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ドッペルゲンガー:異世界転移は人攫いの手段  作者: デューク・ホーク
【第3章】魔法使いたちの事件簿
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ぬいぐるみから滴る血 ④

「翌日、サエに鞄を売った魔女に追加の尋問が行われた。『クマの鞄は、所有者に見切りをつけた段階で、所有者を食べて《世話する》までがセットの魔道具だ。最後に、所有者の今までの所作をコピーする魔法がかけてある。所有者……サエに変身して"世話"したんだよ。ははは。直接光景を見れなかったのは残念だが。そうか、君たちに面白い光景をプレゼントできたか』私とアモンは疲労困憊していたが、魔女にそれを悟られないよう平静を務めて尋問した」


「私たちはその後、局長室に呼ばれた。……ちなみにロバート局長が引退してるのは知ってるよね? タツキは知らない別の人が後任だ……。話がそれたが、アモンの判断(サエをぬいぐるみ化する)に関する叱責が主な内容だった。しかし、この叱責は中断される。サエに変身した鞄は拘束して牢屋に入れられていたのだが、それを監視していた局員が大慌てで局長室に入ってきた。『大変です! 鞄が再度変身しまして、その……ハロルド・バルト、あなたの姿になりました』」


「思い当たる節はあった。サエを鞄に食べさせるという指示をしたのはアモンだが、実行したのは私だ。

 すぐに局長とアモンは鞄のいる牢屋へ向かった。私も付いて行きたかったが、『サエの最期を考えるとハロルドと鞄を対面させることは出来ない』という局長の判断で、私は局長室に監視員とともに残ることになった」


「実際、ドッペルゲンガーの調査を良くする我らが管理局としても、同じ姿をした人間を対面させるということがいかに危険かはわかっていた……しかし、鞄が……もしくは製作者の魔女が1枚上手だった。鞄は三度姿を変えていた。局長とアモンが到着した時、鞄の姿は、アモンに変わっていた」


「牢の錠前を開けるまでアモンは鞄が自身に変わっていることに気が付かなかった。鞄とアモンが対面した瞬間……アモンはドッペルゲンガー現象を起こした。つまり、全身粉々に砕け散った。後の調査でわかったことだが、鞄は実行犯よりも指示をした主犯を優先するよう魔法をかけられていた」


 ボクは恐る恐る聞いた。「ハロルド……キミは大丈夫だったんだよな? 今、目の前にいるし」


「ああ、アモンの死によって局内は阿鼻叫喚で、私は全貌が明らかになるまで数人の監視が24時間置かれ1週間ほど完全隔離の生活だったけどね。結末は――」


 ハロルドは横目を流し、心でなにか嘆いていたようだった。


「――結末は1週間後、突然やってきた。アモンの姿の鞄はより厳重に拘束され、魔女へ更なる追求がされた。魔女はほくそ笑むばかりで、事件は以後進展しなかった。しかし、局長が魔女に、ある魔法をかけることを実行に移した……その魔法は、ルージュ・フイユの置き土産だった」


「ルージュが? 彼からはこの事件について一言も聞いてないぞ」


「ルージュ本人も知らないはずだ。彼がドッペルゲンガー関連の事件を何度も捜索する中で"開発"した魔法で、それ自体はタツキ、キミの前で披露したこともあったはずだ。この魔法が一般に知られることを危険視したルージュは禁術をロバート局長時代に局長室で厳重保管されていたんだが、現局長は軽はずみにも……それを使ってしまった」


「その魔法とは……ドッペルゲンガー現象(つまり全く自分と瓜二つで魂まで同一の物体が対面すると両者がバラバラになって死んでしまう現象であるが――)に対する防衛魔法を意図的に剥がす禁術だ。ルージュは、異世界に転移して人攫い・人身売買をする悪人が『うっかり転移先の自分に出くわして死ぬリスクを回避する』ためにかけた防除魔法を解除して、悪人を危険に晒すことで悪事を抑制するのに使っていた。この魔法を局長が持ち出した。独断で『鞄』と『クマのぬいぐるみ化鞄を作った魔女』の2人に放ったのだ」


「それは単にアモンの死に対する復讐心で、魔女に揺さぶりをかけ鞄の更なる秘密解明のためだったが、想定とは違う結末へ導いた。今まで監視員がずっと監視していたアモン姿の鞄が突然姿を消してしまった。かと思うと、別室で拘束していた魔女の前に現れた。魔女と瓜二つの姿で。てっきり魔女と鞄がドッペルゲンガー現象で対消滅するかと思ったのだが、そうはならずに……鞄は首から上だけクマの姿に戻り、口のチャックを広げて一気に魔女を飲み込んでしまった。そしてクマの口は自身の魔女に変身した部分さえも吸収していき、自分自身を飲み込んでどこかへ消えてしまった」


「魔女は逃げのびたのか? 確認するため魔女の工房跡地に局員が派遣されたが、現場は血の海になっていた。そこにはカメラが設置されていて、――これはサエの最期を記録したカメラと同一のもので、いつの間にかくすねたらしい――、以下の内容が記録されていた」


「『あははははは』魔女は工房に着くと高笑いした。『いやよくやった我が魔道具! こういった動作をするとよう指示した覚えはないが、作り出した傑作が作者の想定を超えるのは良くあること……?』魔女は、自分の姿を確認した。クマのぬいぐるみになっている」


「『あ、やっと目を覚ました!』鞄だった魔女が、ぬいぐるみに話しかける

。『やった! 魔道具の効果は絶対だ! いかなる場面でも、たとえ『私自身』だって、こうやってお世話することができるんだから』」


「『あ、ああ』ぬいぐるみは呻き声をあげるばかり」


「『さてどうしようか。ぬいぐるみだけど、四肢を切断すると骨と肉が見えるように作ってみたんだよね! それを確認してみる?』魔女(鞄)はぬいぐるみを持ち上げた。そして腕を力いっぱい引っ張り……」


「『ははは――』クマのぬいぐるみは、大声で笑った。ひたすら笑った。『そう、私は天才なの! ルールは絶対の魔道具! もっと、私がしたように! 私をちぎればいいわ! あ、あは、あへへ、ふ、ふふふあはあああああああああはははは』」


「最期は首をねじ切られてお終い。衝撃だったのが、ぬいぐるみ化した魔女をバラバラにしたあと、鞄自体も同じように四肢がもげていき、最後は頭が落ちて動かなくなった。そうして床に転がったぬいぐるみと魔女の死体は赤い液体でドロドロに溶けて、鞄は火がつけられて灰になって燃え尽きた。後日管理局員が工房を念入りに調査して、魔女は死に、魔道具は完全に壊れたことが確認された」

11/17現在、閲覧数3000越えに対して評価ptが10と極端に少なく、PCユーザーには読んで頂いているのですが、どうにも評価いただけていないので、この作品は失敗作かもしれません(私自身は自分の作品のファンなのですが)。

そのため、作品閉鎖も択に入れて色々どうするか考えております。

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