第42話 広場に立つ者
王都の広場には、まだ夜明け前から人が集まり始めていた。
穀物価格の高騰。
商人への不信。
「港に売られた」という噂。
暴動ではない。
だが、静かな怒りが渦巻いている。
私は港にいた。
王都には行かない。
行けば、それは介入になる。
「……王太子殿下、広場に出ました」
通信札が震える。
「演説を」
私は、静かに目を閉じた。
結晶板越しに、王都の映像が映る。
石造りの広場。
不安と怒りの混じった群衆。
そして――
王太子レオンハルト。
護衛はいる。
だが盾はない。
「穀物は届く」
彼は、はっきりと告げた。
ざわめきが広がる。
「港基準を、王国は全面採用する」
怒号。
「なぜ港に従う!」
「王国は誇りを失ったのか!」
彼は、声を張り上げない。
だが言葉は揺れない。
「誇りとは、民を飢えさせることではない」
広場が静まる。
「信用を失えば、契約は壊れる。
契約が壊れれば、穀物は届かない」
誰もが、理解している。
だが認めたくなかった事実。
「王族特例を廃止する」
ざわめき。
「王も、私も、同じ基準を受ける」
怒号は、止まらない。
だが石は飛ばない。
私は、画面を見つめる。
「……彼は」
カイルが呟く。
「変わりましたね」
「ええ」
私は答える。
「守られる側から、守る側へ」
その瞬間。
広場の一角で、小さな爆発が起きた。
「……!」
煙。
悲鳴。
だが大規模ではない。
威力も低い。
「牽制ですね」
私は即座に言った。
「暴動を起こすためではない」
不安を拡大させるため。
円環基金は、
直接は動かない。
だが“揺らす”。
王太子は、動揺しない。
「広場を閉鎖しない!」
彼は叫ぶ。
「ここで話す!」
煙が晴れ、
群衆は逃げない。
暴動は起きなかった。
港に戻る映像が途切れる。
私は、深く息を吐く。
「……一歩です」
「勝ちですか」
「いいえ」
私は首を振る。
「信用は、揺れなかっただけ」
円環基金は、
次を打つ。
内部。
市場。
王国貴族。
私は、静かに言う。
「内部調査を急がせてください」
王国内部で、
誰が資金を流しているのか。
戦争は、
条文から始まった。
だが次に崩れるのは――
**王国の内側だ。**
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