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婚約破棄? ご自由に。条約違反の責任は国家でどうぞ ~婚約破棄された令嬢、契約で世界を制圧する〜  作者: 白石アリア


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第34話 止まる港

 翌朝。

 港は、本当に止まった。


 最初は、小さな遅延だった。

 クロイツ連邦向けの船が、出航許可を待つ。

 次に、東方商会の積荷が、通関確認で足止め。

 そして、ルメリアの医療品が、別倉庫へ回される。


「……動線が、噛み合っていません」


 カイルが、青ざめた顔で言った。


「誰も違反していない。

 でも、全員が“慎重”になりすぎている」


 私は、港を見下ろす。


 基準凍結。

 算定式改ざん。

 公開履歴。


 その結果、全員が恐れている。


 ――評価が下がることを。


「……守りに入った」


 私は、静かに言った。


「全員が、リスクを避け始めた」


 軍需物資は、少しでも不確定要素があれば動かない。

 医療品は、責任確認が終わるまで倉庫から出ない。

 商会は、再契約率を落とさないために条件を厳格化。


 誰も違反していない。

 だが、誰も動かない。


「……これが」


 カイルが、低く呟く。


「基準を守らせる、ってことですか」


「ええ」


 私は頷く。


「基準が、恐怖になった」


 そこへ、評議会から急報が届く。


「三隻、出航取りやめです!」


「理由は」


「“総合評価が未確定のため”」


 私は、目を閉じた。


 契約破壊。

 それは違反ではない。


 **過剰な遵守**だ。


 基準を守りすぎることで、

 物流を止める。


「……巧妙ですね」


 カイルの声が震える。


「ええ」


 私は静かに答える。


「戦争です」


 午後。

 評議会が緊急招集された。


「このままでは、港の信用が落ちる」


 評議員が机を叩く。


「基準を撤回すべきだ」


「いや、公開算定式を戻せ」


 意見は割れる。


 私は、立ち上がった。


「基準は撤回しません」


 全員の視線が集まる。


「算定式は、非公開にします」


「何だと?」


「透明性を失うぞ」


「いいえ」


 私は首を振る。


「透明なのは“結果”です。

 計算方法ではありません」


 私は続ける。


「今の港は、数字に怯えている。

 だから、数字を“恐れられない形”に変える」


「具体的には」


「評価は段階表示に戻します」


 百分率ではなく、階層。


 安定。

 注意。

 調整。


「細かい数値は監査機関のみが把握する」


 評議会が、静まり返る。


「それで、動くのか」


 リオネルが低く問う。


「動きます」


 私は、迷いなく答えた。


「恐怖は、細かい数字から生まれます」


 夜。

 掲示板の表示が変更された。


《総合評価:安定》

《総合評価:調整中》


 ざわめきが広がる。


 そして――


 翌朝。

 一隻、また一隻と船が動き始めた。


 完全ではない。

 だが、止まっていた流れが戻る。


「……戻りましたね」


 カイルが、安堵の息を吐く。


「ええ」


 私は港を見下ろす。


「でも、これは勝ちではありません」


 港は止まった。

 基準は揺らいだ。

 信用は削られた。


 敵は姿を見せていない。


 だが、確実にいる。


 違反しない。

 条文を守る。

 責任を明確にする。


 それでも――

 港を止められる者。


 私は、静かに思う。


 基準は、守るものでは足りない。


 **攻撃できる基準**にしなければ。


 戦争は、まだ始まったばかりだ。

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