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ドッペルゲンガー:異世界転移は人攫いの手段  作者: デューク・ホーク
【第3章】魔法使いたちの事件簿
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女装男子とVR ①

 妖狐ユィーリン※を覚えているだろうか。彼女が自らの活動をまとめて、『年齢制限をつけて』書籍化するという話が友人づてに知らされた。要はアダルトな本なのだが、ボクが少々関わっている話も収録されていることが発覚した。


※『半人半魔連盟とゲームタロット』及び『Vtuber3人』で騒ぎを起こした妖狐


 妖狐の視点ではボクが"彼女好みの男性"をアテンドしたかのように綴られていたのだが、これは本意ではない。……いや、たしかにユィーリンの記した文章に誤りはないのだが、それが全てではない。


 ボクや友人のピエレッタの立場から、話題の中心人物である「女装男子」について語ろう。もちろん、レーティングはかけずに。




   *      *




 トラブルメイカーの名前はライオネット……もしくはライオネルという人物だ。つまり、彼女は元男性だ。性転換はしてない。ただある日から「自分は女性である」と名乗って活躍した選手だ。


 もうトラブルの元はわかっただろう? 生物学的な「男女」というある種のレートがあったのに、それとジェンダーをごっちゃにして「多様性」という言葉を悪用したスポーツ運営の愚策によって、彼女は競技の女性種目で無双していた。


 余談だが、ボクは多様性というのは歓迎している。昨今某国の長が変わった際『多様性』をバカバカしいものだと拒否してTJ(トランスジェンダー)の公式競技参加を拒否する政策を出したが、あれは政策の「結論」だけが賛同できるものだっただけで「過程」は全く賛同できない。前任の長を中心にポリ〇レという名の元に「多様性」の言葉を曲解して利権のために色々愚かなことをしたのである。愚策が目立つ前の、某国式じゃない十数年前の多様性の享受の流れには希望があったはずだ。ボクは当事者そのものではないが、ろう者として近い位置にはいた。だから、ここでTJのスポーツ選手への悪態(それも全員ではなくある程度の選手)をそのまま多様性への攻撃とはみなさないでくれたまえ……。


 ああ、言い訳はここまで。政治的な発言がすぎると良いものも腐る。




 このライオネットはまず宣言をして女性に"なった"わけだが、手術などをする気はなかった。去勢をしないのはもちろんのこと、ホルモンの調整をせず、胸への詰め物も邪魔と言ってせず、簡易的な化粧をするくらいで陸上選手として参加したのである。別に手術したから女性競技に出ていいとも思っていないが、なんと愚かなことか。


 さて、なんでこのバカ……ライオネット氏のことをボクが綴っているかと言うと、全然スポーツとは違う場面で彼女と出会ったからだ。



 VR空間にピエレッタ・グノーという車椅子ユーザーの友人に招待されて訪問した。最近のVR空間はすごいもので、手話の座標を読み取って空間上に口話の文章を表示してくれる。


 ボクは多世界転移管理局にいた頃は魔法を用いて翻訳をしていたが、科学でも可能になった。科学と魔法というのは手段の違いであって、結果として同じものを追求していることはよくあることだ。


 ピエレッタは車椅子を現実では漕いでいるが、仮想空間ではコントローラーひとつで場所移動ができる。ほぼ仮想空間上の住民になっていた。


「VR空間では性別というのは考えても無駄だが、一応事前情報を伝えよう」とピエレッタ。「現実世界上は男性のユーザーが多いが、アバターは女性を選ぶ人もとても多い。出会った女性を見たまま女性と思って接するのは危険なので注意するように。まあ、男性同士の交流なら相手を女性として接しても『もうひとつの世界』の生活として楽しいが……そこら辺の文化に無知な女性に親切心で注意喚起しているのに、それを『ジェンダー差別だ』という輩がいる。彼らはキモチワルいクズなので気をつけるように」


 ボクは苦笑いして言った。「まあ、ボクはキミに会うためにこのツールを使ってるんで、他の出会いを求めたりはしてないよ」


「それでも念の為、ね?」


 ボクとピエレッタはVR上の美術館・博物館にいって色々展示を楽しんでいたのだが、最後に遊園地に行こうと誘われた。ピエレッタはその遊園地のジェットコースターが好きといっていたが、ボクは画面酔いしやすいタイプだったので乗車はキッパリ断って近くのベンチに座っていた。


「(きっと彼女に足があったならばボブスレーにハマっていただろうな)」


 などと考えていると、ベンチの隣にある女性がやってきた。


「こんにちは、先程手話で会話しているのが見えて。私も手話者なんです」


「ああ、どうも」ボクはそっけない態度をとった。VR空間に来た時教えて貰ったネカマという可能性を疑っていたからだ。


「私はライオネットというの、あなたは?」


「……タツキ」



 その後2、3あたり触りのない会話をした後、彼女は切り出した。「あなた、結構可愛いファッションしてるわね、リアルの方でもおんなじタイプのセンスかしら? インカメでみてみたいわ」


 あー、ハイハイ、ヤッパリネ。


 ボクはネット上でまで取り繕った対応をする必要はないと思って、VR機器の電源を一旦オフにしようと転移を伸ばしたところで、背後から別の声がした。男性だった。


「おい! やめろよお前」男性はボクとライネットの間に割って入った。ボクはVR上への関心を既に亡くしていたので気づかなかったが、どうやらエモート機能で強〇させられそうになってたらしい(そんな機能は遊園地の管理者は権限で削除しろよ! とピエレッタとともに後日抗議のレビューを書いた)。


 2、3問答がそのライオネットと男性の間であったが、ついに観念したライオネットが遊園地からログアウトしていった。


「大丈夫でした?」男性はボクを気遣う。


「ああ、ありがとうございます」ボクは先程よりは相手への関心を持って対応した。


「ただいまタツキ……そちらの方は?」ジェットコースターから戻ってきて喜ばしい疲労感にクラクラなピエレッタがボクの元に戻ってきた。


「ああ、こちらの男性はさっき厄介な変質者を追い払ってくれた……ええと、名前は」ボクは男性に視線を移した。


「レイと言います」


「ありがとうレイさん。そう、やりもくのネカマに襲われてたんだよ」


 ピエレッタはボクの話を聞くと1人でジェットコースターを楽しんでいた事を申し訳なかったと詫びた。


「それじゃあボクたちはこれで」レイに別れを告げてその日はピエレッタと解散した。

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