表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄? ご自由に。条約違反の責任は国家でどうぞ ~婚約破棄された令嬢、契約で世界を制圧する〜  作者: 白石アリア


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
40/117

第40話 条文から始まる戦争

 円環基金の次の一手は、早かった。


 王国向けの大規模穀物契約。

 締結済み、履行準備中。


 そこへ、突然の通達が入った。


《不可抗力条項の発動》


「……不可抗力?」


 カイルが、目を見開く。


「干ばつです。

 供給地の一部で、収穫量が予測を下回った」


 私は、静かに条文を確認する。


 確かに、不可抗力条項は存在する。

 自然災害、戦争、疫病。


 だが――


「収穫減少率は」


「七%」


「契約上の発動基準は」


「十五%以上」


 沈黙。


「つまり、基準未満」


「ええ」


 私は頷く。


「だが――」


 次の書類を開く。


 再保険契約。

 そこには別の条文があった。


《市場不安定時、保険会社は独自判断で不可抗力を拡張解釈できる》


 カイルが、声を失う。


「……基準を通らない条文」


「ええ」


 港の契約基準ではない。

 外側で結ばれた契約。


「港は関与していません」


「だからこそ、動けない」


 不可抗力が発動すれば、

 履行義務は停止。

 遅延は正当化。

 信用は揺らぐ。


「……王国が倒れます」


 カイルの声が低い。


 穀物が届かなければ、

 価格は上がり、

 民衆は不安定になる。


 王国は、すでに信用が低い。


 私は、ゆっくりと息を吸った。


「これは王国への攻撃ではありません」


「え?」


「港への攻撃です」


 不可抗力の拡張解釈。

 基準外条文。

 保険主導の履行停止。


 港を通さず、契約を止める。


「……どうします」


 私は、結晶板を起動した。


「対抗条文を出します」


「対抗……?」


「港を通過する契約に限り、

 不可抗力の定義を統一する」


 室内がざわめく。


「そんな権限が」


「あります」


 私は静かに言った。


「保証基金に参加した国家は、

 港基準を受け入れている」


 クロイツ。

 ルメリア。


 そして、今危機にある王国。


「王国にも提案します」


 カイルが、驚いた顔で見る。


「助けるんですか」


「助けません」


 私は首を振る。


「条件を提示するだけです」


 対抗条文は、単純だ。


《不可抗力条項の発動は、港基準に準拠する》


《拡張解釈は無効》


 それは、保険会社への直接挑戦。


 夜。

 声明が出された。


《港湾都市は、不可抗力定義を統一する》


 数時間後。

 円環基金から返答が届く。


《市場への過剰介入だ》


 私は、短く返した。


《市場を守る介入だ》


 翌朝。


 クロイツが同調声明を出す。


 続いて、ルメリア。


 そして――


 王国からも、遅れて受諾の通達。


 港を通過する穀物契約は、

 不可抗力を満たさない限り履行義務を維持。


 円環基金は、初めて一歩退いた。


 だが同時に、

 別の声明が出る。


《契約破壊同盟は、正式に港を敵対対象と認定する》


 私は、紙を静かに畳む。


 ついに名乗った。


 剣ではなく、

 条文で。


 戦争は始まった。


 血は流れない。

 だが、国家は揺らぐ。


 私は、窓の外の港を見る。


 船は動いている。

 灯りは消えていない。


 契約は、まだ生きている。


 ならば――


 この戦争は、負けない。


 **条文から始まった戦争は、

 条文で終わらせる。**

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ