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氷の国、湖の踊り娘たち ③

 ホテルの借りた一室にルージュと入り、話を聞いた。


「スケーターの失踪と聞いて、こっちの世界でも近いことが起きていないか調べた。すると、このドランシンキにて地元スケーターの失踪がここ1年で増えていることがわかった」


「その失踪場所ってさあ、もしかしてここから30分ほど南に下った竜の骨がある場所じゃない?」


「え!? 知ってるんだ。地元の人に聞いたとか?」


 ボクは先程の化石観察と老人、縦看板のことを話した。


「……湖の底の魔法陣……確認しに行く必要があるな……」


「今日3度目のスケート靴か。さすがに堪えるな」


「現地のことを考えると、調査は君の体力が万全のときが良いな。今日は休憩にして、翌日早朝に現地へ向かおう」


 こうして、ルージュとともに夕食のバイキングへ向かった。


「あれ!?」受付の方がボクを見て驚いた。「フランさんと一緒じゃないんですか?」


「フラン?」ルージュはボクに聞いた。


「ああ、このクヴァンツ王国からこのホテルに向かう途中に出会ってね。多少おしゃべりしたよ。クヴァンツ王国でフィギュアスケーターやってるんだってさ」ボクは受付に向き直って聞いた。「なんで彼女と一緒にいると思ったんだ?」


「その……ホテルに戻ったとき、観光名所をフランソワーズ様から聞かれたので『向こうに竜の化石があります。ただ立ち入り禁止のロープがあるので、それより内側には入らないように。タツキさんも見に行ったようです』と私はお伝えしました。フランソワーズ様は『じゃあ彼女と合流して観光しようかな』と仰っていました」


 ボクとルージュは数秒顔を合わせたあと、大急ぎで皿に盛り付けた食べ物を受付に託し身支度をした。




   *      *




 竜の骨の離島に到着したところで、明らかにおかしいことをしていた。


 焚き火が中央にあり、竜骨を中心に踊りを何人もの女性が披露している。


 木の影に隠れてゆっくり近づき、表情を確かめる。皆怯えた顔で、首輪をつけられていた。


「あの首輪……命令に反したら、爆発しそうな作りに見えるな」ルージュは拡大鏡を覗きながら状況をボクに教えた。「そういう魔術を感じる。竜を囲っての舞踊儀式。竜の魔力目当てか、竜そのものをゾンビ化させて疑似復活させるつもりか……」


「なんか、現地の踊りより随分アクロバティックだな」遠くからでも観てわかった。2人の女性が1人の女性を持ち上げて組体操のようにして、ポーズを決めていた。


「あー、きっと『科学世界』から連れてこられた方のスケーターだなあ。確かに円陣が立体的になって効果を上乗せできそうだ」


「あ、昼間の老人が出てきた……あのジジイ! あいつが犯人か!」老人は黒いマントを羽織、仕切りに詠唱していた。「ボクは竜騎士の力で水底の術式を跳ね返せたが、ほかの人は無理だったか……フランはどこだ?」


 老人が手招きすると、一人の女性が奥からやってきた。フランソワーズだ。怯えた表情をしている。


「我が伝説の竜を復活させるのはフィンア帝国を侵略するため!」老人が一人演説をはじめた。「あの魔王ガーベラ! せっかく愚かな政府共を滅ぼし、民を虐殺したのに、いざ統治したら『人間も魔族も、各自治区が争うことなく統治できる国を目指す』など世迷言を抜かしおった! あやつでは『魔の王』にはふさわしくない! まずはやつの領土ルーデン・ルコピック山を乗っ取り、フィンア帝国を、行く行くは世界を征服するのじゃ!」


「……このままほっといてもビオラ(※)が倒してくれるんじゃあないか あれ……冗談だよタツキ、人質を解放しないと」たまにルージュはとんでもないホラを吹く。


※前話『他称魔王とルージュ・フイユ』参照


 周りのダンサーが動きを静止し、フランソワーズ1人にステップを踏ませた。


「こんな儀式じゃなきゃフランのスケーティングに拍手を送りたいんだけどな」ルージュは拡大鏡を覗いたままだが、声に焦りが出ていた。「下手に儀式中に飛び込んで中断されることが『命令違反』にならないかが心配だ。それが首輪の起爆剤でスケーターが皆死んでしまっては元も子もない」


「儀式が具体的に何を目的にしてるか分からない? もし竜の復活そのものだったら、ボクに考えがある。……」ボクはルージュに提案した。


「……マジ? 随分アクロバットなこと提案するんだな。さっきの踊り娘たちによる組体操の比じゃないよ」


「けど、ルージュとボクなら可能だろう?」


「ちょっと楽しんでないか? やってみよう」

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