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恋人と運命の出会い

少女は新たな扉の前に立っていた。

胸の中には、教皇から受け取った 「巻物」 。

それはまだ白紙のままだった。


「私が、この旅で学んだことを書き記す……。」


そう決意しながらも、まだ迷いがあった。

自分の言葉は、果たして誰かの役に立つのだろうか?


少女は静かに扉に手をかざした。

すると、今までの扉とは違う、温かく甘やかな光が彼女を包み込んだ。


扉の向こうに広がるのは、これまでとはまったく違う風景だった。

風が優しく吹き抜け、空には淡い夕暮れの色が広がっている。


そこは、美しい 花の咲く庭園 。

白や赤の薔薇が咲き乱れ、甘い香りが漂っていた。


そして、その庭の中央には、一本の 大きな木 がそびえていた。

その木の下に、ひとりの青年が立っていた。


彼は、どこか懐かしさを感じさせる姿だった。

長身で、端正な顔立ち。

どこか夢見がちな瞳を持ち、しかし、その中には強い意志が宿っている。


少女は、彼をじっと見つめた。

すると、彼もまた少女を見つめ、微笑んだ。


「ようこそ。」


その声は、優しく、どこか甘やかだった。


「あなたは……?」


少女が尋ねると、青年はゆっくりと歩み寄ってきた。

彼の動きは自然で、どこか惹きつけられるものがあった。


「私は『恋人』。

 ここは、心が選ぶ道を示す場所。」


彼は、少女の手をそっと取り、優しく微笑んだ。


「君は、どの道を選ぶ?」


少女は、思わず息をのんだ。

彼の手は温かく、そのぬくもりが、胸の奥まで響くようだった。


「……私は……?」


なぜか、彼の前ではうまく言葉が出てこない。

彼の存在が、心をざわつかせる。


青年は、そんな少女の戸惑いを見て、くすっと笑った。


「焦らなくていいよ。」


そう言いながら、彼は少女を花咲く庭の方へと導いた。


「この庭には、二つの道がある。」


彼は、一本の分かれ道を指さした。


一方は、 整えられた石畳の道 。

もう一方は、 草花が生い茂る自然の道 。


どちらの道も、美しく、魅力的だった。


「どちらの道を選んでも、君を待っている未来はある。

 でも……君は、本当はどちらに進みたい?」


少女は、迷った。


皇帝の世界では「築くこと」が大切だった。

教皇の世界では「伝えること」を学んだ。


でも、ここでは 「心で選ぶこと」 が求められている。


少女は、自分の胸に手を当てた。


「……私は、どちらに進めばいいの?」


青年は、優しく微笑んだ。

そして、そっと少女の手を引き、彼女の胸に触れさせた。


「答えは、ここにあるよ。」


少女は、驚いた。


——この胸の奥に?


彼は続ける。


「理性で選ぶ道もある。

 情熱で選ぶ道もある。

 どちらが正しいかは、誰にも決められない。」


「でも——君が心から進みたい道を選べば、

 それが君にとっての『運命の道』になるんだ。」


少女は、目を見開いた。


心が選ぶ道——。

それは、今まで考えたこともなかった。


「……私は……。」


少女は、青年の瞳を見つめた。


彼は、まっすぐに少女を見つめ返す。


その視線の強さに、心がドキンと跳ねた。


「私の……心が選ぶ道……?」


彼女はそっと目を閉じ、心の声を聞こうとする。


そして、ゆっくりと目を開けた。


「……私は、自分の気持ちに正直に進みます。」


青年は、穏やかに微笑み、そっと少女の手を握りしめた。


「それでいい。」


彼の手は温かく、少女の心の迷いをすべて包み込んでくれるようだった。


少女が一歩を踏み出すと、庭に優しい風が吹いた。

その風は、彼女の心を祝福するような、優しい風だった。


「ありがとう……。」


少女は、振り返る。

だが、そこに青年の姿はもうなかった。


ただ、風が優しく吹き抜けていく。


少女は、新たな道を進み始めた——。

バレンタインデーに恋人の投稿なんて、私までドキン。

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