タツキの前説(世界観と機関について)
本文前に世界観が気になるならば、こちらの前説から。
転移者 タツキ・ドラゴネッティの前説
科学異世界から魔法世界に転移した。
転移先での活動を物語るのなら、きっと転移前日か初日から語るのが"セオリー"だと豪語する人間もいそうだけど、初日のことをはじめに語ってしまう方が、色々な事情で読者を『混乱』させてしまうのが目に見えている。
だから、あえて転移の日ではなく、ボク、――竜騎士タツキ・ドラゴネッティ――、が「パラレルエージェント/多世界転移管理局」という国家機関に出向するようになった時期から話させて欲しい。ああ、『ボク』と称しているけど、女性なので、そこのところよろしく。
『月間魔導書』に数年前の、既に公表しても問題ない事件を順次執筆していく。つまりは何十巻にも及ぶ壮大な物語とはならないので、気楽に読んで欲しい。
――事件そのものは残酷かもしれない。
* *
舞台の世界観が気になるかい? であれば、以下に目を通すといい。
(というのも、前号の編集担当が本書の仮タイトルを『多世界転移管理局』として、さらに物語をSFと勘違いさせてしまう煽り文を書いたために、ちょっと面倒なことになったからだ)
ボクが生まれ育った世界はいわゆる「科学世界」というやつで、日本やアメリカ、中国といった国々がある。魔力が乏しい代わりに、科学が発展した。
本物語は「科学世界」「魔法世界」両方の人間が読者になることを想定しているので、魔法世界についても書かせていただく。特にボクの生まれ故郷の日本人向けに書いてみよう。
特に世界観としては"中世ヨーロッパ"といわれる光景で問題ないと思う。実は中世、ルネサンス、バロック、ロココなどそれぞれ違うと言われてもピンと来ないのなら"中世ヨーロッパ的"というイメージで問題ないだろう。
実際には、画家のゴヤやドラクロワが活躍した時代にも近かった。そう、中世と近世のの時代感は混ぜ返った世界観だ。
ボクは主にクヴァンツ王国という国で活動しているが、隣国のフィンア帝国はもう少し中華風味漂う風土だ。
中世ヨーロッパ的と言っても、魔力量が「科学世界」の10倍以上あるようなので、魔法魔術の発展は目まぐるしく、TVなどがない代わりに絵画が動いたり、携帯電話がなくても端末型ゴーレムがあったりする。そういうとんでも世界だ。
あと書いておきたいことは……ああ、これだね。
ボクはゲーマーじゃないから分からないけど、某DQと略される「RPGゲーム世界まんま」ではないな、多分。
別にスキル付与とか、旅のはじめはスライムが定番だとか、目の前にステータス画面が表示されるとか、そういう世界ではない。
とは言っても、「冒険者ギルド」とか「勇者」「竜騎士」とかはいるくらいの世界観だ。
さて、大雑把に「科学世界」「魔法世界」と言ったが、別に世界はこの2つだけではない。
「物事の選択によって数多の分岐があり、その分岐の数だけ世界がある」と言ったら、読者諸君は想像できるかな?
紙が隣あって束になるように、世界は隣合って互いは干渉しない……はずだった。
半世紀前、ある魔術師が「異世界転生・転移」の魔法をあろうことか『簡易化』してしまった。政府が規制を入れる前に一般魔法使いに知れ渡り、色々と人身売買や奴隷商売、快楽欲求を満たすために悪用する輩が現れた。
数年経ち、法としての取り締まりは始まったが、組織立っての管理はまだまだ"ザル"だった。
5年前、ボクの友人にして主人公ルージュ・フイユを含む一流の魔法使い数名が「多世界転移管理局」を組織し、政府に公的に承認された。
設立のきっかけに「ボクがこの世界に転移した事件」が関わって来るんだけど、それは追々話せればいいなと思う。
……。
長々と話してしまったけれど、次号からこの「多世界転移管理局」で起きた事件たちを紹介していく。
P.S.
――そもそも、ミステリーのつもりではないのだけれど。
読者に「科学世界」の人間も想定しているので、どのような魔法を如何に使ったかを長々と説明する「ハウダニット」にはあまりフォーカスせず、冒険劇として、そして「ホワイダニット(なぜ行われたか、動機」を重視して綴っていこう。