第45話 救うという選択
王国が安定の兆しを見せたその矢先。
南方の小国家連合の一つ――ベルナード公国で、契約不履行が連鎖した。
「三件同時です」
カイルが報告する。
「いずれも港を通らない独自契約。
再保険は……円環基金系列」
私は地図を見下ろす。
王国は持ちこたえた。
だから今度は、守りの薄い小国を揺らす。
「公国の信用は」
「もともと低い。
ですが、破綻まではいかないはずでした」
「連鎖を起こしたのは?」
「一件目の不可抗力拡張。
二件目が支払い延期。
三件目が取引停止」
典型的な信用崩壊の流れ。
恐怖が恐怖を呼ぶ。
「……助けますか」
カイルの声は、慎重だった。
王国とは違う。
婚約も、因縁もない。
「港は、国家の救済機関ではありません」
私は静かに言う。
「ですが」
結晶板を操作する。
《暫定信用回復支援枠》
「港基準を採用する意思がある国家には、
一時保証を出します」
「……自ら拡張するんですね」
「ええ」
救うのではない。
信用圏へ招き入れる。
ベルナード公国へ通達を送る。
《港基準採用を条件に、暫定保証》
数時間後、返答が来た。
《受け入れる》
早い。
それほど切迫している。
翌日、声明が出る。
《ベルナード公国、港基準採用》
商人たちが戻り始める。
連鎖は止まる。
「……本当に、救いましたね」
カイルが小さく言う。
「いいえ」
私は首を振る。
「選択肢を示しただけです」
その夜。
通信札が光る。
《拡張するか。
港は国家になる気か?》
円環基金。
私は、少しだけ考えた。
《国家にはならない》
返信する。
《信用圏になるだけ》
しばらくして、返答はなかった。
窓の外、港の灯りが広がっている。
王国。
クロイツ。
ルメリア。
ベルナード。
点が、線になり始めている。
だが同時に、
私の肩に重さが増す。
助けるという選択は、
責任を引き受けること。
制度は強い。
だが人は揺れる。
私は、静かに思う。
救うたびに、
敵も増える。
それでも――
止まらない。
信用は、
築くものだと証明するまで。
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