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ドッペルゲンガー:異世界転移は人攫いの手段  作者: デューク・ホーク
【第3章】魔法使いたちの事件簿
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「そうだ、悪役令嬢ブレダを殺そう」 ①

 科学世界・日本語と魔法世界・クヴァンツ語の相互翻訳家、ルージュ・フイユより読者へ


 一体どうやって入手したのかは全く今は打ち明けることができないのだが、「とある殺人犯」が残した日本語で書かれた手記を入手した。


 私が捜査したある事件記録を読む際、先にこの手記を読んで置くことが話を理解しやすいと判断し、ここに翻訳して掲載する。




   筆:シャルル・ランビエール

   翻訳:ルージュ・フイユ


   1/悪役令嬢を殺す決心にいたるまで


 人を殺したいと願ったのは、自然の理でした。


 僕は慢性病で何年も不自由な生活をしてきた上に、医師の医療ミスなど不運が重なり、大学病院に入院できず、福祉も病気の重さに適したものを受けられず、金銭的にもだんだんと困窮していました。


 引越しなどとても厳しい環境で、近隣の暴走族の活発化や住民の騒音被害が出て、集合住宅の管理人や警察も役に立たないとなれば、彼らを殺したいと思うのは至極真っ当な思考でしょう。今まで人を殺さなかったことに感謝されたいくらいでしたが、誰も感謝してくれません。


 上記の生活環境の悪化が起きるまでは「創作活動」でいわゆる「不満を芸術に昇華」する気概、また創作を通じて生産的行為をせめてしたかったが、それもかなわぬ環境になってしまいました。


 だから、僕は人を殺しました。


 神様はずっといないと思ってました。正確に言うと「人間の上位互換の絶対神」はいないと思ってました。


 今も確証は得られてませんが、「モノを爆発させる特殊能力」を何者かに頂いてからは、ちょっと分からなくなっています。


 たくさん人を殺しました。別に法律にも触れません。


 よくある「対抗馬の超能力者が出現」というイベントがあるかもと思いましたが、それもありません。



 ただ、僕の周りの人はたくさん死んで、人を殺すことになんの躊躇いも無くなった頃に、――熊が都会にまで出没するようになっていたのですが――、僕が住む地域で熊被害の第一号になってしまいました。


 人を殺すことに喜びを感じはじめてたので、もう少し殺したかったなあ。熊を爆発する前に、あっけなく死んでしまったんだもの。




  *      *




 異世界転生も昔は信じていませんでしたが、今、悪役令嬢の側近に転生してしまいました。


 日本にいた頃、あるファンタジー小説(ないし映画化した作品)で「穢れた血」発言やら何やらで差別主義者役になってたキャラクターがいましたが、僕が仕えてる人物はそんなタイプの令嬢版です。


 創作において、特に日本において結構人気のポジションでしたし、僕もフィクションとしてまあ楽しんだのですが、実際僕の支配者として令嬢がいると、どうにも殺したくてたまりません。


 令嬢の名前は「ブレダ」といいます。彼女は魔法使いです。


 はい。日本にいた頃授かった超能力に近いことを、この世界の人々は体系的に(科学に代わるものとして)魔法として習熟しているみたいです。


 ブレダ氏は魔法学校でそれはもう優秀で、4元素やら5元素やらの魔法をたくさん使えるらしいです。


 困った状況になりましたが、ありがたいことに、僕の「モノを爆発させる能力」はこの世界の魔法ともジャンルが違うようで、試しに庭園の木を爆発させた時に色々調査されましたが、原因不明となりました。


 じゃあ、さっさと令嬢を殺せばいいじゃないかと思いますよね。


 しかし、令嬢は身内にはそれなりに優しいという「ヤンキー的」思考の持ち主で……もちろん皮肉の言い回しですよ。ヤンキーに対する侮蔑も込めて……。それで、僕は身内でしたので、しばらく厄介になっていました。


 魔法世界のこともはじめはちんぷんかんぷんでしたので、ある程度学ぶ時間が必要でした。


 何より、ルックスは僕の超絶好みの肉体をしていて、側近の中でも僕は信頼されていたので、時折ネグリジェや下着姿まで目の前で見せてきたのです。普通は同性のメイドに見せるくらいのものだと思うので、はじめはびっくりしました。


 まあでも性格はあまり好きではないので、どうにか身体の損傷少なく、また死体を腐敗させない魔法を覚えてから殺したいなあと手を拱いていました。




 魔法学校で、所謂ヒロインポジションの女生徒が、死霊魔術の才能が突出しているという展開が昨夜ありました。ヒロインが意図せぬ形で死体を、葬儀の合間にセンスのみで動かしてしまったようです。


 通常なら、主人公闇堕ちルートのフラグだとかで、ちょっと周りの生徒たちから距離を置かれはじめた展開です。


 この後、物語の王道ならヒロインが誤解をといていって悪に立ち向かう展開なのでしょう。




 ……いやいや、こんな素晴らしい能力、何とか僕のために使ってくれないかな?


 ヒロイン気質の魔女の名前は「シーラ」と言います。


「シーラさん、あなたの死霊魔術、素晴らしいですね」僕は葬式の現場に居合わせたので、落ち込んで座り込んでいた彼女に話しかけました。


「そんな。みんな悪魔の術だと言って、私を煙たがるんです」シーラ氏は否定しました。


「なんと! おかしい話です。死者を操れるだなんて、善行にも使える素晴らしい魔術ですよ」


「私自身とてもそうは思えませんが、なぜあなた、――ええと、あのブレダさんの側近ですよね――、あなたはそう言い切れるんですか?」


「死体を動かせるということは、魔術を鍛錬すれば脳に記憶されたメモリを喋らすことも可能になっていくということ。(正直本当は今すぐ悪事に使っていきたいけど)無念に死んでいった死者の生の言葉が聞けるのです。もし殺人などで死んだ場合、死者を殺した犯人を突き止めたり、死者の遺族に残せなかった遺言を残せたりしますよ」


 シーラ氏ははっとした表情をしました。「その発想は私にはありませんでした……どうして教えてくださったんですか」


「……僕にはどうにもあなたが動かした遺体の人物が、事故で死んだとは思えないのですよ」なんでそう思うかと言うと、僕が殺したからですね。


 ただ、死亡した学園の生徒Aは他に争いを起こしていた生徒Bがいて、Bが生徒Aを殺したがっていた事、そしてAがBを怪しんでいた事は事実です。


 シーラは僕の話を聞いて首を振りました。「私が誤って動かしてしまった遺体をまた動かせというのですが、これ以上やったら、もう私は『悪のネクロマンサー』のレッテルを貼られて学園生活の終わりです」


「しかし、ここで殺害の犯人を捕まえられれば一躍汚名返上です」


「……」シーラは数分間黙りこくって考えたあと、僕に質問しました。「とにかく、あなたが思う犯人と、事故ではなく事件だという根拠を聞きましょう。まずはそれからです」


 こうして、僕はシーラとタッグを組むことになりました。




 待っていてください、主のブレダ様。必ずやあなたを美しい状態で殺してみせます。

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