審判と目覚めの声
少女が門を押し開いた瞬間——
世界が静かになった。
風が止まり、空はどこまでも澄んでいる。
地平線まで続く大地の上に、たくさんの人々が立っていた。
彼らは、皆 じっと空を見つめている。
「……?」
少女が近づくと、その顔はどこか見覚えがあった。
塔の世界で飛び出した人々。
月の世界で揺れる影の中にいた者たち。
悪魔の世界で、囚われていた者たち。
みんな、天を仰いでいる。
まるで何かを待っているかのように。
その時——
高らかな音が響いた。
——天使のラッパの音。
澄み渡る音色が、世界を震わせる。
空が開き、黄金の光が降り注ぐ。
そして、その光の中から——
天使の声が響いた。
「目覚めの時だ。」
少女の心臓が どくん、と跳ねる。
——この声が聞こえるか?
天使の声は、世界に響く。
だが、それを聞ける者と、聞けない者がいる。
少女は周囲を見渡す。
塔の世界の人々。
月の世界の影の者たち。
悪魔の世界で囚われていた者たち。
——誰も、動かない。
彼らの瞳は、空を映しているのに、
そこには何の感情もなかった。
「……聞こえないの?」
少女は目の前の人に話しかけた。
しかし、彼は 何も答えなかった。
ただ、無表情に空を見つめている。
——天使の声が聞こえない者は、ここに留まり続ける。
少女は、息をのんだ。
天使の声を聞けるかどうかで、行く先が変わる。
「私は……?」
——私は、この声が聞こえている?
耳を澄ませる。
ラッパの音の向こうに、天使の声がある。
「目覚めよ。お前は、何を見てきた?」
少女の脳裏に、これまでの旅がよみがえる。
——愚者として目覚め、
——魔術師に導かれ、
——塔で衝撃を受け、
——月の世界で恐れ、
——太陽の光の中で祝福された。
すべての記憶が、少女の胸の奥で一つになった。
「私は……旅をしてきた。」
「私の足で、ここまで歩いてきた。」
少女がそう呟いた瞬間——
天使の声が、はっきりと聞こえた。
「お前は、目覚めた。」
光が世界を包む。
その瞬間、周囲の景色が変わった。
世界が、広がる。
目の前に 新たな扉が現れた。
それは 最後の扉。
少女は 息をのんで、それを見つめる。
後ろを振り返ると、まだ動かない人々がいた。
彼らの目は 空を見ているが、何も映していない。
——彼らは、ここに留まる。
——私は、この先へ行く。
「……私は、進む。」
少女は、まっすぐ扉へ向かった。
足は震えていない。
迷いもない。
天使の声を聞いた者だけが、ここを超えられる。
そして、少女は 最後の扉を開いた。
——新たな世界へ。
光が、すべてを包み込んだ。




