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「それであなたは本当に聖獣様なの?」


『さっきからそう言っておるだろう』


「…やっぱり聖獣様みたいだよ」


「この小鳥が聖獣様…?」


『小鳥ではない!』



あの後私達は聖獣様?を連れて部屋を移動することにした。


しゃべる小鳥が本当に聖獣様なのであればこの事実を知る人は少ない方がいいとエリザに言われたからだ。


それにこれからの対応を考えなくてはならないのでルシウスさんも呼んで話し合うことになったのだ。



「それじゃあ聖獣様はどうして森で倒れてたの?それにかなり弱ってるようだったしその姿と何か関係あるの?」


『ほぅ賢いな。さすが我の愛し子だ』


「え、愛し子って私のこと?」


『そうだ。その証しにそなたは聖魔力を宿しているだろう?聖魔力を宿している人間は我の愛し子だ。そなた名はなんと?』


「…オルガ・ミストリア」


『オルガ、我の愛し子。本当は今すぐにでも加護を授けてやりたいが今は力が足りなくてな』


「だからモフモフの小鳥なの?」


『モフモフは余計だがまぁその通りだ。だからそなたから聖魔力を分けてもらおうと思ったのだが辿り着く前に力が足りなくなってしまったというわけだ』



聖獣様から話を聞いてなぜ私の前に現れたのかは分かったのだが、そもそも私から聖魔力を分けてもらわなければならないほど弱っていたのかが疑問だ。


ルシウスさんも同じことを思っていたようで聖獣様に問いかけていた。



「…聖獣様。聖獣様はなぜそれほどまでに力を失われてしまったのですか?」


『む?あぁ、それはこの国の王家の人間どものせいよ』


「!それはどういう…?」


『…百年くらい前か。我はこの国の王家に本来はユウナに与えるはずだった加護を与えたのだ』


「ユウナ…聖女ユウナ様のことですか?」


『我の言うユウナとお前の言う聖女ユウナはおそらく同じ人間であろう。だがユウナは聖女ではない』


「なっ!?聖魔力を持っていたユウナ様は聖女ではないのですか!?」


『…あぁ、おそらくお前は勘違いしているのであろう。よいか?聖女というのは聖魔力を持つもののことではない。聖獣である我から加護を与えられし乙女が聖女なのだ』


「しかし先ほど仰っていたではありませんか!聖魔力が聖獣様の愛し子の証であると。それならなぜユウナ様に加護をお与えにならなかったのですか?」


『ユウナは間違いなく我の愛し子よ。ただユウナ本人が望んだのだ。ユウナ自身に加護は要らぬからこの国に加護を与えて欲しいと』



それから聖獣様は力を失うことになった原因である王家との繋がりを教えてくれた。


聖獣様の愛し子であったユウナ様は聖魔力で国民達を守っていたそうだ。


私はまだ一度も見たことはないがこの世界には魔物が存在している。


基本は魔の森と呼ばれる場所からは出てこないのだが稀に魔物の数が増えすぎると森の外に出てきて人間を襲うのだ。


当時もちょうど魔物の数が増える時期だったようでユウナ様も頻繁に騎士団の討伐に同行していたそうだ。


その時に騎士団にいた王子様と恋仲になり結婚の約束をしたが、ユウナ様が平民だという理由で国王に反対され結婚することはできなかった。


それでも王子様を愛していたユウナ様は聖獣様に願ったそうだ。



「私への加護は要らないから彼に、彼がこれから治めていくであろうこの国に加護を与えて欲しいの」



聖獣様は愛し子以外には加護を与える気はなかったのだが、最終的にはユウナ様の願いを聞き入れた。ただし加護を与える代わりに王子様に約束を守ることを条件としたのだ。



【国と国民を愛し慈しみ続ければこの国に平和と豊穣をもたらす】と。



王子様がその条件を受け入れたことによりユウナ様の加護は消え、その代わりにカルディナ王国に加護が与えられたのだ。


その後王子様は貴族の令嬢と結婚したが、王子様が国王に即位すると同時にユウナ様を王家に迎え入れたそうだ。


ただ二人は子宝に恵まれず、王妃との間に生まれた王子が王家を受け継いでいくことになった。


王家は聖獣様との約束を守り続けこの国に平和と豊穣をもたらしていたのだが、時が経つにつれ徐々に約束は忘れられていき、今では加護を権力を強めるための手段として使っているのだそうだ。


そもそも聖獣様が加護を与えるのは愛し子のためでもあるが聖獣様自身が力を得るためなのだそう。


加護を与えた聖女を国民が崇め、祈ることで聖獣様の力になるらしい。


それなら聖獣様を直接崇める対象にした方がいいのでは?と思ったのだが、聖獣様は滅多に姿を現さないので常に民と共にある聖女の方が崇められるそうで力を得やすいのだそうだ。


だから今回の場合はその対象が国になるわけだ。


国を統治する王家を国民が崇め、祈り続ければその祈りの力が聖獣様の力となり国の平和と豊穣に繋がっていく。


だから王子様とあのような約束をしたのだ。


だが今はその約束が守られておらず聖獣様の力が弱くなってしまった。



「…確かに言われてみれば公爵家の領地も最近作物の不作や魔物の襲撃が増えているな」


『もう我の加護はあってないようなもの。新たな加護をオルガに与えればこの国の加護は消えよう』


「なるほど…」


「ま、待って!一つの国に平和をもたらせるほどの加護を私に?そ、そんなものもらえないよ!」


『ふむ。確かに我の加護は強力である。だがそう恐れることはない。オルガはオルガの好きなように生きればよいのだ』


「好きにって言われても…。私はただ平穏に暮らしたいだけ」


「オルガ…」

「オルガさん…」


『オルガが平穏を望み続ける限りこの国は平和であり続けられるだろうな。なに、今すぐに答えを出す必要はない。我にはまだ加護を与えるだけの力がないからな』


「…それじゃあ聖獣様はこれからどうするの?」


『うむ、我はしばらくオルガの側にいて聖魔力を分けてもらうことするぞ』


「えっ!?私また倒れちゃうよ!?」


『…安心しろ。我もオルガが倒れてしまうほどの魔力を分けて欲しいとは思っておらん。ただユウナが言っておったが魔力を枯渇するまで使うと魔力量が増えるらしいぞ』



聖獣様がさらっと豆知識を披露してきたが、これにルシウス様がとても食い付いていた。



「なっ!?そ、それは本当なのですか!?」


『む。我は嘘など吐かん』


「それが本当ならすごいぞ!でも魔力が枯渇すれば倒れてしまう…。どうすれば…」


「それなら寝る直前に魔力を使い切ればいいんじゃないかな?そうすればそのまま寝るだけだし倒れる心配は要らなさそう」


「確かに…。よし、私は早速今日から試してみることにするよ」


「私もやってみますわ!」


「え!?じゃあ私もやってみようかな?」


『オルガの魔力量が増えれば我も早く回復できるかもしれぬな。オルガよ、しばらく世話になるぞ』


「…(モフモフモフモフ)」


『こ、こら!あまりモフモフするではない!』



今日はゆっくりのんびり過ごすはずだったのに気づけば大変なことになってしまった。


聖獣様に出会い、倒れ、王家との繋がりを知り、魔力増量法をさらっと教えられるという忙しい一日だった。


それに聖獣様の加護を受けるべきなのかという新たな悩みができてしまった。


まだ時間はあると言ってもいつかは答えを出さなくてはいけない日がやってくるだろう。


私はとりあえず聖獣さまをモフモフして気持ちを落ち着けるのだった。

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