運命の輪と変わりゆく時
少女は新たな扉の前に立っていた。
隠者の世界で、自分の中にある「光」を見つけた。
迷いが消えたわけではない。でも、「迷うことすら自分で決めていい」と、ほんの少しだけ思えるようになった。
扉に手をかけると、まるで吸い込まれるように視界がぼやける。
ふわりと浮かび上がる感覚。足元が消え、どこへ向かっているのかもわからない。
やがて、視界が晴れたとき——
彼女は、宙に浮かんでいた。
そこは、時間も空間も存在しない、不思議な場所だった。
時計もない。地面もない。
ただ、ゆるやかに回転する巨大な「輪」が、空中に浮かんでいる。
その輪の周囲には、奇妙な生き物たちが配置され、静かに見守っていた。
それぞれが、運命の流れの一部であるかのように。
「……ここは?」
少女が呟くと、輪の中央に光が収束し、声が響いた。
「私は『運命の輪』。」
「ここは、すべての流れが交差し、変化が生まれる場所。」
その瞬間——
輪が音を立てて回転し始めた。
一度回り始めたら、止めることはできない。
速さは変わり、向きも変わるが、誰にもその動きを完全には操れない。
少女は思わず問いかける。
「この輪は、どこへ向かうの?」
「誰にもわからない。」
「でも……運命なのですよね?」
「運命とは、定められたものではない。」
輪がさらに回転を速める。
その影響を受け、少女の体もゆっくりと動き出す。
「流れがある。変化がある。」
「だが、その変化に抗うことも、受け入れることも、お前次第だ。」
少女ははっとした。
「じゃあ……私は、流されるしかないの?」
運命の輪は静かに答える。
「流れに身を任せるか。抗うか。それすらも、お前の選択だ。」
その言葉を聞いた瞬間、少女の意識が冴え渡る。
運命は変えられないのではない。
どう受け止めるか、どう向き合うかは、自分で選べるのだ。
運命の輪が、さらに大きく回転する。
その動きに合わせ、少女の体がふわりと宙を舞う。
目を閉じる。風を感じる。
「私は、私の選択をする。」
少女がそう決めた瞬間、輪が輝き、すべての動きが一瞬だけ止まった。
そして——
新たな扉が、目の前に現れた。
少女は微笑んだ。
「運命は、ただの流れじゃない。」
「私がどう生きるかで、どんな形にもなるんだ。」
強く、しなやかに。
少女は、次の世界へと歩き出した。