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婚約破棄? ご自由に。条約違反の責任は国家でどうぞ ~婚約破棄された令嬢、契約で世界を制圧する〜  作者: 白石アリア


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第94話 崩落の兆候

 最初の遅延は、小さかった。


 だが、消えなかった。


「……まだ解消されていません」


 ノアの声が低い。


 ルガート商会。

 保証枠決済遅延。


 本来なら、数時間で解消されるはずの規模。


 だが半日経っても、残っている。


「連鎖の可能性は」


 カイルが即座に問う。


「……あります」


 ノアの指が震えながら、画面を拡大する。


 ルガートが使用していた保証枠。

 それを担保にした契約。

 さらにその先の連結。


 線が、一本ではない。


 枝分かれしている。


「……三層目です」


 静かな声。


 私は理解する。


 これは単体の問題ではない。


 構造の問題だ。


 港湾市場。


 さっきまでの熱気が、わずかに変わっていた。


「おい、ルガート止まってるって本当か」


「いや、すぐ戻るだろ」


「……だよな?」


 笑いが、少しだけ硬い。


 その時。


 別の端末が赤く光る。


《速報》


《関連商会 二社、保証枠決済遅延》


 空気が、止まった。


「……増えた」


 ノアが呟く。


 小さな波紋。


 だが確実に広がる。


 私は即座に言う。


「全履歴を引き出して」


 画面が切り替わる。


 保証枠の流れ。

 貸与。

 再担保。

 再契約。


 そして。


「……同じ枠が、何度も使われている」


 カイルが低く言う。


 履歴は正しい。


 だが使い方が歪んでいる。


 同じ信用が、何度も消費されている。


 午後。


 自由圏側でも動きが出る。


《事故債券価格、急変動》


 上下に揺れる。


 資金が逃げ始めている。


「繋がっています」


 ノアが言う。


「保証枠が揺れると、自由圏商品も揺れる」


 私は目を閉じる。


 分かっていた。


 だが、現実は速い。


 カイルが一歩踏み出す。


「今ならまだ止められます」


「保証枠取引の一時停止」


「発行制限」


「最低限の介入で済む」


 私は、画面を見つめる。


 遅延三件。

 まだ小さい。


 だが線は繋がっている。


 ノアが言う。


「……広がります」


 確信だった。


 その時、端末がさらに赤く光る。


《速報》


《保証枠価格 急落開始》


 ざわめきが爆発する。


「売れ!」


「逃げろ!」


「まだ間に合う!」


 さっきまでの熱狂が、反転する。


 恐怖に。


 私は静かに言う。


「……始まりました」


 セリーナが横で頷く。


「熱狂の反転です」


 市場は早い。


 熱するのも、冷めるのも。


 その時、別の警告。


《高信用主体 一部売却開始》


 ノアが息を呑む。


「……逃げています」


 信用の高い者ほど、早く動く。


 安全な者ほど、先に逃げる。


 そして残るのは――


 遅れた者。


 私は理解する。


 これは単なる価格変動ではない。


 信用そのものの信頼が、揺らいでいる。


 カイルが再び言う。


「命令を」


 短い言葉。


 だが重い。


 止めるか。


 任せるか。


 私は、ゆっくりと顔を上げる。


「……まだ止めません」


 ノアが目を見開く。


「ですが」


「ここで止めれば、原因が見えない」


「次はもっと大きく崩れる」


 私ははっきり言う。


「崩れるなら、構造ごと見せる」


 沈黙。


 その瞬間。


 最大の警告が鳴る。


《中規模商会 三社 同時決済不能》


 空気が、完全に変わった。


 もう波紋ではない。


 連鎖だ。


 私は画面を見つめる。


 線が、一気に繋がる。


 履歴網が映すのは、


 過去ではない。


 今、そして――


 崩れ方。


 私は静かに呟く。


「……これが」


 信用の、限界。


 港の灯りが、わずかに揺れた。


 そして市場は、


 まだ止まらない。

ついに「兆候」から「崩壊」に踏み込みました。


ここから一気に物語の熱量が上がります。

アリアが止めなかった選択がどう転ぶのか――


次話は“爆発”です。


続きが気になる方は、ぜひブックマークと評価をお願いします!

ここからが一番面白いところです。

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