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第15話_風王の聖堂、知恵の槍で討て

 翌朝、八人は風穴遺跡の最深部へと辿り着いた。

  そこは、自然の造形とは思えない神殿構造の空間だった。天井から光が差し込み、壁面には風を司る古代文字がびっしりと刻まれている。

  「……風王の聖堂。間違いない」

  陸翔が呟きながら、腰の腕輪に表示された“学位値”を確認する。

  【学位値:283 → 287】

  「入口を抜けた時点で知識判定が更新された。ここが“学習環境”として認識されてる」

  「ってことは、試されるってことよね」

  日和が杖を構え、前方をにらむ。

  聖堂中央にある台座。その前に、巨大な獣が眠っていた。

  全身を白銀の毛並みで覆われ、背中には羽根のようなエネルギーが脈打っている。名を《シルフィード・ハウンド》。

  「起きた……!」

  美雪の声と同時に、獣の双眸が開かれた。

  視線が八人を捉え、風がうなりを上げる。

  「風圧がくるぞ、耐えろ!」

  翔太が声を張り、盾魔法を展開。日和が後方から支援魔術で全体のバリアを補強する。

  「こっちで引きつける! 翔太、拓矢、俺について来い!」

  陸翔が駆け出し、三人で前衛を担う。

  その背後で、由衣が祈歌を紡ぎ始めた。

  「旋律は記憶の風、導け――《風読の福音》!」

  魔法が発動し、獣の動きに一瞬の遅れが生じる。

  「今だ、いける!」

  豊が敵の隙を突いて囮を引き受け、その間に美雪が懐から投擲式の封印札を放った。

  「次で終わらせる!」

  陸翔は腰の魔導具を取り出した。昨日の夜、自ら設計し書き上げたばかりの術式――

  〈知恵槍・貫風グスタフ〉。

  「知識は貫く刃となる。風を学び、風を穿て!」

  槍が魔力の風をまとい、獣の胸部に突き立つ。

  轟音とともに、獣の咆哮が止んだ。

  《シルフィード・ハウンド》が膝をつき、崩れ落ちる。

  風が静まると、壁面の一角が輝き、魔石の山と古訓の刻まれた石板が現れた。

  「“学びは、欲深さを鎮める”……?」

  日和が石板の文を読み上げた。

  「つまり、力ではなく、知ることそのものがこの聖堂の試練だったのね」

  「そして、それを越えた者に、次の知が与えられる」

  陸翔は聖堂の壁に指を這わせ、そこに記された風の魔導式を一つひとつ書き写していった。

  「次に進む準備が整ったな」

  獣は静かに姿を消し、風穴には再び静寂が訪れる。

  そして彼らは、聖堂を後にした。背に、得た知識と、力に溺れぬ誓いを携えて。

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