蓄えた小柄な老人だ。背中は大きく曲がり足元まで隠れる抹茶色のローブを着ている。そして青い宝石で装飾された木製の杖を手に持っていた。また、その老人の肩には(つぐみ)と思しき鳥が一羽止まっている。老人の使い魔だろうか。

 白髭の老人は復旧作業の様子を見守っていた。瞬きひとつせず、まるで石像のように固まっている。肩に止まっている鶫だけがどこか退屈そうに首を捻っていた。


「あの悪魔はムウの代表者だ。だからきっとウセレムについて詳しく知ってるはずさ」

 と、麒麟の悪魔。

 樹流徒は「なるほど」と相槌を打った。

「それじゃあ彼に話を聞いてみる」

 ウセレムの件についてこれ以上深入りすべきかどうか、樹流徒はまだ意識していなかった。それを判断するにはまだ情報が足りない。ムウの住人がさほど困っていないのであれば、あるいは彼らが自力で問題を解決できるならば、樹流徒の出る幕は無かった。


「ところでもうひとつ聞きたいんだが、このあたりでメフィストフェレスを見かけなかったか?」

 樹流徒はそれについても麒麟の悪魔に尋ねる。

 長い首が横に振れた。

「いいや見てないよ。メフィストフェレスが今この町に来てるのかい?」

「ああ。俺をムウまで案内してくれたんだ」

「へえ。アイツ、詩人として魔界を旅するようになってから変わったみたいだな。前は結構冷酷な奴だったのに」

 そのようなやり取りで麒麟の悪魔との会話は終わった。


 あのメフィストフェレスが冷酷な性格だったなんて余り想像できない。そのようなことを考えながら、樹流徒は前方の老人に近付く。麒麟の悪魔が「町の代表者」と言っていた悪魔だ。

 樹流徒が傍で立ち止まると、小柄な老人は顔を上げた。ただ、それだけだった。老人は何も言わないし樹流徒を警戒する素振りも見せない。肩に止まっている(つぐみ)も老人と似たような動作をしてつぶらな瞳で樹流徒を見上げた。

「少し話を聞かせてもらってもいいか?」

「……」

 樹流徒が話しかけても老人は口を閉ざしたままだった。話しかけたタイミングが悪かったか、それとも声が聞こえなかったか。

 樹流徒は少し身を屈めて顔の高さを老人に合わせると、最初よりも大きな声で言う。

「アナタはムウの代表者だな? 話を聞かせて欲しい」

「うるせーな。そんな大声出さなくても聞こえてるよ」

 今度はちゃんと返事がきた。

 とても老人とは思えない乱暴な言葉遣いだったが、当然だった。何しろ返事をしたのは老人ではなく、老人の肩に止まっている(つぐみ)のほうだったのだから。

 そのことに樹流徒はすぐ気付いたし、さして驚きもしなかった。喋る鳥がいても魔界ならば珍しくないからだ。

 ただ、鶫が次に発した言葉には少し驚かされた。

「オマエ、何か勘違いしてるみたいだが、町の代表者はオレだぞ。この爺さんはオレの使い魔だ」

「お前がムウの代表者?」

 老人が代表者で、鶫は使い魔だとばかり思っていたが、事実は真逆だった。

 鶫は偉そうに胸を反らす。

「オレの名前は“カイム”。無口で大人しい悪魔だ。そして今言ったようにムウの代表者でもある。先に断っとくが代表者と言っても別に大した権力を持ってるワケじゃねーからな。ムウの住人どもの名前や住所を把握したり、町の中で問題が起こった場合に対処したりとか、メンドクセー役割をしてるだけだ。そもそも代表者っつってもオレはムウの町づくりに尽力したメンバーの一人ってだけで――」

 自称無口な悪魔カイムはせきが切れたように喋り出す。高速で(くちばし)を開閉させるその姿は壊れた玩具みたいだった。

 結局五分くらい喋り続けただろうか。カイムの自己紹介がようやく終わると、今度は樹流徒が名乗る。

「俺は相馬。別の階層から来た」

「ふうん。で、そのソーマが俺に何の用だ? ムウへの移住希望か?」

「違う。最近この町を襲っているという化物……ウセレムについて、なるべく簡潔に教えて欲しい」

 “なるべく簡潔に”という部分を強調して樹流徒は言った。

 ただ、残念ながらその意図は汲んでもらえなかったようである。カイムは「ああいいぜ。話してやるよ」と口火を切り、その後二十分以上に渡りウセレム騒動について滔滔(とうとう)と語った。


 その長話の要点だけをまとめると、以下の通り。

 ウセレムは悪魔ではない。海上都市ムウが作られるよりも昔からこの海域に住んでいる長寿の巨大生物で、全身を青い鱗に覆われた竜の姿をしている。

 カイムが知る限りウセレムは魔界に一匹しか存在しない生物である。口は利かないが、相手の言葉は理解できるらしい。そのため悪魔からウセレムに話しかけることは可能で、一方通行ではあるが意思の疎通が取れていた。

 ウセレムの性格は非常におとなしく、悪魔に対してこの上なく好意的である。普段は決して暴れたり怒ったりせず、悪魔を恐れずに近付いてきた。そのため昔からムウの住人とは仲が良かった。ムウの住人も皆ウセレムが好きだった。

 ウセレムは過去に何度も悪魔を救っている。難破した船や海に溺れた悪魔をムウまで運んだ回数は数え切れない。数十年前にムウが未曾有の大洪水に襲われたときも、ウセレムは自分の体を防波堤にしてムウを守った。お陰でムウの住人にはそれほど被害が出なかった。この一件以来ウセレムは“ムウの守護竜”と呼ばれるようになった。その後もムウとウセレムの友好的な関係は続いた。


 ところが今から約二十日前、信じられない事件が起こった。

 ウセレムがいつものようにムウに姿を現したかと思ったら、突然町の住人に対して“供物”を要求してきたのだ。食べ物、酒、そして金品、いずれもかなりの量を渡すよう、ムウの住人たちはウセレムから言われた。

 今まで一度も喋った事がないウセレムが口を利いたことにムウの住人たちは驚いた。それ以上にウセレムの要求に困惑した。町の代表者であるカイムを含めたムウの住人たちは急いで対応を相談した。結果、彼らははウセレムの要求を全て呑むことで一致した。これまでウセレムは何度も悪魔を救ってきた。その礼として供物を差し出しても良いのではないか? というのがムウの住人たちのほぼ総意だった。

 供物を受け取ったウセレムは大人しく海に帰っていった。事件はそれで終わりかと思われた。


 ところがそのわずか三日後、ウセレムは町に現れて再びムウの住人たちに供物を要求したのである。

 ムウの住人はもう一度相談してウセレムの要求を呑み事なきを得たが、その後もウセレムは数日置きに町に現れては同じ要求を繰り返した。

 つい先日もウセレムは町に現れた。そしてやはり供物を要求してきた。

 前回ウセレムが帰ったあとムウの住人たちは相談して「これ以上要求は飲めない」と決めていた。その意思をカイムがウセレムへ伝えた。ムウの住人たちは初めてウセレムの要求に反発したのである。


 その結果が、いま樹流徒の目の前にある光景だ。要求を蹴られたウセレムは怒り狂って暴れ出し、ムウに攻撃をしかけた。巨大な体を叩きつけて土壌を破壊し、民家数件をほとんど丸呑みにしてしまった。それにより町の一部が(えぐ)れるという異様な光景が生まれたのである。

 幸い怪我をした悪魔はいなかったが、ウセレムの再来を恐れて数名の住人がムウを出て行った。もし今後もウセレムが供物を要求するようならば、ムウからはどんどん悪魔がいなくなってしまうだろう。


 以上が、カイムが教えてくれたウセレムと騒動の概要である。何とも不可解であり、ムウの住人たちにとっては理不尽極まりない話だった。

「どうしてウセレムは豹変してしまったんだ?」

 説明を聞く限り、事件前後でウセレムはほぼ正反対の生き物になっている。その劇的な変化には何か理由があるのではないか?

「そんなのコッチが聞きてーよ」

 うんざりした調子でカイムは言った。すでに同じ質問を何度もさているのかもしれない。

「あの豹変ぶりは余りにも異常だ。だから、もしかするとあの乱暴な化物はウセレムじゃなくて、ウセレムに近い別の生物かもしれない……とオレたちムウの住人は考えた」

「実際はどうなんだ? ウセレムの偽物という可能性はあるのか?」

「いや。残念ながらアレは間違いなく本物のウセレムだ」

 と、カイム。

「そう言い切れる根拠は?」

「実は、ウセレムの背中には二つの大きな傷跡があるんだ。その傷は昔ウセレムが海底生物に襲われた悪魔を庇って負ったものだ。町を襲ったウセレムの背中にも同じ傷がついていた。位置といい大きさといい、間違いない」

 この話が事実だとすれば、ウセレムが偽物だという線は極めて薄そうだ。

 となると、ウセレムはある時を境に何かがキッカケで豹変してしまったことになるが――


「カイム。こうなったらウセレムを捕獲しよう。もうそれ以外にない」

 そのとき、樹流徒たちの会話に横槍を入れてくる者がいた。


 兎の頭部と人間の体を持つ兎頭人身(ととうじんしん)の悪魔である。可愛らしい顔とは裏腹に白服の下からでも分かる筋肉質な体が何ともミスマッチな生物だった。

「ウセレムを捕獲して、どこかに繋いでおくか、閉じ込めておくべきだ」

 どこからともなく現れた兎頭人身の悪魔は明らかに苛立っていた。

 それをカイムがなだめる。

「落ち着けよ。家を壊された上に大切なモンを取られた怒りは分かる。でも短絡的になるな」

 なるほど。この兎頭悪魔はウセレムに家を破壊されたムウの住人なのだ。だからウセレムに対して憤っているのである。

 それにしても“大切な物を取られた”とは、一体何を奪われたのだろうか? それについて樹流徒が尋ねる暇もタイミングも無く……

「オレは冷静だ!」

 被害者の悪魔はとても冷静とは思えない叫びを発した。元々真っ赤な目が充血して一層赤くなっているように見える。

「ウセレムはきっとまた町にやってくるぞ。こちらが大人しく供物を差し出せば、アイツはつけあがる一方だ。ウセレムを捕獲すべきなんだよ」

 そう言って兎頭悪魔はカイムに詰め寄った。

「捕獲っつっても、ウセレムを捕まえるのは容易じゃないぞ。つーか無理だろ」

「だったら始末するのもやむを得ない。有力な悪魔が数人力を合わせればウセレムくらいどうにかなる」

「ああ。殺すだけならそれほど難しくないだろうよ。でもウセレムを始末すると決めるのは早計だ」

「そんな悠長な事を言ってるあいだに対応が遅れて被害が広がったらどうするんだ? ん?」

 兎頭悪魔の指先がカイムの頭を軽く突く。

 その行為がカイムの怒りに火をつけた。(つぐみ)の悪魔はいっぱいに広がった(くちばし)からキエッと奇態な怒声を発する。

「被害が拡大したらどうするだと? ンなことはテメーに言われなくても分かってンだよ。けどな、ムウとウセレムの関係はお前が思っているよりずっと深いんだ。アイツを簡単に殺すわけにはいかねーだろ、アホウ」

 この言葉に今度は兎頭悪魔が激怒する。

「阿呆? 今、オレに阿呆っつったな? この鳥野郎! 焼き鳥にすっぞ」

「おうコラ、やれるモンならやってみやがれ。テメーこそ(かまど)に放り込んで兎鍋に……」

 売り言葉に買い言葉。意見の食い違いから相手を口汚く罵り始めた両者。

 ここまで黙って彼らのやり取りを傍観していた樹流徒だが、見るに見かねて仲裁に入ることにした。

「お前たちが言い争っても多分利点は一つも無いぞ」

 割って入ると、罵声合戦を展開していた両者は同時にぴたりと口を止めて樹流徒を見た。

「そういやアンタ誰だ? このあたりじゃ見かけない顔だな。どうせムウの住人じゃないだろ? 悪いけど部外者は黙っててくれよ」

 そう言って兎頭悪魔が少しむっとする。

「お前の言う通り、俺はよそ者だ。でも何か力になれることがあるかもしれない」

 樹流徒が落ち着いた口調で答えると、悪魔の表情が少しだけ和らいだ。

「おい、コイツ誰なんだ?」

 兎頭悪魔はカイムに耳打ちして樹流徒の素性を尋ねる。

「ソーマって名前らしい。それ以外のことは知らん。オレも会ったばかりだからな」

 カイムが答えると、兎頭悪魔は「ふうん」と頷いた。数秒前まで罵り合っていた両者だが、早くも余憤は納まりつつあるようだ。


 樹流徒は目だけを動かして両者の顔を交互に見る。

「この際俺の素性はどうでもいい。それよりウセレムの件だ。カイムから聞いた話では、ウセレムはムウの住人と親しかったそうだな? それがどうして豹変してしまったのか、何か心当たりは無いのか?」

 この質問に対して、先ほどカイムは「こっちが知りたい」と答えている。

 かたや兎頭悪魔は少し違うようだ。

「ひとつだけ心当たりがある」

 そう答えた。

「その心当たりというのは?」

「実はウセレムがおかしくなる少し前、ムウに移住してきた悪魔がいるんだよ。オレはそいつが怪しいと睨んでいる」

「何という名前の悪魔なんだ?」

「“アモン”だ。いつも眠たそうな顔をしていて、何を考えているのか良く分からない奴だよ」

「そのアモンという悪魔が怪しい理由は?」

「オレはこの目で二度も目撃してるんだ。真夜中にたった一人で小船に乗って海に出掛けるアモンの姿を。しかも二回とも豹変したウセレムがムウに現れる前夜だった」

「おい。そんな話初めて聞いたぞ」

 というカイムの言葉を無視して、兎頭悪魔は話を続ける。

「もしかしてアモンはウセレムと密会して何か良からぬことをしていたのかもしれないぜ。例えばアモンがウセレムを洗脳しているとかな」

 洗脳……。確かに悪魔ならば動物を洗脳する能力を持っていたとしても不思議ではない。アモンという悪魔を疑うにはまだ証拠が弱いが、多少気になる情報ではあった。


「オレが把握している限り、ここ最近アモン以外にムウへ引っ越してきたヤツはいない。ムウに長期滞在している奴もいない。だからアモンがこの町にやってきたのと同時期にウセレムが豹変したのは事実だ。それにウセレム襲来の前夜にアモンがこっそり海に出てるってのも妙な話だと思う。が、だからと言ってアモンを犯人扱いするのはちと無理があるな」

 カイムは樹流徒と同じことを考えていた。微妙な言い回しでアモン犯人説を否定する。


 このときすでに樹流徒は意を決しようとしていた。ウセレムの件はムウの問題であり、部外者が口を突っ込むのはお門違いかもしれない。それでもこの一件はムウの住人たちで自力解決するのは難しそうに感じるし、この問題を放置してムウを去るのは少し心残りだった。海底神殿へ向かうという一番大切な目的に専念したいからこそ、樹流徒は可能な限り心残りは作りたくなかった。

 

「カイム。良ければ俺も事件の解決に協力させてくれないか?」

 そう樹流徒が申し出ると、カイムと悪魔は互いに目配せをする。

「そりゃあ……好きにしてくれて構わねーけど、間違っても余計なことはしないでくれよ」

 カイムはどことなく不安そうだった。樹流徒が中途半端に事件に首を突っ込んで却って事態を悪化させることを懸念しているのだろう。

「しかし協力といっても具体的に何をするつもりだ?」

 兎頭悪魔が尋ねる。

「それはまだ分からないが、まずはアモンに会ってみたい」

「やめといた方がいいんじゃないか? 仮にアモンが事件に絡んでいるとしたら、話を聞いても奴を警戒させるだけだぜ」

 カイムが反対する。

「アモンに対してウセレムの話はしない。俺は、ただアモンがどういう悪魔なのか知りたいだけだ。それに万が一アモンが怪しいのであれば後々のために家の場所は知っておきたい」

「うーん……。そういうことならまあいいんじゃないか?」

 アモンが怪しいと言い出した手前か、兎頭悪魔が同意する。

「じゃあオマエ、ソーマをアモンの家まで案内してやれよ。オレはもうしばらく復旧作業の様子を視察しなきゃいけないからここを動けないんだ」

「しょうがないな。分かったよ」

 カイムの言葉に兎頭悪魔は頷いた。

「よし。それじゃあ早速行くか。ついて来いよ」

 そう言って悪魔は樹流徒に背を向けて歩き出す。

「じゃあ、また後で」

 樹流徒はカイムと別れの挨拶を交わして、兎頭悪魔のあとを追った。

 カイムは「おう」と返事をしながら、つぶらな瞳はすでに復旧作業をしている悪魔たちのほうを見つめていた。




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