第13話_崩れゆく道、支え合う心
風穴遺跡・第三層――。
足元に薄くひびの入った石橋が連なる崩落回廊。その先は深く、魔力の霧が立ち込める奈落だった。
「……この構造、明らかに“誘導罠”だな。通路の中央が脆くなってる」
陸翔が小声で呟く。手にした簡易杖で足場を叩きながら慎重に進んでいた。
「確かに。“落とす”前提の造りっぽい」
美雪が背後から皮肉っぽく言いながらも、視線は鋭く天井の亀裂と構造を見ていた。
「揺れるぞ、気をつけて!」
そのときだった。
突風の残響が遺跡奥から吹き抜け、橋の一部が崩れかけた。
「翔太、下がれっ!」
日和が叫ぶが、翔太は咄嗟に前へ飛び出した。
「間に合わねぇ、俺が支えるっ!」
崩れかけた橋の端に足を掛け、もう片方の足で仲間が立つ石床を蹴る。
その反動で倒れそうな石板を引き戻し、後方にいた拓矢がすぐさま翔太の腕をつかんで引き上げた。
「ば、馬鹿かお前は……!」
拓矢の腕が震えていた。
「だって、誰かがやんなきゃ落ちてたろ……」
苦笑いする翔太。だがその腕には擦り傷が無数に走り、足首が不自然に腫れていた。
「動かさないで! 骨に異常があるかもしれない。応急処置する!」
日和が素早く鞄から薬包と簡易固定具を取り出し、すぐに膝をついた。
「冷却魔薬と固定包帯を併用。……ごめん、ちょっと沁みるわよ!」
「うぉおっ!? ちょっとってレベルじゃ……!」
「文句言わない!」
叫び声が響く中、全員が翔太の周囲に集まり、防御態勢を取った。
「翔太、よくやった」
陸翔が静かに声をかける。
「でも次は――俺たち全員で守る。無茶は一人にさせない」
その言葉に翔太は苦笑しながらも、力強く頷いた。
豊が軽く肩を叩き、由衣が「帰ったらあったかいスープ作ってあげる!」と笑った。
「うん、味噌入りで」
「なんで味噌!?」
軽口がこぼれた瞬間、みんなの表情がふっと緩む。
そう、それが仲間というものだった。
崩れた回廊を越えた先には、さらに深い遺跡が口を開けていた。
だが、彼らはもう迷わない。
支え合い、学び合うためにここに来たのだ。