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ドッペルゲンガー:異世界転移は人攫いの手段  作者: デューク・ホーク
【第1章】異世界転移の悪用:人攫い
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テーブルは三角形 ③

「チーミング疑惑か……なるほど」ボクもオンブルに関しては手練なので、勝率だけでチーミングを相手に疑ったりなんてしない。しかし……。


「タツキ、多分君の考えている通りだよ」ハロルドは頷いて話を続けた。「『な、私は真摯に競技に打ち込んでいるのに! しかも時折タッグを組むことは"戦略"を超えてルールだよ!』当然カエデは反論する」


「『そりゃ競技の"手練"が観れば一目瞭然だけどさ』ルージュはカエデの肩を摩った。『――メジャー競技はミーハー,ライト層が居てこそなんだが、同時にちゃんと物事を見ずに中傷するカスも集まりやすくなるし、あることないこと噂されて独り歩きするんだよ』」


「ルージュは手紙に同封されたピエレッタ・グノーの足を確認して話を続けた。『これは《復讐》の可能性が高い。グノーと同卓になった試合で、オンブルの腕よりは"ギャンブル"優先で参加してそうな人物で、大金を失った人物……さらに付け加えるなら"試合終了時感じの悪かった人物"心当たりないか?』」


「カエデは記録表を眺めながら試合を順に思い返した。『居る。コルサコフっていう男性が、試合終わり悪態をついてきた。当時の私は《自分から掛け金を釣り上げて何言ってるんだ》って感じだったけど』」


「ルージュも肩越しに戦績表を眺めた。『カエデもグノーも《守備》と《オークションで相手に釣り上げさせること》が上手いからな。でもコルサコフは見抜けなかったのだろう』」


「『脅迫状の主はオンブル勝負の再戦を求めている?』私は一番気になる点を問いただした」


「『手紙の文面は《グノーのようになりたくなければ"正々堂々"オンブルで勝負するよな》と聞いてきているように読み取れる。そしてこの写真』ルージュはグノーの足の切断面を指さす。

『刃物で切ったんじゃない、体がブロック状になって崩れたような跡。そしてピエレッタの足の他に写真から見切れた誰のものか分からない第三の足』」


「『《ドッペルゲンガー現象》の可能性か!』私は故郷の村で起きた事件※を思い出した」

※前話『触手の擬態』の事件のこと。


「ルージュは推察をまとめた。『コルサコフはグノーとカエデを"チーミングをする仲間同士"と思い込んでいて、復讐したい。だからその写真でカエデを誘い込めると思った。グノーの片足を――しかも十中八九パラレルワールドのグノーも共に――奪うことで逃げられないようにね』」


「『私が行ったら、奪われる可能性はある?』カエデは写真から目を離さず、ルージュに聞いた」


「『もちろん! もしや行こうとしてたか? 管理局員としても兄としても絶対認められない。オンブルの勝負前にカエデの身体を欠損させて来る可能性だって高いんだし、そもそもオンブルのこの試合内容でチーミングだと思い込むやつに理屈は通じない』」


「『でもどうするんだルージュ。パラレルのカエデもグノーも生きてるなら彼女らも助けなければ』私は言った」


「『……替え玉だな。カエデの代わりに冒険、オンブル両方に慣れてる女性の協力を仰ぎたい』ルージュはしばらく思案して、タツキ、君の協力を求めることに決めたのだ」


 こうして、ボク――竜騎士タツキ・ドラゴネッティ――は竜関連以外の捜査に参加することになった。




   *      *




「設定は"喉をやらかして声が出ない"でいいのかな」


 久々にカエデ・フイユと再会したボクは軽く握手をした後、早々に『ピエレッタ・グノー救出作戦』の計画練りに参加した。

 その後、変装の確認や、聾者という立場のため上手く発声ができないのを『喉を痛めた』という理由付けにすることなどの話し合いになった。




 ボクは本職の竜騎士に影響が出るのを嫌いオンブルの試合などには出ないが、プライベートではカエデやルージュと共にカードに興じている。自分で言うのもなんだが、自他ともに認めるオンブル強者だ。


「ギルマン邸で行われるそうだが、こんな露骨に名前を書くとは思えない。彼も恨みを買った人物だろうな。そうなると、"4人"で試合が行われるかもしれない」ボクがカエデの姿に扮する中、ルージュは残りの推察を共有した。


 話し合いの結果、この後ハロルドが郵便配達に扮して直接ギルマン邸に返事の手紙を送ることとなった。

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