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婚約破棄? ご自由に。条約違反の責任は国家でどうぞ ~婚約破棄された令嬢、契約で世界を制圧する〜  作者: 白石アリア


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第93話 火種

 保証枠の価格は、さらに跳ねた。


 朝の段階で五割増。

 昼には六割。


 数字はもう、正常ではない。


「……止まりません」


 ノアの声が震えている。


 履歴網の画面には、保証枠の取引が連続で流れている。

 売買。

 再売買。

 さらに担保化。


 線が、絡み合う。


「回転速度が異常です」


 カイルが低く言う。


「一日で三回以上、同一保証枠が移動」


 それは、もはや“共有”ではない。


 消費だ。


 私は端末を閉じる。


「現場を見ましょう」


 言葉にした瞬間、足が動いていた。


 港湾市場。


 普段は静かな契約ホールが、熱気に包まれている。


「今ならまだ上がる!」


「信用80以上の枠、確保しろ!」


「次の再販で抜ける!」


 声が飛び交う。


 紙ではない。

 結晶端末の数字。


 だが、空気は株式市場のように荒れている。


「……これが履歴網ですか」


 ノアが呆然と呟く。


「違う」


 私ははっきり言う。


「これは市場です」


 履歴網は、透明にしただけ。


 市場が、それをどう使うかは別だ。


 その時、怒鳴り声。


「ふざけるな!」


 若い商人が端末を叩きつける。


「さっき買った枠が、もう値下がりしてる!」


 周囲がざわめく。


「誰だ売ったのは」


「知らねぇよ、市場だろ!」


 ノアが小さく言う。


「……初めての揺れです」


 私は頷く。


 まだ小さい。


 だが確実に、揺れ始めている。


 その瞬間、端末が赤く光る。


《自由圏速報》


 場の空気が一変する。


《中規模再保険商品、利率急上昇》


「……来たか」


 カイルが低く呟く。


 画面に映る数値。


 自由圏の高利率商品が、異常な伸びを見せている。


 しかも。


「保証枠と連動しています」


 ノアが指を走らせる。


 履歴網参加主体が購入した保証枠を担保に、

 自由圏の商品へ資金が流入。


 そして利率上昇。


 さらに資金流入。


 加速。


「……繋がってる」


 私は小さく呟く。


 履歴網と自由圏。


 別の思想。


 別の構造。


 だが今、


 市場の中で、一本に繋がっている。


「止めますか」


 カイルが問う。


 視線は真剣だ。


「保証枠の発行制限」


「取引停止」


「早ければ早いほど被害は抑えられます」


 ノアも顔を上げる。


「今なら、まだ制御可能です」


 私は、少しだけ考えた。


 止める。


 それは簡単だ。


 履歴網は港の管理下にある。


 命令一つで、止まる。


 だが。


「……まだです」


 二人が息を呑む。


「確認する」


「何を」


「これは構造か、それとも一時的な熱狂か」


 カイルが一歩踏み出す。


「構造です」


「保証枠の多重化は明確なレバレッジ」


「自由圏との連結も確認されています」


 私は静かに言う。


「なら、どこで崩れるかを見る」


 沈黙。


「……実験ですか」


 ノアの声はかすれている。


「違う」


 私は首を振る。


「観察です」


 市場を止めれば、理解はできない。


 理解できなければ、設計もできない。


 その時。


 端末が、もう一度赤く光る。


《速報》


《中規模商会 ルガート、保証枠決済遅延》


 空気が止まる。


 ほんの一瞬。


 だが確実に。


「……最初の綻びです」


 ノアが呟く。


 私は画面を見つめる。


 数字はまだ小さい。


 影響も限定的。


 だが。


 これは“最初”だ。


 市場は熱狂している。


 保証枠は膨張している。


 自由圏と繋がっている。


 そして今。


 小さな遅延が発生した。


 私は、ゆっくりと息を吐く。


 これが。


 火種だ。


 燃えるかどうかは――


 まだ、誰にも分からない。

ここから一気に“暴走”に入ります。

まだ小さい遅延ですが、この火種がどう広がるかが次話の焦点です。


「ここで止めるのか、それとも見届けるのか」


アリアの選択が物語を大きく動かします。


続きが気になる方は、ぜひブックマークと評価をお願いします!

次話、さらに加速します。

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