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戦車と突き進む意志

少女は扉の前に立っていた。

胸の中には、恋人の世界で得た「心の声を信じる」という気づきがあった。

彼との出会いで感じた胸の高鳴りが、今もどこか彼女を後押ししているようだった。


目の前の扉は、大きく頑丈なもので、まるで少女を試すかのような存在感を放っている。

しかし、彼女は恐れずに手を伸ばした。


「私は、私の道を進む。」


その意志を込めた瞬間、扉は轟音とともに開かれた。


扉の向こうには、広大な荒野が広がっていた。

風が吹き抜け、空には雲が流れ、地平線まで何もない大地が続いている。


その中央に、一台の 大きな戦車 が止まっていた。

戦車は黄金に輝き、その周囲には二頭の動物が繋がれている。

一頭は白い獅子、もう一頭は黒い狼だった。

二頭は互いに対立するように睨み合っているが、戦車は揺るぎなくその場に立っていた。


戦車の上には、一人の男性が立っていた。

鋭い眼差しを持ち、堂々とした立ち振る舞い。

彼の姿には迷いがなく、その手にはしっかりと手綱が握られている。


少女が近づくと、彼は静かに戦車から降りてきた。

そして、まっすぐに彼女を見つめた。


「よく来たな。」


その声は低く、力強いが、不思議と安心感もあった。


「あなたは……?」


「私は『戦車』。

 ここは、お前が選んだ道を進む力を得る場所だ。」


少女は、自分の胸に手を当てた。

恋人の世界で選んだ道、それは彼女自身が決めた「心の声」に従う道だった。


しかし、その道を進むにはまだ迷いがあった。


「……私は、この道で本当に大丈夫なのでしょうか?」


戦車の男は、厳しい目で彼女を見据えた。


「迷いを抱えたままでは、どんな道も進むことはできない。」


「だが、迷うこと自体を恐れる必要はない。」


彼は手綱を掲げると、白い獅子と黒い狼が唸りをあげた。


「この二頭は、理性と情熱だ。」


「お前の中にある相反する力。

 それを制御できなければ、進むべき道を見失う。」


少女は息をのんだ。


「……私は、どうすればいいのですか?」


戦車の男は、静かに手綱を握り直した。


「お前自身が、その手綱を握るのだ。」


「進む道を決めたなら、迷わず突き進め。

 理性も情熱も、お前自身の力として統一するのだ。」


少女は、戦車の足元にある手綱を見つめた。

それを握ることは、彼女にとって大きな決断だった。


「でも……私は、うまく制御できるでしょうか?」


戦車の男は、初めてわずかに微笑んだ。


「お前はすでに答えを知っているはずだ。」


彼は少女の手を取り、その手を戦車の手綱に導いた。


「理性が過ぎれば、進む力を失う。

 情熱が過ぎれば、道を見誤る。」


「だが、両方を信じて進むことで、

 お前はどこまでも突き進むことができる。」


少女は、ゆっくりと手綱を握った。

その瞬間、白い獅子と黒い狼が吠え、戦車が動き始める。


彼女は目を見開いた。


「……私は、この道を進む。」


戦車の男は、彼女の決意を確認すると、静かに戦車から降りた。


「この先はお前自身の旅だ。」


少女は手綱をしっかりと握り、戦車を進ませた。

風が顔を撫で、荒野がどこまでも広がっていく。


彼女は、迷いが次第に薄れていくのを感じた。


——私の道は、私自身が切り開くもの。


彼女が遠くへ進んでいくと、戦車の男は静かにその姿を見送った。


「よくやった、旅人よ。」


その言葉は、彼女の背中を押す風とともに響き渡った。



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