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龍の落とし子 ④

 バイオレットがボクの顔色を伺った。もうそろそろルカとボクの関わりが話されると思ったのだろう。「……もう少し、ルージュが説明して」


「……そうだな。しばらくルカの暴走は続く」ルージュは遠い目をしてルカの愚行を嘆いた。


「『一から説明してくれないか? ルカ』ハロルドは手の平を出して宥めるようにゆっくりルカに近づいていった」


「『いいえ、もう対話の空気じゃないわよね、お互い』ルカは一瞬悲しい顔をして、ムーチェンにかけた薬品をあろうことか恋人のハロルドにも放り投げた」


「しかし、ロバート教授が指を鳴らすと、液体は燃えて炭となった。2度目の攻撃を身構えていて、ハロルドを守った『2回も通じん。そしてムーチェンにかけた魔法のことは理解している。もう、彼が戻ることは無い』」


「ハロルドは、ついに自分の恋人がしでかしたことをはっきりと認知した。『は……嘘だろ。おい、ルカ、殺人をしたって言うのか!?』」


「ルカはハロルドの言葉に直接答えず、代わりに餞別の言葉を送った。『あなたとの恋愛ごっこはそれなりに楽しかったわ』ルカが手を高く伸ばすと、競竜のレースで用いていたワイバーンが儀式場の天井を突き破って侵入した。ルカとタツキを捕まえて空高く飛んでいってしまった」


「ロバート教授は空を見上げて舌打ちした。『クソ、逃がすんじゃあない!  ルージュ、ハロルド、自身のワイバーンを用意して追えるか?』」


「『5分ほどいただければ』俺は言った。残念だが、それは間に合わないことを意味していた」


「『……ち、儂は魔法省に連絡するので――』」


「『教授、ちょっといいですか』俺はワイバーンで競竜1位のルカに追いつくことは無理だと諦めたが、別の手段を思いついていた。ルカの残した儀式場の魔法陣を指さして提案した。『

この魔法陣を使えば、多分見失ったルカに追いつけます。ただ、いくつか規則を破ることになるので、目を瞑っていただくか、バレた時の責任を負って頂きたいんですが』」


「数秒悩んでいたが、ロバート教授はすぐにGOサインを出した。『既に儂の監督下で大事件が起きてしまっているんだ。今更責任度は変わらん。やりなさい』」




   *      *




「しばらく、俺は魔法陣を流用してあることをしようとしていた……。タツキ、話の引き継ぎ時だと思うのだが?」


「そうだね」ボクは当時を思い返して話した。「とにかく当時のボクは、ルージュが文化人類学者を真似て交わした2、3の言葉以外は特に魔法使いたちと意思疎通をすることもできず、わけがわからず混乱していた」


「そもそも、ボクがこっちの魔法世界にくるようになる前、どんな状況だったかというと、足を怪我していたんだ。松葉杖をつく程度の大怪我をね?両親は物心着く前に亡くなっていた。流花……つまりルカという姉がいたと聞いていたが、その姉も同じタイミングで亡くなったらしい。交通事故だそうだ。あまり詳細を喋る気分ではないので省くが、ボクを引き取った遠い親族はネグレクトだった。聾者コミュニティにも上手く入れず孤立していたところに、足を怪我して散々だった」


「そんな日に、視界にとある女性が映り込むことが増えてきた。フードを被った女性がなにか語りかけてくるという絵面で、彼女は思い返せばルカ・ドラゴネッティであった。魔法が理の世界で姉が生き長らえた世界線なのだろう。ボクに対して何を話しているかは分からなかったが、何度も怪我をした片足を指さしていたのを覚えている。ボクには『怪我を治してやる』と言っているように思えた。日常でやりたいことも無く孤独だったボクは、視界に幽霊のようにうつる彼女に近づこうとしていった。途中の記憶はなく気がつくと儀式場の中心にいて、あとはルージュが先程話した通りだ」

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