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ドッペルゲンガー:異世界転移は人攫いの手段  作者: デューク・ホーク
【第1章】異世界転移の悪用:人攫い
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魔法使いとドッペルゲンガー ②

 ヒイラギは目が覚めると、自宅のベッドで仰向けに横たわっていることに気がついた。


「もう平気かい?」赤毛の男が気遣う。


「まあ……先程よりは。一体全体、何事です?

あなたは誰なんです?

多夢来は関係あるんですか?」


「質問が多いな、無理もないが。何から話せばいいやら……。とりあえず自己紹介をしよう。俺の名前は『ルージュ・フイユ』よろしくね。俺は魔法使いで、魔法犯罪の捜査官をしているんだ」


「はあ?」


「まあまあ、一応、関係者には説明する義務もあるんでね。一旦最後まで聞いてよ」ルージュはある1枚の写真を取り出した。「写真に写ってる彼女、わかる?」


「多夢来……が魔女のコスプレをした姿……」


「惜しい。これは多夢来ではなく多夢来の『そっくりさん』だよ。君が横断歩道の向こう側で見かけた君のそっくりさんみたいにね。別に信じる信じないは君の自由だが、並行世界というのはたしかに存在するんだ。それも数多の分岐した世界が、ね」


「半世紀くらい前に、ある強力な魔法使いが並行世界世界への転移を簡単にできるようにしてしまってね。世界間の行き来を自由にさせておく訳には行かないだろう? 俺はその魔法使いの転移を監視する組織に所属しているんだ」


「ヒイラギくん、キミのいるこの世界はいわば『科学世界』で、魔法はほとんどないに等しいのだが、時たま今回みたいに魔法が関わってしまうことがあるんだ。ご友人の多夢来くんだが、ずいぶんオカルトにハマっていたようだね? どこで手に入れたかは別途調査が必要だが、彼女が持っていた魔術の書物に書かれていたことは真実だ。多夢来は異世界にいる同じ魂の自分を魔術を実践してこの世界に連れてきた……それ自体は成功したんだが」


 ヒイラギは昨日多夢来から聞いた『ドッペルゲンガー症候群』のことを思い出した「もしかして……」


「ああ、多夢来は自宅でバラバラ死体になって発見された。ただし、遺体は1人分だった。バラバラ死体を見つけたらまず何人分の死体があるか調べるのが鉄則だよ」


「では異世界から来た多夢来はどこにいったか……彼女は『魔法世界』において重要犯罪人だった。魔法で悪さをしまくったんだ。俺ら機関から逃亡する身で、いよいよ逮捕直前まで追い詰めたんだが、そのタイミングで『科学世界から転移の招待』を受け取ったんだ。同一魂の人間からね。彼女は悪人だったが魔法の扱いには長けていた。自身に超速回復の魔法をかけて異世界転移の魔法に応えた。しかも厄介なことに、彼女は自分だけで転移すると超速回復だけではドッペルゲンガー症候群に対処できないかもと考え、周りにいた人間を巻き込んで多夢来2人の間に配置して『クッション代わり』にしたんだ。クッションにされた人間は君がさっき歩道で見かけたキミのそっくりさんだ」


「転移された多夢来'(ダッシュ、と魔法世界側を便宜的につける)は腕に損傷を負ったが、命に別状はなかった。ヒイラギ'に事情を説明する間もなくランダムに自身から1kmほど離れた空間に転送した。ヒイラギ'はわけも分からないまま数時間前までこの科学世界を必至に探索していたというわけだね。俺ら『多世界転移管理局・パラレルエージェント』が保護したからもう大丈夫……」


 ルージュが言い切る前に、ヒイラギの自室ドアが爆音とともに破壊され、そこから魔女の格好をした多夢来が現れた。


「ルージュ・フイユ。貴様のせいで私はこんな目に。死ね!」


 彼女が魔法を操るために使う杖を振り回してルージュの向けると、先端から閃光が発射された。


 ルージュは手に持っていた書物を瞬く間に多夢来の前にかざした。それは科学世界で多夢来が所持していた書物だった。


 書物に当たった閃光は真逆の方に進み、魔法が直撃した多夢来は身体がどんどん崩れていき粉々になって床1面に落ちていった。


「ひいいいいいい」ヒイラギは恐怖の表情で多夢来だったものを凝視した。


「……まだ回復魔法で完全には身体をつなぎ止められてなかったのか。あーあ、生かした状態で逮捕したかったのに、上司にどやされるぞ」ルージュは気だるそうに書物と死体を交互に見た。


「さて」ルージュはヒイラギに向き直って語った。「君はフィクションでこういった魔法やら超常現象に巻き込まれた時、一般市民の記憶を『操作』して日常に戻す処理がなされる描写を見た事があるだろう?」


 ヒイラギは怯えた表情のままうなづいた。


「ただ……君にとっては望ましくない可能性があるんだが、他人の記憶を勝手にいじれる魔法はかなり倫理的に悪質という思想が一般的になっていてね。規則でその魔法は禁止されているんだ。たとえ巻き込まれた本人が消去を願ったとしてもね」


「そんな!」


「で、残る道は2つなのだが……魔法のことは秘密にして、他の誰にも言わずに日常生活に戻るか、科学世界の生活におさらばして魔法世界に転移して生きるかだが、どうする?」


「このバラバラ死体なんかが、日常的に起きるのか?」ヒイラギはある程度現実を受け入れた今、むしろ死体を見続けることが出来なくなり目を背けていた。


「日常に蔓延しないために俺ら『多世界転移管理局・パラレルエージェント』がいるんだ。だけど……そうだなあ、日本で交通事故に会う件数の数倍くらいかな。ドッペルゲンガー症候群の件数は」


 ヒイラギは結局科学世界に留まることに決めた。


 多夢来の死体は管理局によって撤去され、ヒイラギのそっくりさんも無事魔法世界に帰ることが出来た。ヒイラギは現在科学信望が強まっているらしい。




   *      *




 場面変わって、魔法世界のカフェ店内

登場人物:ルージュ・フイユとタツキ(筆を走らせてるボクのことさ)




「というのがつい先日あった出来事でね」カフェの一角で、ルージュはボクに管理局の仕事を一通り伝えた。


「その話、スカウトのためのエピソードトークとしては印象悪くないか?」ボクはストローで手遊びしながら聞いていた。


「でもタツキ、君は竜騎士活動が上手くいってないんだろう?キミの剣術の腕とドラゴンの扱いは、多世界転移管理局が求める能力だよ。ぜひ入局して欲しいね」


「……まずは出向という形でいいか?」ボクは提案した。「騎士活動とそのエージェント活動を平行して働くよ。それで良ければ、友人であるルージュ・フイユの力になろう」


 以降の話は、ボクも直節参加することになる。

11/17追記

筆者「読んでくれてありがとう! ところで、画面をスクロールすると、星が見えますね……」

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