第48話 選ばれなかった港
フェルン自治領は、港基準の申請を正式に取り下げた。
《円環基金との包括契約を締結する》
短い声明。
だが、その影響は小さくない。
「……やはり」
カイルが、静かに言う。
「ええ」
私は頷いた。
即時安定。
段階制より、今を救う保証。
選ばれなかったのは、港だ。
「市場は?」
「一時的にフェルン債が上昇。
円環系列が大量購入」
私は、結晶板を閉じた。
「三年」
「はい?」
「三年は安定するでしょう」
だが、その後は。
監査拒否権。
基準変更禁止。
重い解約条項。
信用は、外部依存になる。
「……止めなくてよかったんですか」
カイルの問いは、まっすぐだった。
「止められません」
私は答える。
「選択は、彼らのものです」
少しの沈黙。
「悔しくないんですか」
その問いに、私は一瞬だけ言葉を失った。
悔しくないわけがない。
港は、構造を示した。
保証も出した。
条件も明確にした。
それでも、選ばれなかった。
「……悔しいですね」
私は、正直に言った。
「ですが、恐怖に勝つのは時間です」
即時安定は魅力だ。
だが、三年後に条文が重くのしかかる。
「待ちます」
「待つ?」
「ええ」
救えなかったのではない。
今は、選ばれなかっただけ。
その夜。
円環基金から通信が届く。
《一国目だ》
《港は万能ではない》
私は、短く返した。
《知っています》
返答はなかった。
窓の外、港は動いている。
王国。
クロイツ。
ルメリア。
ベルナード。
信用圏は、確実に広がっている。
だが同時に、
外側に残る国もある。
私は、静かに思う。
信用は強制できない。
だが、
恐怖に依存した契約は、
いずれ軋む。
港は待つ。
そして、崩れたときに――
**再び選ばれる構造であることを、証明する。**
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