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第17話_宿場町の夜、影を歩く情報戦

 古代図書館での任務を終えた八人は、王都へ向かう帰路にある宿場町リュミエールに立ち寄っていた。

  「ようやく温かい飯とベッドだな……」

  翔太が大きく伸びをし、荷物を降ろす。街道沿いに建つ宿屋《花飾亭》は、素朴ながらも清潔で、冒険者たちに人気の場所だった。

  だが、その夜。

  「これ見てみろ。掲示板の奥に、張り紙が一枚追加されてる」

  拓矢の言葉に皆が集まる。

  そこにあったのは――

  《調査依頼:王都内にて禁術に関わる動きあり。提供者には報酬三百銀貨。提出先:商業連合本部》

  「……おかしいわね。王国の禁術調査は“王立情報局”の管轄よ」

  日和が眉をひそめる。

  「つまりこの依頼は、表向きじゃない。裏で動いてる組織があるってことだ」

  陸翔が即座に読み解く。

  「どっちの派閥が動いてるか、見極めた方がいいな」

  豊が口を挟み、にやりと笑った。

  「任せとけって。ちょっと夜風にあたりながら、商人宿あたりを冷やかしてくるよ」

  そう言って、彼はひとり夜の街へ消えていった。

  ――そして一時間後。

  「ただいまー。土産話つきで戻ってきたよ」

  豊が戻ってきた手には、パンと葡萄酒、そして一枚の羊皮紙が握られていた。

  「聞いたぜ。商業連合派が最近、“書庫の暴走”って言葉を使って禁術への不安を煽ってる」

  「書庫の……暴走?」

  「要するに、知識が制御不能になったらどうなるか、ってシナリオを煽ってるってわけ」

  その言葉に陸翔が思い出す。風穴遺跡での“模写する触手”、そして禁書区の書物。

  「点が……繋がってきたな」

  日和が低くつぶやいた。

  「あと、連合派の中に、元図書局員だったって密偵がいる。今夜、情報を買えるって」

  「値段は?」

  「百銀貨から始めるってさ。まあ俺の交渉術なら……五十で済むよ」

  そう言って豊は自信たっぷりに肩をすくめた。

  「じゃあ、今夜動こう。正式な任務じゃないが、俺たちにはこの知を守る責任がある」

  陸翔がそう言うと、全員が自然とうなずいた。

  この小さな宿場町の夜――ひそやかな情報戦が、始まろうとしていた。




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