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ドッペルゲンガー:異世界転移は人攫いの手段  作者: デューク・ホーク
【第1章】異世界転移の悪用:人攫い
10/70

触手の擬態 ①

登場人物


レギュラー:

◇タツキ・ドラゴネッティ - 竜騎士 一人称ボクの女性 語り手 ろう者(耳の聞こえない人)。

◇ルージュ・フイユ - 魔法使い ナルシストな男性 多世界転移管理局のエージェント。

New!◇ハロルド・バルト - 多世界転移管理局の新入り1年目 ルージュと魔法大学の同期


本話ゲスト:

◇魔女 - クラウツ村の元村長

◇勇者レイ - 魔女を倒した英雄

◇ハロルドの旧友

◇自治区監視局の調査員

 以前寄稿した事件『竜騎士対人工竜人』は、ルージュ・フイユの捜査にボクが手伝う形だった。この「多世界転移管理局」はルージュ・フイユ以外にも何人も現場捜査官がいて、ボクは数人と親交があった。


 ボクは昨年廃村になった「クラウツ村」で最近魔獣が増加していることを受けて、竜騎士として近隣の村から魔獣の討伐以来を受けることになった。


 特に今ここでこの討伐そのものに関して語ることはないのだが、多世界転移管理局でこの仕事をルージュ・フイユに話した際、ルージュと同僚のハロルド・バルトが是非クラウス村について行きたいというのだ。


「私はクラウス村出身でね。そこが廃村になった原因の事件の当事者でもあるんだ。まあその時の美味しい役割は全部ルージュが持っていったけどね」ハロルドはスケジュールを確認しながら"元"クラウス村に行きたい理由を話した。


「『美味しい』なんて言い方良くないぞ」ルージュはハロルドを諌める。「かなり悲惨な事件だったんだ。なんたって村の住民自体がほとんど亡くなったんだから」


「ははは、悲しさ故のアイロニーだよ」ハロルドはスケジュールの曜日に丸をつけた。どうやら魔獣討伐に同行できそうだった。


「じゃあ、某日早朝にまた管理局入口前に集合しよう。ハロルド、君とルージュのその事件を行きがけの馬車で話して欲しいな」ボクは予定を確認して帰宅した。


 ハロルドとルージュ、そしてボク(タツキ・ドラゴネッティ)の3人は共に同じ魔法大学出身だ。


 一度それぞれ、

◇ハロルド⇒大学に残り魔獣飼育の研究

◇ルージュ⇒旅芸人

◇ボク⇒竜騎士

と、別々の道に進んだ。


 ボクはルージュの捜査官としての仕事に『出向』する形で再び彼と会うようになったが、ハロルドは今回話す村ひとつが滅びた事件に巻き込まれたことで管理局に入局した。

 

ボクら3人が再び集まった経緯をこの話を通じて伝えられるだろう。




   *      *




「おはよう。なんだ随分眠そうじゃないか」


 当日の朝、ハロルドは欠伸を隠しもせずヨタヨタと管理局の正門に近づいてきた。


「まだ朝5時だぞ。普通眠いさ。タツキはシャキッとしてるな。竜騎士という仕事柄?」


「まあね。ねえ、馬車はもう待機してるんだ。さっさと乗り込んで、この間言っていた事件を教えてくれよ」


「いや、馬車での移動なら寝かせてくれよ。確か3時間くらいかかるんだろ?」


「ハロルド……ペガサスの馬車初めてか。あの揺れの中眠れる人間は、本のひと握りだぞ。酔い止め必要なんじゃないか」


「う……それじゃあ尚更、移動中はおしゃべりは無理かもな……」


 予感は正しく、馬車の中では睡眠どころか話をする余裕もハロルドにはなかった。そもそも手話か読唇術をもって話を聞く予定だったので、無理に本人がこの揺れの中頑張ってもまともに読み取れはしなかっただろう。


 そのため、魔獣討伐を一通り終わらせてから話を聞くことになった。






「ラストはこの付の野良ドラゴンか……あの廃墟を壊しまくってるやつかな」


 ボクは全長3m程の小型ドラゴンに対しランスを突き立て、飛びかかった。


「あ、タツキ! そこの地形、見えずらいんだが、廃墟の裏側が断崖絶壁の崖なんだ! 気をつけて……うわ! 落ちる!」


 ハロルドの目には、飛びかかった勢いで後方に倒れたドラゴンとボクが、谷底に落下したように見えたのだ。


 ハロルドは焦って崖まで近寄ったが、直ぐに"下"じゃなくて"上"を見ることになる。


「よし、いいぞ"ドラクル"(竜に親しみを込めて)! ドラゴンが人間の生活圏に入るとすぐ『討伐』って言われちゃうもんなー。ある程度訓練してやるから、その後竜騎士組合の飼育下に入るか山奥に戻る決めようね」

 ボクはドラゴンに手綱をつけて動きを導き、廃墟の隣に着地した。


「ははは、怖かったかい?」少しボクはハロルドにイタズラっぽく尋ねた。


「ああ、昔の事件の時、私はちょうどそこから谷底に飛び降りたからね。2度目はごめんだ」ハロルドは苦々しく崖の方に目をやった。


「……ちょうど依頼は全て済んだ。改めて、当時のことを教えてくれないか?」

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